日本の人口の3割にあたる約3800万人が、地震で揺れやすい軟弱な地盤の上に住んでいることが分かった。軟弱な地盤は首都圏や大阪圏を中心に都市部で広がっており、巨大地震に見舞われると甚大な被害が生じる可能性がある。分析した独立行政法人の防災科学技術研究所(防災科研)が11月、東京で開かれる日本地震工学会で発表する。
【特集】揺れやすい地盤 各地の揺れやすさ検索機能も地盤が軟らかいと地震による揺れが増幅しやすく、地中の水が噴き出したり家が傾いたりする液状化現象が起きることもある。防災科研の研究グループは、地震波の伝わり方などで調べた地盤の固さと国勢調査に基づく人口分布を重ね合わせて算出した。
地震による揺れやすさは表層地盤増幅率で示され、1.6以上になると地盤が弱いことを指す。防災科研の分析では、2.0以上(特に揺れやすい)の地域に約2200万人、2.0未満〜1.6以上(揺れやすい)の地域に約1700万人が暮らしていることが判明。1.6未満〜1.4以上(場所によっては揺れやすい)の地域では約2200万人が住んでいた。
1.4以上の地域は国土面積の9%、1.6以上は6%にすぎない一方、軟弱な地盤は関東や大阪、濃尾、福岡など人口密度が高い平野部に広がる。大都市の住宅密集地並みの過密地域(1キロ四方に1万5千人以上)の場合、住民の半数以上が軟弱な地盤で生活していることになるという。
研究グループは、海溝型と活断層型の地震の発生確率に地盤の揺れやすさを加味した地震動予測地図も活用。全人口の4割強にあたる5300万人が「30年以内に26%以上の確率で震度6弱以上の揺れに襲われる地域」に住んでいると判明した。発生確率を「3%以上」とした場合、全人口の8割にあたる約1億人が6弱以上の揺れに見舞われることが分かった。
防災科研の藤原広行・社会防災システム研究領域長は「表層地盤増幅率が1.4程度の地域でも、平野であれば深部の地盤が軟らかい可能性があり、大きな揺れになるケースも考えられる。専門機関のハザードマップなどで住む場所の地盤を確認してほしい」と指摘している。(編集委員・黒沢大陸)
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〈表層地盤増幅率〉 地下を伝わってくる地震波が深さ30メートルの地盤で何倍に拡大するかを示した数値。地震の揺れの大きさは、地震の規模▽震源からの距離▽地盤の強さ――に左右される。増幅率の数値が高いほど、揺れやすい軟弱な地盤といえる。