冲方丁の「天地明察」が余りに面白かったので内容も確かめもせずに「もらい泣き」(集英社:2012年8月刊)を読んでみた。まるで詰まらない。SFか時代小説を期待していた僕がバカで、これは人から聞いた「泣ける話」のショートストーリー33篇の寄せ集め。小説「すばる」で連載コラムを頼まれて苦肉の策だ。だから冲方の創造性は当然の如く無いしそもそも話自体がありきたりで泣けもしない。
唯一興味をひいたのが「ノブレス・オブリージュ」貧乏留学生が病床に横たわる老人に親切にしたところ、その老人がハプスブルグ家の末裔で莫大な遺産を継いだ。その遺産を元手に貧乏学生からベンチャー企業で大資産家になり、義援組織を作り老人から学んだ「高貴なるものの義務」を果たすのに経営能力は必須だ。マザー・テレサも有能な経営者だった。カルカッタの街に落ちている繊維や木の実を枕に詰めて売った。その商売を貧者にやらせたと。「東北大震災復興には50兆以上のお金が要るがマザー・テレサなら可能だ」
原題は「消耗品」と言う意味。人間消耗品、つまり金で命を賭けて戦う傭兵部隊だ。2年前の海賊のシージャック事件を解決するオリジナル版は全世界で220億円の興行成績を挙げた。何しろ名だたるアクションスター勢揃いで夫々得意の武器や武術で大活躍して目立ちたがる。
今回の悪役はジャン=クロード・ヴァン・ダムで、前回はチョイ役だったブルース・ウィリスとカルフォルニア知事を卒業したアーノルド・シュワルツネッガーが復帰する。
引き続き最強の傭兵軍団・エクスペンダブルズを率いるのはバーニー・ロスに扮するシルベスター・スタローン。プロローグはネパールで誘拐された中国人の富豪を取り戻す仕事。既にトレンチ(シュワルツネッガー)とチャーチ(ブルース・ウィルス)が手をつけていた。あっさり富豪を救いだし、中国上空で飛行機の上からジェット・リーをお供につけてパラシュートで落とす。
小泉首相が北朝鮮へ訪問して10年。それから何も起こらない。拉致家族も老いさらばえ明日にも死にそうな人たちばかり。提案だがこのような傭兵軍団は世界中何処でも雇うことが出来る。日本国内で騒いで無駄なエネルギーとお金を使はず、軍団を雇い人質を連れ戻して貰ったらどうだろう。日本政府は無力そのものだから。松原仁に何が出来る?傭兵たちは中近東、イラン、アフガニスタン、パキスタンに幾らでもいて活躍している。
さてアメリカに戻った軍団に新たなアサインメント。今回の仕事は東欧バルカン山脈に墜落した輸送機に積まれたデータボックスの回収。チャーチに5百万ドルの借りがあり、バーニーと対立しているので使いにくいチャーチの代わりの技術屋に中国人のマギー(ユーナン)を雇う。
いつものオンボロ双発水上飛行機でバルカンに着く。そこではヴィラン(ヴァン・ダム)率いる謎の武装集団が待ち構えていて、彼の罠にかかり機密データは強奪される。新しい仲間、ジミー(リアム・ヘムスワース)は軍団の目の前で殺される。データは旧ソ連軍が埋蔵した5トンのプルトニウムの隠し場所を示す地図だった。ジミーの復讐を誓う仲間たちが続々とバーニーの下へ集まる。副官のリー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)やガンナー・ジェンセン(ドルフ・ラングレン)トール・ロード(ランディ・クーチュール)へール・シーザー(テリー・クルース)と錚々たる面々。
壮烈なアクション劇が展開されるが、笑ってしまうのは一旦戦列を離れたトレンチが危機一髪で「I’m back!」とターミネーターお馴染のセリフで軍団に復帰すること。更に戦いの最中弾が尽きると「I’ll be back」と戦列を離れようとするのをバーニーが「You’ll be back enough.」(もう充分戻ったろう)と腕を捕まえ戦わせるシーン。戦車が市街地を砲撃しながら激走する。障害物があるとくるりと反転すればラッセル車のように鉄の壁でも石垣でも突破できる特別装備車。勿論重火器を積んでいてドンドン敵陣を突破して行く。
洞窟の中の敵陣へ双発機が突っ込むシーンも凄い。プロペラや翼は捥げ胴体だけで本陣へ殴り込み。アクションもこうノンストップで展開されると考える暇も与えられず理屈抜きに楽しい。
最後は銃もナイフも捨てて男同士の一対一の肉弾戦。66歳のスタローンは往年の動きは無理だが、なかなか頑張っている。未だ52歳のヴァン=ダムも還暦男に負けてはいない。55歳のラングレン、57歳のウィリスもアクションを楽しんでいる。あまり動かないシュワルツネッガーは63歳。知事職で身体がなまったか。
10月20日より松竹系にて全国公開
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