昨日のブログで電通の4000億円投資を褒めたが、マーケットはでは電通が大幅安となっている。株式の公開買い付けで英広告大手「イージス」の買収、4000億円は負担大きいとの反応で前日比167円(7.2%)安の2139円まで売られてしまった。確かに買収の充分な根拠が示されていない。一番大きいのはどのような顔ぶれが国際を担当するか、と言うことだ。市場は電通は長年国内では強い「内弁慶」だと言う認識で、それが昨日今日変わる訳が無いと見る。やはりティム・アンドレー&松島訓弘ラインのマネージメントの強さを示すべきだ。広告代理店なのにIRが出来ていない。
4時間になんなんとする「愛のむきだし」を見てから園子音監督は気にかかる映画作家だった。キリスト教をチャカす内容は許せなかったが、何か訴えるものがあり、既存の監督にない型破りの才能がある。その後父子のコミュニケーションを描いた「ちゃんと伝える」でやっぱりと見直し、「冷たい熱帯魚」や「恋の罪」などのノワールな世界の興味深い物語で監督夫人の神楽坂恵や水野美紀のヘアヌードをたっぷり堪能させて貰った。
画調は一転して中学生を主人公に311直後の釣り堀や避難民をフィーチャーして荒んだ社会を描いた「ヒズミ」も見応えある作品だった。
そして世間の論争の的、原発問題をテーマに被害者側の視点でリアリズム溢れる告発映画はズッシリと心を打つ映画に仕上がっている。僕は基本的には日本の産業の将来や地球温暖化対策として原子力発電所は必須で今のヒステリックな反対運動は非国民だと考えていたのだが、こんな映画を見させられエモーショナルに攻められると涙もろいだけにヘナヘナとして弱いのだ。
舞台は東北大震災から数年経った架空の長島県大葉町、「原発の町」と銘打った歓迎アーチが町の入口に建っていて、原発で潤っていた。主人公一家は酪農を営む小野泰彦(夏八木勲)と痴呆症にかかった妻、智恵子(大谷直子)、そして息子の洋一(村上淳)と妊娠している妻、いずみ(神楽坂恵)。道路を隔てて専業農家の鈴木ミツル(清水優)と娘のヨーコ(梶原ひかり)は大葉町ののどかで美しい風景に囲まれつつましく幸せに暮らしていた。
ある日突如として大地震、そして大津波が襲い、町を村を飲みこみ原発はメルトダウンを起こす。流石に低予算の園映画ではハリウッド並の特殊効果やCGは予算不足で大ディザスターの画像は全く無い。大揺れ(崩壊はしない)小野家や鈴木家の人々のパニックを描くだけ。
緊急避難指示で家を離れなければならない鈴木家と狭い道路を隔てるだけで避難区域外の小野家。夫々厳しい生活が始まる。無人の鈴木家に繋がれた茶色の秋田犬の子犬を進入禁止の柵を超えて泰彦が家へ連れて来るシーンが良い。
痴呆症の智恵子が津波で荒廃した街を彷徨う。真っ白な雪で覆われた自動車や倒壊した建物、道には餌を求める牛や羊。
やがて行政命令が出て自分も立ち退かなくてはならず、覚悟を決める。可愛がっていた数十頭の牛を銃殺し妻と一緒にあの世に旅立とうとするシーンは感動的だ。あの木は「お父ちゃんと私の木」と智恵子が自慢する木の下で妻に銃を向ける泰彦。「お父ちゃんと一緒なら何処へでも行くよ」。炎が木や花壇を覆うシーンが涙を誘う。
「希望の国」のタイトルは皮肉を込めている。内部被爆に神経的になっている妻を車に乗せ遥か爆心から離れた海岸に来て身体も心も解放している洋一夫妻に、傍に置いたガイガー計数機が多量の放射能を感知するエンディングが恐ろしい。
10月20日、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開予定。
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