過払い金請求での弁護士と司法書士の違い
(1)弁護士と司法書士の権限の違い
司法書士には、裁判所に提出する書類(破産手続開始・免責申立書、個人再生手続開始申立書)の作成と、そのための相談業務が認められています。また、いわゆる認定司法書士には、これに加えて140万円を超えない事件(いわゆる簡裁事件)についての訴訟代理、和解交渉の代理、そのための相談業務が認められています。
そのため、司法書士事務所においても、任意整理の相談のみならず、自己破産、個人再生や過払い金返還請求の相談を受け付けているところが多くあります。
しかしながら、認定司法書士であっても、破産手続開始・免責の申立や個人再生手続の申立の代理権はなく、過払い金返還請求訴訟であっても140万円を超える事件の代理権や上訴の提起の代理権は認められていません。
従って、司法書士に依頼した場合は、破産手続開始・免責の申立、個人再生の申立、裁判所、債権者との交渉は、全て自分でしなければなりません。かかる費用は、弁護士でも司法書士でもほとんど変わりません。時には、書類作成の外に債権者への通知、申立手続、出廷、裁判所との交渉をする弁護士費用より司法書士の書類作成費用の方が高かったりします。
(2)過払い金返還請求訴訟における弁護士と司法書士の違い
訴訟の目的物の価額(訴額)が140万円を超えない簡易裁判所の事件の場合には、弁護士以外にもいわゆる認定司法書士も訴訟代理人となることができます。
しかし、訴訟の目的物の価額(訴額)が140万円を超える地方裁判所の事件では、弁護士でなければ訴訟代理人となることはできません。
弁護士の場合
弁護士による過払い金返還請求は、請求金額に制約はありません(過払い金返還請求金額がいくらでも大丈夫です)。
弁護士は司法書士と比較し、裁判に制限はないので、より良い条件で解決するために、消費者金融など貸金業者にとって、できれば避けたい地方裁判所に訴訟を起こすことができます。
当事務所も、一つが140万以下の請求でも、依頼者が数社に対して合計して140万円を超える請求(共同訴訟①)にして地方裁判所に、また、同じ貸金業者に対して、数名の依頼者を共同して合計140万円以上の請求にし地方裁判所に訴訟(共同訴訟②)を提起します。
司法書士の場合
司法書士の場合は、過払い金返還請求は、請求金額が140万円以下の請求に限られます(140万円を超えると、司法書士は裁判手続を行うことも、交渉もできません。司法書士法第3条)。
従って、司法書士には「裁判に制限」があります。司法書士は弁護士と違い、地方裁判所に訴訟を起こすことができません。消費者金融などの貸金業者も当然、過払い金返還請求者が司法書士に依頼している場合、地方裁判所での裁判ができないことを考慮し、返金金額を低く提示してきます。つまり、司法書士は消費者金融などの貸金業者に地方裁判所での裁判を意識させて(ちらつかせて)、交渉を有利に行うことができず、結果として良い条件を引き出すことがきなかったり、または、書類を作成してもらうだけでご自分で地方裁判所で裁判しなければなりません。
ご本人が地方裁判所に平日の昼間(おもに午前10時か午後1時から)出かけて、裁判官から質問されたり、貸金業者側の弁護士から追及を受けたりして困惑することが多々あります。
せっかく専門家に依頼したのに、残念な結果です。
特に消費者金融会社やクレジットカード会社との取引が10年以上続いて完済している方は、過払い金の請求額が140万円を超えている可能性が十分あります。
また、認定司法書士を訴訟代理人とした場合でも簡易裁判所で判決が出され、上訴がなされた場合には、上訴審においては弁護士でなければ訴訟代理人となることができないため、上訴審ではご本人が裁判所に出廷する必要があります。
このように過払い金返還請求訴訟においてもあらゆる場面で安心して対応できるのは弁護士であると考えられます。
(3)債務整理における弁護士と司法書士の違い
名古屋地方裁判所における自己破産では、弁護士が代理人となった場合に限り、管財予納金を10万円から20万円だけで行う少額管財事件の制度が用意されています。そのため地方裁判所に対する破産申立のほとんどが弁護士代理によってなされております。
そのような権限の違いからか、司法書士が相談者に自己破産をしないで任意整理を勧めるものもありますが、自己破産は、任意整理と比べて借金の全額を免除できる債務者の経済的再生には極めて強力な手段であり、各制度を充分に理解せずに最初から自己破産を選択肢から除外するのは、経済的再生の失敗率を増加させてしまう可能性があります。
本来、すべての手続の長所・短所を理解した上で比較し、最も合理的な手続を選択すべきであり、そのためにも任意整理、自己破産、個人再生、過払い金返還請求訴訟のすべてに代理権を有している弁護士に相談することをお勧めします。
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