なぜ、分かっているけど認められないのか

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理性とはなんでしょうか。ここでは、物事を論理的に判断したり、体系的、総合的に結論を下す意識と定義しましょう。一般に、論理的な思考は左の前頭前野の役割で、総合的、体系的な判断は右の前頭前野の役割とされます。左右のこの部分は作業記憶の部位とされます。作業記憶というのは、何かをするために必要な情報を一時的に思い出して、それを用いて次の企画をしたり、発想をしたりする場所という意味です。この問題を詳しく述べようとすると長くなるので、結論だけを述べると、前頭前野の外側部と帯状回前部には、①集中、②決定、③自由に発想すること、④精神機能を脳のどこに分担させるかを決定するというような役割があるのです。そこで前に述べたエリオットやゲージの脳のことを思い出してみましょう。彼らの脳は前頭葉の腹内側部が障害を受けていました。そのため、彼らは決断できなくなってしまったのです。一方、論理的思考とか、場所の認識とか、言語という機能は前頭前野の外側にあり、普通はここを理性の場といっています。また前頭前野の下部(眼嵩皮質)や帯状回が損傷されると、前に囚われの脳のところで述べたように、判断ができず、何度も同じ考えに囚われ、それから逃れることができなくなってしまいます。これは強迫神経症などで見られる症状で、別の意味での決断できない脳です。そこでもう一度まとめますと、理性の中で論理的組み立て、事態の理解、言語でそれを表現するというような機能は前頭葉の外側にあり、それは作業記憶に属します。一方、前頭葉の腹内側と下側は正誤の判断、感情による決定などに関係するのです。前にも述べたように前頭前野外側の障害では、論理性(左の前頭前野の役割)や総合的理解(右の前頭前野の役割)が失われ、前頭前野の内側ではそれに基づく判断ができなくなるということになります。またこのような決断には、前頭葉だけでなく、運動野、感覚野などが関係しています。そして前頭前野腹内側は感情を引き起こす場所なので、感情による決定ができない人は決断ができないということになるのです。

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最近、面白い現象が報告されました。それは病識といって、自分の病気を理解しているかどうかの問題と関係します。とくに右の頭頂葉の感覚野や頭頂葉の後部の運動野が、脳梗塞、脳出血のために障害を受けた場合です。右脳の障害では、左手や左足が動かなくなります。しかし患者はこれを認めようとしません。患者に「左手が動きますか」と聞くと、「もちろん動きますよ、先生」と答えます。「では動かしてごらんなさい」と言うと、人によっていろいろな反応をします。ある人は「ほら動いたでしょう」と言って、動かない手が動いたと主張します。別の人は、「今日は肩が痛いので、左手を動かすことができない」などと言い訳をします。また左手が動くと主張する人に、「では左手で私の鼻を触ってごらんなさい」と言うと、「いま触りました」と答えるのです。そこで医師や周囲の人が、実際に左手は動いていないということを認めさせようといろいろ矛盾を衝くと、本人は次第に感情的になり、「なんであなたがたは、みんなで私をいじめて、嘘つき呼ばわりするのか」といきりたち、泣きだしたりするので、それ以上診療できなくなるのです。このようなことは、左の頭頂葉などの障害では起きないとされます。つまり右手が動かない人は、はっきりそれを認めます。私は、この現象は、私たちの日常生活でよく見られることだと思っています。仕事に失敗した人に、その責任を追及するときなど、本人は失敗までのおのおのの過程はよく理解しているのに、最後になって、それが本人の責任だから、その始末をこのようにしなくてはならない、と言ってもそれを受け入れません。何度繰り返して説明しても、同じです。また遺産相続の争いなどで、「このようにするしか方法はない」と仲介者が案を示しても、当事者は納得せず、最後は喧嘩別れになるなどということはよくあります。つまり、自分が不利になる、自分が悪い、責任があるということだけは認めないという態度です。現在の脳科学の成果によれば、ここは頭頂葉の感覚野、運動野の判断を前頭葉などが抑制して、おのおのの結論はよく理解していても、最終結論を否定することだと解釈されるのです。これらを総合すると、決断とは、まず感情によりおおまかな分類と選択がなされ、その後は、論理的に選択の幅を狭めていく。そして、最後には、前頭葉、頭頂葉の力を借りて、最終判断をするということが分かると思います。

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