アメリカ・ロードアイランドに在住のロジャー・シェフラーと昨日の朝(2日)電話で話した。G政権を東京地裁に訴えている一人だ。しかし彼のケースは4−5年前に会員資格停止を受けたことに対する取り消し処分の訴訟で少しポイントがずれている。(以下FCCJ代理人・横木雅俊弁護士に法的措置をとると言われ削除)
映画を見て直ぐにピンと来たのは昨年のブラッド・ピット主演の「マネーボール」の「返歌」だと言うこと。野球の記録データのコンピュータ分析法「sabermetrics」が野球界に浸透するアスレティックスのGMブラピは勘と経験でしか選手を見られないロートル・スカウトを全員クビにし、コンピュータを駆使して野球をマネージする。クリント・イーストウッドは老スカウトをバカにしたこの映画に反発したことは想像に難くない。
原題「Trouble With the Curve」(カーブが打てない)ではネタバレになるので詰らない邦題をつけたとしか思えない。先週末から北米で公開され12.7M(9.9億円)で3位につけている。昨年同じ週末に始まった「マネーボール」の19.5M(15億円)に較べればかなり落ちていることは否めない。イーストウッドが監督をしないで演じるだけの映画は93年の「ザ・シークレット・サービス」以来10年振り。
年寄りのスカウトが娘を連れて選手獲得の最後の旅をする昔ながらの人情ドラマ。監督はロブ・ローレンス。イーストウッドのマルパソ・プロダクションで「マディソン郡の橋」以来プロデューサーや助監督で苦労した人で初監督作品。
案の定50歳以上シニア層に受けているのを見て配給のワーナー・ブラザース(WB)は「年寄りは焦って初日に見に来ることをしないからこの映画は長くゆっくりとヒットするのではないか」と。WB北米配給社長、ダン・フェルマンは政治問題に触れ「イーストウッドが共和党大会でスピーチしたので民主党やリベラル派の人たちが映画を敬遠したとは思えない」言っているが、作品は南部や中西部の保守地盤で予想以上に好成績を収めている。
アトランタ・ブレーブスの老スカウトマン、ガス・ロベル(イーストウッド)はオシッコもチビチビしか出ない、家の中でもアチコチで蹴躓くし、車に乗ればガレージで擦る。イーメイルも書けないしコンピュータなど触れもしない。しかも段々と目が見えなくなっている。スカウトとしてダメ男だとGMを取り巻く同僚からバカにされている。そんなことはお構いなしにガスはノース・カロライナの打撃が注目される高校生ボー・ジェントリーのスカウトへ出発する。心配したガスの球団での親友、ピート(ジョン・グッドマン)は娘ミッキー(エイミー・アダムス)に同行を頼む。ミッキーは有能な弁護士で現在手掛けている案件で成功すればパートナーに昇格寸前だ。だがミッキーは視覚を失いつつあるガスのことが心配で後を追う。
6歳で母親を亡くし7歳の時から父親は娘を親戚に預け寄宿学校に入れ殆どを一人で成長した。だから自分は父親に捨てられたと言う意識は高い。でも捨てられる前はスカウトに行く何処へでもガスはミッキーを連れて行き、幼い頃から良い選手の見分け方を含めスカウトの奥義を極めていた。しかし顔を合わせるといつもの喧嘩が始まる。さっさと帰って弁護士業に励めと追い返そうとする。頑固で気が短いことは父親譲りの娘は依怙地になってガスに付き添う。親子喧嘩に割って入るのはジョニー(ジャスティン・ティンバーレイク)。ガスがスカウトした有望な投手だが移籍したボストン・レッドソックスで酷使され肩を壊し今は球団のお情けでスカウトに転向している。ジョニーとミッキーの間にロマンスが生まれるのは自然の成り行きだ。
ボーを狙うのはブレイブスやレッド・ソックスだけでは無い。各球団のスカウトが高校生リーグの試合でボーの強打者振りを見詰めている。
視力は落ちてもボールを捉えるボーの打撃を耳で聞き、ミッキーが父親に教えられたスカウトの奥義でグリップが「泳いでいる」との観察を受け「カーブが打てない」だからブレイブスでは取らないと決断するガス。だがこの決断も球団GMはスカウト同僚フィリップ(マシュー・リラード)コンピュータ・マネーボールでドラフト一位に指名してしまう。指名順で行けばレッドソックスに決まる所ガスとミッキーのアダバイスを受けたジョニーはボーを外すが、ブレーブスが取ったと知ったジョニーは親子が騙したと怒り狂ってボストンへ戻る。
イーストウッド・得意な頑固老人と若い人との軋轢ドラマで、人間味に溢れホロリとする。野球の知識満載で、ジョニーとミッキーとの会話はトリビアの出し合いで楽しい。ミッキーはミシェルの愛称かとジョニーが聞く。「父がミッキー・マントル(NYYの強打者)の大ファンなの」。「ヨギ・ベア(NYYの名キャッチャーだが熊ゴロウでも知られる)が好きで無くて良かったね」と大笑い。
野球の特殊効果が優れていてスピードやボールの変化がヴィジュアライズされ迫力があってゲームそのものも楽しめる。
最近はエンディングで捻り過ぎカタルシスを感じさせない映画が多い中、正義は栄える、悪は滅びる、ヒーローやヒロインは更に将来を約束される。恋は成就すると映画の初手から予想されるクリシェな結末でもハッピーになって劇場を後にする。
11月23日より丸の内ピカデリー他全国で公開される。
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