地下鉄の音轟轟(ごうごう)と椅子を揺らす劇場、こんな所で一人前に1800円とるのかよ、といつも腐している「銀座シネパトス」。それが来年の3月で閉館になると言う。三原橋地下街の耐震性が問題で東京都から立ち退き命令を受けたからだ。60年代後半、オフィスが銀座7丁目から築地に移り、一番近く手頃で通った劇場が「銀座地球座」でシネパトスの前身だった。
その頃は便所の臭いが客席迄漂っている上薄いマットの椅子では2時間保たず尻が痛かった。ピンク映画がレパートリーに入っていて、痴漢がうろつき女性客が怯えて、女性シートがあった。詰らない映画の時など痴漢の行状を観察したが、彼らはスクリーンを見ていない。客席を見渡し女性客の隣に座る。例えアベックで来ていても隣に座る。手出しをする奴は直ぐに追い出されるが、大人しい痴漢は唯隣に座る女性をじっと観察するだけだ。ホモの痴漢も居て良い男を狙っていた。こんな連中は上野の西郷さんの下や忍ばずの池の傍の映画館にも多くいた。
銀座シネパトスは近年固い椅子は改装されビジネスクラス並みのゆったり座れ居心地が良くなった。それでも「花と蛇」とか「恋の罪」などヘアヌードの作品になると必ず痴漢は出没した。両作品とも見応えのある傑作なのに痴漢は映画鑑賞能力が無い。
スクリーンが4つありその内の1スクリーンは往年の巨匠の2本立ての名画を、残りの3つのスクリーンは洋画や邦画のB級作品の新作を上映していた。今でも僕は月に2回は見に行く。それが無くなるのは痛い。東銀座や築地界隈で「並木座」も遥か昔に無くなり残るのは東劇一館だけになる。東劇はシネ歌舞伎やNYメトロポリタンオペラなどODS中心で劇映画は少ない。東銀座に個人オフィスを構える僕としては淋しい限りだ。
高橋さんを中心とした「外国特派員協会(FCCJ)の腐敗を憂う有志の会」(仮称)は・・・・
(以下はFCCJバウムガードナー会長の警告により削除)
さて今日の映画「アイアン・スカイ」の発想に度胆を抜かれる。1945年にドイツナチは月のダークサイドへ降りたち反撃に出るために一大基地を構築していた、と言う想定。時は第二次大戦後73年を経た2018年。戦争を知らない子供たちや孫たちが育ちナチ「第3帝国」の後の「第4帝国」を形成している。だが互いの挨拶「ハイル・ヒトラー」はそのまま継承されている。
冒頭アメリカの探査船が46年振りに月面着陸を成功させる。再選を目指すアメリカ女性大統領(ステファニー・ポール)が人気とりのため「YES, SHE CAN」のスローガンを月面にひるがえさせ実況させるためだ。宇宙飛行士の一人は突如現れたハーゲンクロイツ(鍵十字)の紋章を付けた男に射殺され探査船は破壊されもう一人の宇宙飛行士、ワシントン(クリストファー・カービー)は捕虜になる。連れて行かれたのは鍵十字の形に築かれた巨大な秘密基地。ナチスドイツの残党たちが新総統、コーツフライシュ(ウド・キア)の下再び地球に帰還し覇権を握る日を待ち構えている。その為に軍備の増強の他に地球攻略の最終兵器「神々の黄昏」号の完成を待っていた。
総統以下ナチス将校が驚いたのは宇宙服をとったワシントンが黒人だったこと。「我々アーリア人より遥かに劣る人種の黒人がエリートのアストロノートとは!」更にワシントンが持っていたスマートフォンが部屋一杯を占めるコンピューターより遥かに優れた演算能力があること。これさえあれば「神々の黄昏」号をもっと早く完成させられる。総統の座を狙う准将、クラウス・アドラー(ゲッツ・オットー)はワシントンを案内役にアップルショップから大量のスマホを獲得する任務を持ち円盤ハウニブに乗り地球に向かう。クラウスの婚約者でナチの理念を信じる地球学者、レナーテ・リヒター(ユリア・ディーツェ)も円盤に潜入していた。
発想が愉快だ。ナチの残党が月のダークサイドに秘密基地を持ち「第4帝国」を作って反撃の機会を狙っていた。サラ・ペイリンそっくりさんの女性大統領が月面に掲げる「YES, SHE CAN」キャンペーンで劣勢を挽回しようとしていた。アドラーはNYに降り立ちスマホはそっちのけで直ぐに大統領と話をつけようとする。アメリカと同盟を結んで総統の座を狙うのだ。イカレた女大統領は大戦でナチをやっつけた「ルーズベルト」並みの名声で選挙戦を勝利しようとする。
ハチャメチャB級SF政治劇が展開されるが、たまにはこんなバカバカしい映画も良いものだ。製作費は7億円ちょっと。邦画の大作よりすくなく、これだけのCG特殊効果、美術で堂々のSF映画に仕上げている。
9月28日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ他で公開される。
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