昨夜(26日)のFCCJ/GMMは9時過ぎまで紛糾していたという。(以下の記事はFCCJ代理人・横木雅俊弁護士に法的措置をとると言われ削除)
湊かなえの「サファイア」(角川春樹事務所:2012年4月刊)は今までのスタイルと少し変わってダイヤモンド、猫目石、ルビーやサファイアなど7つの宝石に込められた想いを描く短編から成り立っている。
カバーストーリーの「サファイア」は貧乏学生がガールフレンドにサファイアの指輪を買うために悪質商法に手を染めて命を失う話。売った女性三人のエピソードが巧みだ。冒頭の「真珠」は面白く無かったが、痛快で笑ってしまうのが「ダイヤモンド」。今までの湊には見られない童話的と言おうかSFっぽいのだ。丁度浦島太郎が苛められていた亀を助けて竜宮城へ連れて行かれたような、また木下順二の「鶴の恩返し」に似た「雀女」のエピソード。踏まれて瀕死の雀を助けた「俺」に夜になって細身の女が現れる。何か恩返しをしたいと言うので惚れた女、美和に給料3か月分のダイヤを買って歓心を買おうとする。がどうも美和は怪いし、身辺を探って欲しい。驚いたことに美和は職場の妻子持ちの上司と不倫をしていてダイヤを贈り惚れている「俺」を利用し授業料や家賃を騙し取ろうとしている。信じられない「俺」に証拠の写真やビデオまで添えられている。そして頼みもしないのに完璧なリベンジを果たして苦痛事故死をさせ自分も死んでしまう。コミカルだがホロッとさせる秀逸に逸話だ。
湊のストーリーテラーの才能は従来の「会話」法の推理小説ばかりか、このような短編でも発揮される。
第二次大戦中、強制収容所の日系二世たちは志願して442部隊として欧州戦線で戦ったことは良く知られている。すずきじゅんいち監督は「442日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍」(10年)と「東洋宮武が覗いた時代」(08年)で彼らを描いたが30年間秘されたMISを紹介して日系史映画三部作最終章として「二つの祖国で 日系陸軍情報部」を公開する。
試写の前に還暦を迎えたばかりのすずきじゅんいち監督がスリムな身体をアロハにつつんで短いスピーチをする。80名を超える日系の元兵士たち、上院議員のダニエル・イノウエ、元ハワイ州知事ジョージ・アリヨシ、長官経験のあるノーマン・ミネタなどにインタビューをしている80代の後半90代が殆どなので撮影後亡くなった人も多い。1年間の撮影で400時間のフーテジを6か月かけて編集したドキュメンタリー。LAに住みながら彼らのことを殆ど知らなかった監督は多くの日本人にこの映画を見て貰いたいと。
僕の子供時代、終戦直後進駐軍の日系の兵隊を沢山見た。この映画を見て分かったが米国陸軍秘密情報機関MIS(Military Intelligence Service)の兵士たちだったのだ。祖国の軍隊と戦いたくないと442部隊はヨーロッパでナチスと戦った。真珠湾攻撃の5週間前に日本との戦争を前提としてMISは日系二世を中心に3000人の兵士を募集していた。やはり父母が日本で教育させるため日本へ送り込んでいた帰国組は日本語が優れていた。「日本ではアメリカ人と言われアメリカでは日本人で敵だと言われ身を置く場所が無かった」
MISは日本語を武器に日本軍の情報を収集し分析する。そして日本兵と直接戦闘は無いものの、前線で捕虜になった日本兵を尋問し機密情報を聞き出すことが主任務だった。もっと重要なのはマッカーサー元帥に従い、敗戦の日本に進駐し日本の復興再建の原動力となったのは彼らだった。僕たち子供は日系の進駐軍からリグレイ・チュウインガム(パリパリの薄い板だった)やハーシー・チョコレートを貰ったことを覚えている。
元兵士たちは語る。「何故祖国と戦わなければならないかと悩んだ」「軍需工場の位置を特定して情報を上げているが工場ばかりか近辺に焼夷弾を落として婦女子を焼き殺していると聞いて怒った」「10人ほどの日本兵を銃撃して皆殺しにし、その内の1人がもっていた重要書類だと私に齎された黒い手帳を見たら妻や子供の写真だけだった」隊長のアメリカ人大尉と自分は泣いたと告白している。元兵士たちは話ながら良く泣く。7人兄弟で5人がアメリカ兵、2人が日本軍に別れて戦った老人は「テニアンで日本の戦闘機を銃撃し墜落させた。その1機に弟が乗っていたことが後で分かった」と泣く。
マッカーサーの命令で天皇陛下に会いに行けと命じられたタガミ中尉は宮城で二人だけで会う栄誉を与えられた。「天皇は貴方はアメリカと日本の架け橋になって欲しい」と言われ感動したと。もっと泣ける話がある。「GHQの前で毎日靴磨きをしている7歳の少年にジャムを塗ったパンをあげた。少年はそのまま新聞紙に包んで立ち上がる。食べないのかい?と聞くと3歳のマリコがお腹を空かせて待っているからと立ち去った」「東条英機の奥さんが絞首刑でなく切腹をさせて欲しいと伝言をマッカーサーに取り次いだが許されなかった」
皆が口にするのは「大和魂」「武士道」。311の大津波に襲われた祖国も忽ちの内に立ち直ったのは日本人には「大和魂」があるからだと絶賛している。
映画としての完成度は三部作で一番良く出来ていると思う。試写後監督に言ったら嬉しそうだった。すずきじゅんいち監督は東大卒業後日活へ助監督として入社、ロマンポルノ時代にデビュー「女教師狩り」(82年)は主演の風祭ゆきファンだった僕は見ている。その後「マリリンに遭いたい」(88年)「秋桜」(96年)などを経てドキュメンタリー作家に転向している。
第25回東京国際映画祭への公式出品作品。
開戦記念日の(全く偶然ですが、とすずき監督)12月8日より銀座テアトルシネマ他で公開される。
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