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週刊・上杉隆
【第193回】 2011年9月22日
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上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]

今なお続く大手メディアの“不誠実”な報道に対する不信

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 そしてまた、記者クラブメディアがこの「安心デマ」「安全デマ」を盛んに報じたものだから、多くの読者や視聴者が真相を知らされないまま、被曝してしまったのである。

 筆者が繰り返し言及してきた「犯罪行為」とはこのことだ。

大手メディアはなぜ報じない?
情報次第で賠償請求に変化も

 さらに大きな問題は今なお、こうした事実が公表されず、どのメディアも報じないことにある。

 その結果、きょうの読売新聞がこっそり報じたニュースのように、読者にしてみれば「おや、そんなことになっていたのか」という記事が繰り返し載ることになるのである。

風評被害賠償金、きょうから仮払い請求受け付け

 東京電力の福島第一原発事故で福島、茨城、栃木、群馬県内の観光業者が受けた風評被害の賠償金を国が東電に代わって仮払いするための請求受け付けが21日から始まる。

 東電は今月12日から事故被害者への本格的な賠償手続きを開始。21日から法人、個人事業主にも対象を拡大するが、「東電による賠償金を待たずに運転資金が必要」という観光業者には、国が東電に代わって賠償金を仮払いする。文部科学省の発表によると、仮払いの請求書は郵送で受け付ける。宛先は、〒100-8959東京都千代田区霞ヶ関3の2の2「特定原子力損害に係る仮払金請求書 受付窓口」〉(2011年9月21日01時27分 読売新聞)

 このニュースは昨日のものだが、たとえば筆者のメルマガの情報と、大手メディアの情報では、観光業者が求める賠償請求の範囲も額も違ってくるのは明白だろう。

 各国の避難勧告情報を元に賠償を試算すれば、その範囲は東北のみならず、日本全土に及ぶことになる。

 こうした情報は死活問題であるが、日本のメディアの不誠実な報道のおかげでなにも伝わってこないのだ。

 繰り返し書こう。新聞・テレビは読者や視聴者のために、いい加減に政府・東電の情報隠蔽に加担するのは止めたらどうだろうか。


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上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]

株式会社NO BORDER代表取締役。社団法人自由報道協会代表。元ジャーナリスト。1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局記者、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者、フリージャーナリストなどを経て現在に至る。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『田中真紀子の恩讐』 『議員秘書という仮面―彼らは何でも知っている』 『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』 『ジャーナリズム崩壊』 『宰相不在―崩壊する政治とメディアを読み解く』 『世襲議員のからくり』 『民主党政権は日本をどう変えるのか』 『政権交代の内幕』 『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』 『暴走検察』 『なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか』 『上杉隆の40字で答えなさい~きわめて非教科書的な「政治と社会の教科書」~』 『結果を求めない生き方 上杉流脱力仕事術』 『小鳥と柴犬と小沢イチローと』 『永田町奇譚』(共著) 『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』 『この国の「問題点」続・上杉隆の40字で答えなさい』 『報道災害【原発編】 事実を伝えないメディアの大罪』(共著) 『放課後ゴルフ倶楽部』 『だからテレビに嫌われる』(堀江貴文との共著)  『有事対応コミュニケーション力』(共著) 『国家の恥 一億総洗脳化の真実』 『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』 『大手メディアが隠す ニュースにならなかったあぶない真実』


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