FCCJの中でユニークな活躍をしているのが映画コミティ。年寄りのエドウィンに代って副委員長のカレン・セヴァーンズが実質的に仕切り始めてインディ系を中心にスクリーニングと主役監督のQ&Aで活気づいた。今では月に多い時は3回程上映する。唯問題なのは苦しい財政状態の下無料の試写会だから会員からお金を取れない。考えたのはゲストで呼んだ主役監督を囲んでカクテルパーティを有料(ドリンク一杯にスナック付で1260円)にすると言う仕掛け。 昨日(5日)は日活100周年記念に併せヒューマントラスト有楽町で60本の往年の日活映画を上映しようと言う企画に合わせて宍戸錠をゲストに呼んだ。白のズボンに白いシャツ、濃紺のブレザーにサングラスとスリムな体躯で愛嬌満点、背をしゃきっと伸ばし記憶力は確か。僕の友人だったパキさんこと、藤田敏八さんの話題を持ち出したら、奥さんの赤座美代子さんのこともしっかりと覚えている。時折分かんない英語を交えて要点を外しながら喋りまくる。映画は1967年制作の白黒作品「拳銃(コルト)は俺のパスポート」。野村孝監督のB級アクション劇で単純で詰まらない作品だが、終わってからの宍戸のトークが面白い。12月で79歳を迎える「エースのジョー」は日活ニューフェイスの一期生。1955年に「警察日記」でデビューをするが、後輩の石原裕次郎や小林旭、トニー赤木、和田浩二のダイアモンド・カルテットに抜かれ、彼らの(特に旭の)悪役で生き延びていたと。ところが裕次郎がスキーで骨折しトニーがゴーカートの衝突事故で死に、ピンチヒッターで主役に抜擢されたらヒットの続出。忽ち「エースのジョー」主人公映画が続々と製作された。会社が労組に乗っ取られ「ロマンポルノ」に移って日活をクビになるまで17年間に100本の日活作品に出演したと。早撃ちはゲーリー・クーパー、アラン・ラッドに次いで3番目に早いとホラも交えてトークが上手い。トレードマークの豊頬手術はゴッドファーザーで「マーロンちゃんが僕の真似をしたね」と。尊敬する監督は鈴木清順で今は車椅子で酸素ボンベを携えているが「ジョーよ、もう一本映画を撮ろう」と言っているとか。カクテルパーティでも話は尽きない。平穏な表舞台と代わりバー裏のキッチンでは(これ以下の記事はFCJ代理人、横木雅俊弁護士より「法的措置」をとると言われ削除する)
1時から汐留で「グッモーエビアン」の監督主役の舞台挨拶と完成披露試写会。エビアン水がクライアントかと思ったら、タイトルは英語先生(小池栄子)の「グッドモーニング・エブリワン」をネイティブ風の発音。舞台には山本透監督、麻生久美子、大泉洋、三吉彩花の3人が立った。大泉がやたらと愉快なキャラだ。役柄がぐうたらなハードロックの歌手。だからロックをがなりたてるがこれがキチンと聞ける上手さ。「本当言うと僕はムード歌謡曲など歌いたかった」と。鎖に繋いだ金属の髑髏なんかがジャンプして歌うと太腿に当たって痣になってしまった。麻生は同じバンドのスティールギタリスト。本当はもっとカッコよく頑張れる筈が妊娠中で体調が悪くノリに今一つだったと。無事出産を済ませての完成披露試写だが、撮影中は気分の悪い時が多かったと。産後の肥立ちも無くスリムなラインは昔のまま。今でもデビュー作「カンゾウ先生」のヘアヌードで海に飛び込む麻生の姿は目に焼き付いている。15歳の新人が実質的な主役。彼女の主観的ナレーションで映画は展開する。
舞台は名古屋市。17歳で母親になったアキ(麻生)は元パンクロッカーで中学生ハツキ(三吉)の母親。親友のように仲が良い。ある日2年半海外放浪をしていたヤグ(大泉)が帰って来た。アキと同じバンドでヴォーカルをやっていてハツキの名付け親。最初「ハッピー」と命名したが漢字が当てはまらず初火からハツキにしたのだと。3人の生活が始まる。ヤグは料理の名人。朝食はトーストに卵焼きは勿論、ハッシュド・ポテトに玉子乗せから特性ドロドロ「ヤグカレー」は絶品。2年振りの3人暮らしでアキとヤグは楽しそうだがハツキはイライラする。何も仕事をしない癖にやたらとハツキの生活や態度に絡んで来る。それを笑って許す母親のアキも気に食わない。親友も黙って鹿児島へ転校してしまうし、ハツキの心中は穏やかでは無い。進学を諦め就職をして家を出ようと決心をする。そうすればアキとヤグは一緒に水入らずで楽しく暮らせるのだ。
だがそれはハツキの思い違いだと言うことをヤグとアキは教えることになる。
大して期待した映画では無かったが、このシーンは泣かせる。実質的な家族が成り立つ瞬間だ。
エンディングでクライマックスは再編したハードロックバンド「MFG」(Message From God)で歌い踊るヤグとスティルギターをクールに弾きこなすアキ。ヤグは3人での家族宣言をステージの上から声高らかにするのだった。
大泉のヴォーカルが聞かせるるのには驚く。上手くは無いがリズム感も音程もしかりしている。麻生もギターを巧みに弾いている。しかしその日は妊娠のつわりで苦しい演奏だったが、本当はもっと上手いのだと舞台で告白する。15歳でモデルの三吉の演技力はなかなかのもの。将来期待が持てそうな女優だ。
監督・脚本の山本透は助監督時代が長かっただけに映画の文法を知り尽くしたツボを押さえた演出をしている。
12月15日よりテアトル新宿他で公開される。
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