(これ以下の記事はFCJ代理人、横木雅俊弁護士より「法的措置」をとると言われ削除する)
バーやダイニングルームを埋め、何も知らないアソシエイト会員は連日バーに詰めかけ満員の盛況。ただし「Pen & Quill」は閑古鳥。
この映画は沖縄石垣島に移住した中国人と日本人夫婦の実話だ。突拍子も無いが話だが現実での裏打ちがあるので納得できる。「作りかた」と言うのは基本的には彼ら夫妻が石垣島の素材だけで作りだした「食べるラー油」の苦労話を下敷きにしているが、「ペンギン夫婦」の後に「作りかた」と来ると、夫婦がどのように帰化しどうして「辺銀」と言う姓名を創りだしたか、「夫婦」を作るロマンスに重点を置いている。
原案、辺銀愛理「ペンギン夫婦がつくった石垣島ラー油のはなし」(マガジンハウス刊)を巧みに脚色した監督と脚本の平林克理と共同脚本アサダアツシの腕の確かさを褒めるべきだろう。帰化の物語はアメリカ映画に多い。「グリーンカード」(G・ドパルデュー)や「正義の行方」(H・フォード)「パイライン」(韓国映画)などに見られるように、偽装結婚を移民局が暴くことが主眼だが、ここでも法務省の役人が二人の偽装結婚と疑い、それらの質問が軸になって物語が展開する。
石垣島の法務省入国審査官(深見元基)の帰化申請の尋問に歩美(小池栄子)と僥江(王傳一)が答える形で進行する。別々に答える二人の供述が異なれば偽装結婚の疑いもあると。5年前、北京でカメラマンをしている僥江とフリーライターの歩美が出会い恋に陥り東京へ一緒に帰って来る。東京の出版社が潰れ無職の僥江を「ラッキー」と捉え歩美と石垣島へ旅行する。そして何処までも青い海と空と美味しい石垣料理に圧倒されてそのまま移住してしまう。歩美は料理店で仲居として働き、僥江はウコン畑で農作業を手伝う。畑の持ち主の80過ぎの老人がウコンのお陰で10代の若者のように「ピンピンだ!」と歩美をナンパしようとするのが可笑しい。もともと料理好きの二人が沖縄独特の調味料として石垣島特有の材料を混ぜ合わせ「石垣島ラー油」を作りあげて行く過程も楽しい。あらゆる料理に適する「食べるラー油」が完成する。試写会場ではそのサンプル小袋が配られる。
早速フリーマーケットへ出品するが、一個も売れない。仕方なく世話になった石垣島の人々に配り更に東京の友人たちへ送るとこれが話題になり火がつく。忽ち口コミで伝わり100個単位の注文が殺到。一躍ペンギン夫妻はお金に困らなくなる。
でも順風万帆では映画にならない。法務局審査官が尋問に時を同じくして、かねてから内偵をしていたサロンに一斉に手入れが入る。オバサンたちがマスクし眼鏡をかけ秘密裏にサロンに集まっているのを麻薬製造と早とちりをしたのだ。どっとなだれ込んだ係官は舐めてみてラー油と分かり、チョン。審査官も追及の手を緩め表情は柔らかくなる。
最大のヤマ場は「何故ペンギンと言う姓を選んだか?」僥江は歩美が一番好きな動物の名前だからと答える。歩美は、それは違うと、実はと答え始めて僥江が焦る。彼の答が違っている。これ以上書けない、ネタバレは出来ない。
現在愛理・僥峰(これが本名)夫妻は商標特許がとれた「石垣島ラー油」の他に辺銀食堂(ここでロケーション)も順調な経営も続けている。彼女たちの「ラー油」は水餃子やゴーヤチャンプル、果ては白いご飯にたっぷりかけて美味しそう。
監督の平林克理はこれがデビュー作。永い間助監督として是枝裕和や西川美和に仕え彼らのテクニックを学んで自分のものにしている。王傳一は初めて見る顔だが、ハンサムで片言の日本語で雰囲気を出す。デカパイが売り物の小池栄子もオッパイ抜きの色気無しでも好演している。アメリカンドリーム、いや沖縄ドリームを実現した微笑ましい夫婦物語だからこそユーモアもカタルシスも味わえる。
10月20日より制作費を出したユナイテッドシネマ系で全国公開される。
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