県内で今年、多発している振り込め詐欺の被害額は9月末で2292万円に上り、1075万円だった昨年1年間の2倍を超えたことが9日、県警への取材で分かった。4種類に分類する振り込め詐欺の中で妊娠中絶費用を名目とした「オレオレ詐欺」は3月以降に発生し、被害額の約9割を占める。いったんは減少したが、9月に3件起きるなど再び増加。「還付金詐欺」も連続して発生しており、県警は警戒を強めている。
県警によると、9月末までの振り込め詐欺の被害件数は24件。内訳は▽オレオレ詐欺13件(被害額2083万円)▽架空請求詐欺7件(同76万円)▽融資保証金詐欺3件(同33万円)▽還付金詐欺1件(同100万円)。還付金詐欺は9月に発生した後、10月にも中津市内の女性(76)が約400万円を詐取されている。
オレオレ詐欺の手口はすべて妊娠中絶費用名目。未遂も含めた不審な電話は3月以降、213件確認されている。電話は一部高校の卒業生宅に集中しており、▽日田林工53件▽大分42件▽大分工業40件▽大分舞鶴38件▽佐伯鶴城12件など。他にも9校の卒業生宅に電話があり、県警は高校の卒業生名簿を悪用したとみている。
県警は9月27日に「振り込め詐欺警戒警報」を発令。各家庭への電話連絡や訪問、防犯教室での講話などの対策を講じ、被害を防ぐため全力を挙げている。
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手口知っていたけど…「子を思い頭真っ白」
「詐欺は知っていたけど、息子のことを思うと頭の中が真っ白になった」―。
県警生活安全企画課によると、オレオレ詐欺の被害者は全員、詐欺の存在を認識。8、9月の被害者4人は県内で妊娠中絶費用名目を要求する手口が多発していることも知っていた。
被害者は「声の低さが息子に似ていた」「本当の番号に電話したけど、出なかったので信じた」「息子が結婚目前だったので身辺整理させたかった」などと話しているという。
手口を知りながら、だまされたことについて、同課は(1)久々の息子からの電話で反射的にうれしくなる(2)身内のトラブルで不安感や恐怖心をあおられ、極度のストレス状態になる(3)「お金を払えば助かる」と短絡的に考えてしまう(4)声質など一つでも息子と合う点があれば信じてしまう―などと分析。
「自分はだまされないなどと考え、普段からの当事者意識が低いのも原因の一つ。犯人は巧みにマインドコントロールする。電話は誰にでもかかる恐れがあるので警戒心を強めてほしい」と話している。
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