【香港】米下院情報委員会は8日、中国通信機器大手の華為技術と中興通訊(ZTE)について、米国の安全保障にリスクをもたらしているとし、米政府は両社の機器を利用すべきではないとする調査報告書を発表した。これについて、香港のアナリストは、両社のイメージを傷つけるだけでなく、欧州でも同様の調査が行われる可能性があると懸念している。
華為は、スウェーデンのL.M.エリクソン・テレフォンに次ぐ世界第2位の通信機器メーカーだが、米国市場はエリクソンとノキア・シーメンス・ネットワークスが支配している。米大統領選が近づき中国に対する政治的な反発が強まる中で、華為は米国市場での信頼確立に四苦八苦している。大統領選では中国問題は争点の一つになっており、オバマ大統領もロムニー共和党候補も中国が不公正貿易慣行や為替操作を行っていると非難している。
華為技術は声明で、「報告書は米国や世界における我々のネットワークセキュリティー上の実績を無視しているだけでなく、我々が提供した事実を一顧だにしていない」と反論、「報告書の目的は、競争を阻害し中国のIT企業の米国市場への参入を妨げようということだけではないかと疑わざるを得ない」と述べた。ZTEも、米国の安全保障に脅威を与えていないとする声明を発表した。
調査会社ジェフリーズのアナリストであるシンシア・メング氏は、「米国の通信会社などは今後機器メーカーとして華為やZTEを選ぶのは難しくなろう」と指摘、「華為は今後数年間、成長率が抑えられるだろう」と予想する。
米下院情報委は、両社の機器が米国での諜報活動に利用されているのではないかとの懸念を受け、過去1年間調査を行ってきた。報告書は諜報に関する証拠を示さなかったものの、中国へのビーコン(無線標識)やデータ送信などの不審な活動例があったとしている。これら不審例については、非公開の機密付属文書に一部言及されているという。
バークレイズのアナリストであるジョーンズ・クー氏は、最悪の場合欧州各国政府もセキュリティー上のリスクへの懸念を理由に同様の調査を行う可能性があるとみている。
華為技術は2001年に米国市場に進出し、現在では米各地に13カ所のオフィスを構え、1800人を雇用している。昨年の米国市場の売上高は13億ドル(約1000億円)で、同社全体の売上高(約320億ドル)の4%を占めるにとどまっている。