余談だが「神弓」とは韓国が自国で開発したミサイルの名前だ。この映画に描かれた伝説を基にした命名だと思われる。他国の携帯式対空ミサイルとは違い担いで「肩撃ち」はできない。三脚に載せた状態で射撃は行なう。射撃手は三脚の椅子に座って照準器を覗き込む。だからフランスのミストラルと同じ命中率90%台を誇る。米国のスティンガーミサイルやロシアの9K32の命中率が60%程度だ。これでドンドン「北」のミサイルや航空機を撃ち落としてくれ。使わなければ「宝の持ち腐れ」だ。
17世紀前半、正確には1636年。清が朝鮮半島に侵攻した「丙子の乱」。多くの戦死者を出し50万人を超える朝鮮人が捕虜・人質として清へ連行された。韓国歴史上最も屈辱的な戦いだった。韓国人は僅か36年間の日帝支配を問題にするが、1000年以上隋の時代から明や清まで続いた中国の朝鮮支配(冊封体制)をそれほど問題にしないのは解せない。中国は儒教の国で自分たちも中国を通して文化文明を学んだ。しかるに日本は東夷の国、朝鮮を通して学問や文化を学んだのではないかと言う蔑みがある。
期間から言ったら遥かに日本より長い支配なのに日本に対する程中国に恨みを抱いていないのは不思議だ。その清の野蛮な軍隊に対抗して熾烈な戦闘中に立ち上がった一人の弓の名手ナミの物語。
国家反逆罪で王から訴追された父親。幼い兄妹ナミとジャインは王の派遣した討手との戦いの中で父が目の前で斬殺された。追っ手から辛くも逃れた二人は、父の友人にかくまわれ山奥でひっそりと逃亡生活を過ごした。
13年後、凄腕の弓士へと成長したナミ(パク・ヘイル)。しかし親が逆賊では世に出ることもできず、学問も武術にも励まず酒をくらい、唯一妹ジャイン(ムン・チェウォン)の幸せだけを願いながら生きていた。父の友人の息子で、兄弟のようなソグン(キム・ムヨル)が妹との結婚を望む。幸福の絶頂の結婚式に、清の精鋭部隊「ニル」が村を襲う。ジャインと新郎のソグンが捕虜として捕らわれ連れ去られてしまう。ナミは父が残してくれた家宝の神弓を手に取り、10万の大軍の清国王子の近衛軍に向かって一人で戦いを挑む。ゲリラ戦に徹し鬼神のような弓の腕前で清国近衛兵たちを次々となぎ倒すナミ。その神業的な弓に脅威を感じる清軍の大将ジュシンタ(リュ・スンリョン)。王子トルゴンと大切な部下たちを守るためナミを追い求める。
トルゴンは捕虜の中から美しいナミを見つけ下心を抱いて自分のテントに連れ込む。貞操の危機って時に必ず救いの手が現れるのはご都合主義に徹する韓国映画(どこの国でもそうだね)。兄のナミが王子を人質にしてジャインと新郎のソグンを逃がす。鴨緑江を渡った山荘で落ち合おうと。ナミに焼き殺された王子の敵と清軍の大将ジュシンタは精鋭を引き連れナミの追跡に取り掛かる。
清は満州族、前頭部を剃り上げ後頭部の毛を伸ばし辮髪に結っている。辮髪清軍全体が恐ろしく見えるのはその頭の恰好かもしれない。山を越え渓谷を越え(向こう岸の絶壁まで甲冑を脱いで身軽になりジャンプする)途中で弓矢を交えて追い込むジュシンタ。
監督のキム・ハンミンは僕には初めての人だが才能が溢れている。不屈の人々を描きそこに兄妹の絆、愛情をしっかり見せている。特殊効果も借りて弓の脅威的な殺傷能力の凄まじさを画面で見せる。監督デビュー作から主演に起用しているパク・ヘイルとの息も合い演技の隅々まで監督の意思が伝わっている。
韓国で800万、6人に1人が見たと言う国威発揚映画。日本が悪者で無い分この手の映画としては気軽に落ち着いて見られる。韓国の歴史映画で気楽に鑑賞できる作品は少ないので嬉しいよね。これからもドンドン中国悪者映画を作ってもらいたいものだ。今世界のデビルは中国かイラン、シリアと相場が決まっている。頑張れ韓国映画!
8月25日(土)よりヒューマントラスト有楽町他で公開される。
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