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2012年8月29日

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「思秋期」(TYRANONSAUR)(イギリス映画):人は心の底に絶えず「怒り」を抱いていていつ噴火するかも知れない。

 今朝はこのブログを書きあげてから、FCCJのお白州(審議会)に引き出される。果たしてどんな処刑が下されるやら。

 邦題の「思秋期」とは何事ぞ!辞書で調べてもそんな言葉は無い。秋になり何となく憂いに沈む時期と言うことか?そこへ行くと原題はティラノサウル。主人公ジョセフ(ピーター・ミュラン)が述懐する。「5年前に死んだ女房は可愛らしく美しく俺は愛していた。だが太めで階段を登り降りするとドシーン、ドシーンと大きな音がして、映画『ジュラシックパーク』の『ティラノサウル』の登場シーンみたいだ。車の中のコップの水が揺れるだろう」。ジョセフは優しい心の持ち主だが皮肉屋で怒りっぽい。自分に素直になれない大酒飲みの大男。
 バーで酔っ払って喧嘩して外へ出ると愛犬ボーダーコリーが吠える。犬に八つ当たりして蹴り殺してしまう冒頭のシーンに驚く。観客が主人公に感情移入出来なくなるじゃないか。
 舞台はイギリスの都市リーズ。70万の人口だから結構大きな市だ。ロンドンから汽車で2時間半。ジョセフは職も無く始終飲んだくれている。酔うとキレやすく喧嘩は日常茶飯事。怒り始めるとコントロールがきかない。自己崩壊寸前だ。だから友達も少ない。そんなある日、チャリティで集めた衣服を無料で貧しい人へ譲る店のボランティア、ハンナ(オリビア・コールマン)に出会う。敬虔なクリスチャンで優しいハンナと話しているとジョセフの心は癒されて来る。しかしハンナはジョセフとは距離を置いている。死の床にある共通の友人(ロビン・バトラー)に祈りを捧げに行き距離は縮まる。
 だがジョセフが訪ねて行ったある日、目の縁に大きな痣を作っている。「風呂で転んだのよ」の云い訳は見え透いている。夫のジェームズ(エディ・マーサン)は外見や人当たりは良いが家庭内では妻に暴力を振るうサイコだったのだ。ハンナの心の闇を知り唖然とするジョセフ。閑静な住宅地に住み真っ赤なマツダのRX8を運転する(若い娘たちが素敵な車ね、の声)夫、ジェームスから逃れてブルーカラーのジョセフの家に隠れるハンナ。しかしハンナは夫の暴力に耐えかねて反撃を加えていたことをジョセフは知らなかった。。。
 
 ジョセフの隣近所は暴力と恐怖に満ちている。可愛がっている少年サム(サミュエル・ボットモレイ)の縫いぐるみの兎を食べ更にサムの顔を噛みついた黒いピットブルをジョセフは殴り殺す。(これで2匹目の犬殺し)怒った飼い主でサムの義父ボッド(ポール・ポップウェル)と大喧嘩。ジョセフもボッドも怒りのマグマが内部に燃えたぎっていて切掛けさえあれば轟然と噴火する。
 だが犬殺しで有罪判決を受けたジョセフは短期間だが刑務所に入る。街を出て収監されているハンナとの文通は欠かさない。二人の間は友情だけでロマンスは無い。

 俳優・パディ・コンシダイン(「イン・アメリカ」など)の監督・脚本デビュー作品。しっかりしたテーマで緻密な演出、内面に怒りを溜めた男たちの行状が見事に描かれている。ジョセフ役のピーター・ミューラン(「マイ・ネーム・イズ・ジョー」など)の熱演。ファッキンを形容詞で連発しコックニーアクセント丸出しで、まるでケン・ローチの映画を見ている感覚にとらわれる。ハンナとのロマンスがありそうで無いストーリー展開にオリヴィアとの息はぴったり。大きなドラマは終盤に来るが日本人の理解を超えた激しい怒りをひしひしと感じる。
 エンドクレジットを見て安心する。「この映画ではいかなる動物も傷を負わせていません」と。ボーダーコリーもピットブルも生き延びたか。

10月20日より新宿武蔵野館他にて公開される。

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