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2012年7月27日

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「桃さんのしあわせ」(A SIMPLE LIFE)(中国・香港映画):生まれた時から育ててくれたメイドの桃さんを母のように思い面倒をみる映画プロデューサー

60年間仕えてくれた女中の桃(たお)さん(ディニー・イップ)が脳卒中で倒れ中風になってしまった。毎日傍で働いて食事洗濯掃除をしてくれ殆ど言葉を交わしたことが無い雇い主の息子ロジャー(アンディ・ラウ)は初めて桃さんがかけがえの無い人だと悟る。

 原作と製作のロジャー・リーの実話をアン・ホイ監督が映画化し、ノベライズ本「桃姐與我」のタイトルで今年3月に発刊されている。ロジャー・リーはアメリカで映画製作について学び、「レッド・クリフ」では製作経理を担当している。だから映画でも主人公ロジャーは中国映画の製作に携わり、サモ・ハンやツイ・ハークをカメオ出演させ仕事の打ち合わせのシーンは不自然では無い。だがハンやハークの映画のような暴力シーンとこの映画は全く無縁だ。穏やかに病んで死を静かに迎える平和な老女の物語である。

 冒頭は桃さんの市場での買い物風景。野菜や肉の売り子たちと軽口をたたき値切りながら鮮度や質を見分けながら上手な買い物をする。家の中は綺麗に掃除が行き届きチリ一つない。食卓は質素だが手の込んだ料理が何種類も並べられ次々と運ばれて来る。ロジャーは牛タンが好きだが身体に悪いと出してくれない。健康を考え栄養バランスの取れた食事のみを並べる。

 ある日ロジャーが打ち合わせを終わり家へ戻ると鍵がかかっている。桃さんが脳卒中で倒れている。幸い数日で退院出来たが中風にかかり腕や脚が麻痺している。もう仕事が出来ないから辞めて老人ホームに入ると言う桃さんんの希望を入れてロジャーは苦労してホームを探す。
ロジャーの母親(ワン・フーリー)を含め親族は皆サンフランシスコに移住し香港に住むのはロジャーと桃さんだけ。義母と人には紹介するロジャーと桃さんの母子物語だ。

「僕が心臓を手術した時は桃さんが病院で徹夜で付き添ってくれた。桃さんが中風で倒れたら僕が面倒を見るのは当然だ」映画の製作は中国本土で行われるので、ロジャーは桃さんを養老院へ入れて香港と中国をとんぼ返りで飛行機往復をする。

 養老院は香港の市内ど真ん中にあり、訪問客は絶えない。ここで老人たちとのエピソードが面白い。ガムを絶えず噛んでいる老女のガムさん。陽気なダンス好きなキンさん(チョン・プイ)は顔を合わせると300ドル貸せと言う。桃もロジャーも貸すと女遊びに使っている。未だ若いが長く透析治療を受けているムイさん。ホームのチョイ主任(チン・ハイルー)は若いが規律正しく老人たちを暖かく管理している。

 70歳後半の老婆を演じるディニー・イップの実年齢は63歳。香港映画界のゴッドマザー的存在でアンディ・ラウとは「法外情」で母子を演じている。ヴェネチア主演女優賞受賞も当然の演技だ。映画界でやり手のロジャーは桃さんの前では子供同然。実の親以上に優しく細かに気を使うロジャーに観客は感情移入をしている。オギャーを産まれて以来30年以上、桃さんはロジャーを子供のように可愛がって来たのだ。2度目の脳卒中を起こし、医者からこれ以上の延命策は桃さんを苦しめるだけだ、との宣告を聞いた時のロジャーの表情は忘れられない。

 香港ノワールやカンフーアクションで知られる香港映画界で日本人を母に持つ女流監督、アン・ホイ監督の作品は老人問題や避難民、家族内の問題など他の男性監督とは違った視点で香港映画界を代表している。ベルリン映画祭で審査員を務めるほど国際的に知られている。
 涙無くしては見られない作品。久しぶりに心洗われる映画だ。
 この映画は来年のアカデミー外国語賞に香港代表で出品する。
 
 10月BUNKAMURAル・シネマにて公開される。

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