ノーベル賞:医学生理学賞に山中氏 山中教授、田中耕一氏と語る
2012年10月09日
ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった山中伸弥教授は8日夜、毎日新聞との単独インタビューに応じた。02年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一・島津製作所シニアフェローも電話会議システムで加わり、受賞の喜びや今後の研究について語り合った。(聞き手は砂間裕之・毎日新聞大阪本社科学環境部長)
◇田中氏「研究者に遊び心必要」
◇山中氏「若手も私に質問して」
−−おめでとうございます。感想は。
山中氏 感謝と責任の思いを強くしています。日本全体の支援に加え、高橋和利さん(京都大iPS細胞研究所講師)ら多くの仲間の支援がなければ、受賞はありませんでした。ジョン・ガードン先生の仕事がなければ、私の仕事もありえなかった。iPSは科学技術としてはまだまだ時間と努力が必要です。本当の意味での医学応用につなげるため、責任を感じています。
田中氏 私もうれしいです。日本の医学が世界の最先端を行っていることが世の中に伝わっていなかったが、山中さんの受賞で誇れるようになります。島津製作所の技術でもiPSに貢献します。
山中氏 ありがとうございます。島津の質量分析技術はこれからも研究に不可欠です。
−−奈良先端科学技術大学院大学で山中さんは学生に体細胞の初期化は可能だと宣言された。常識や定説を覆すのが山中、田中両氏の共通点です。ビジョンの大切さをどう感じていますか。
山中氏 米国留学中、科学者として成功するために「VW」が大切だと教わりました。「ビジョン」と「ワークハード」。ぶれないビジョンを持ち、それに向かって力を合わせることを心がけました。
田中氏 山中さんが素晴らしいのはまじめで努力家の一方、遊び心を忘れずに24の遺伝子から四つに絞り込む過程で、さまざまな試みをした点です。「研究者に遊び心はダメ」という人もいるが、そんなことはないんです。
−−臨床まで進んでいない技術が受賞するのは異例です。
山中氏 医学応用につなげるのが、私の責任だと考えています。安全性と効率を高める工夫を重ねており、臨床に使えるグレードのiPS細胞づくりに取り組んでいます。
−−山中さんはかつて、利根川進・マサチューセッツ工科大教授の講演で質問されたことがあったそうですね。