夏のHのあとは“性器ヘルペス”に注意!

2012.09.20


鑑別には血液検査が大切だ【拡大】

 夏の開放感によるアバンチュールで罹患率が高まる性感染症(STD)。中でも、小さい水ぶくれが多発する性器ヘルペス(GH)は、一度感染すると再発を繰り返す。頻発するなら薬でコントロールすることが大切だ。

口から下半身に感染

 人に感染するヘルペスウイルスは8種類が知られている。水ぼうそうや帯状疱疹のウイルスもそのひとつだが、性器ヘルペスの原因になるのは“単純ヘルペスウイルス”の1型と2型だ。

 性感染症に詳しい博愛医院(東京・新宿)の中村靖彦院長は、「1型は本来、口や唇に水ぶくれができる『口唇ヘルペス』の原因になるのですが、下半身に接触すれば性器ヘルペスの原因にもなる。今はオーラルセックスよる1型の性器ヘルペスの発症が非常に多い」と説明する。

 性器の症状なら性病と気づくが、口の病変から性病になるとは連想しにくい。本人は単なる口内炎としか思っていなく、知らずに相手の下半身にうつしてしまうのだ。

患部を触ったら洗浄

 発症すると、性器や肛門周囲など感染した部分に痛みを伴う小さな水ぶくれが多発する。数日内に水ぶくれが破れてタダレ・潰瘍になる。

 「大切なのは、人にうつさないように注意すること。水ぶくれにウイルスが多くいるので、破れた患部を触ったら水で洗い流す。家庭内のタオルの共有はしない。もちろん症状が完全に消えるまでセックスは禁止です」

 放置しても2−3週間で自然治癒するが、それだけ治りが遅い。医療機関の治療では、抗ウイルス薬を1日2回(1回1錠)、5−10日間服用することになる。

根治できず、薬で抑制

 ただし、治療しても根治できないのが、この病気の難点。一度感染すると、ウイルスは体内に潜伏して、隙をみて再発を繰り返すのだ。

 「体内に残ったウイルスは神経に入り込み、脊髄内の腰の近くにある神経節に住みつきます。再発を繰り返しやすいのは風邪、過労、寝不足、生理中など体の抵抗力が落ちているときです」

 再発の症状自体は、初発時よりも軽く、患部の範囲も狭くなる特徴がある。再発の頻度は、その人の免疫状態で大きく変わるので、2年に1回もない人もいれば、月に2−3回も繰り返す人がいるという。

 あまり頻発しては性生活が台無し。年6回以上の再発には『再発抑制療法』が保険適用されている。従来の薬剤を1日1回(1錠)、最大1年間飲み続ける治療法だ。

 中村院長は「2006年に認可された治療法で、体内のウイルスの量、活性を抑制できる。再発に悩む人はぜひ、専門医に相談してもらいたい」と話している。

「性器ヘルペス」概要
【症状】性器や肛門周囲、太ももなど下半身に痛みを伴う小さい水ぶくれが多発。水ぶくれが破れると潰瘍になる。38℃台の発熱があることも。
【病原体】単純ヘルペスウイルス1型または2型
【感染経路】性行為などによる接触感染(皮膚や粘膜の細かい傷から侵入)
【検査方法】血液検査(採血)