最適なポートフォリオと
自分のストッパーが重要
──では、自分にふさわしい投資商品を選ぶにはどうしたらいいでしょう。
紀平 商品にはそれぞれ特性があります。長期運用に向いているもの、短期に向くもの。価格変動が大きいもの、小さいもの。仕組みが複雑なもの、シンプルなもの。利息・分配金・配当金などインカムゲインを狙うもの、安く買って高く売りキャピタルゲインを狙うもの。
これらのなかから、ライフプランに合わせて選ぶのが基本です。例えば、3~5年後の子供の大学進学の費用が目的だとします。その期間でキャピタルゲインを狙うのはハイリスクを伴うため、元本の安定性が高く、なるべくインカムゲインが大きい商品を選ぶのが一般的となります。
一方で長年をかけてセカンドライフの資金を増やしていくなら、キャピタルゲインを優先し、価格変動が大きい商品を選ぶ手もあります。運用期間が長ければ、収益が安定化する場合も多いからです。
このように資金の目的や使う時期に応じ、最適な運用のポートフォリオを組むことが必要です。そこには投資だけでなく、預金という選択肢も残るでしょう。典型的なのは、退職金の運用です。仮に60歳で3,000万円としましょう。
これを、下記のように3つに分けて運用するとします。
(1)向こう2~3年の生活資金
(2)70歳までの目的資金(年金の不足分、家のリフォーム、旅行など)
(3)70歳以降の余裕資金
例えば……
(1)生活資金は500万円。これはいつでも使えるよう預金しておきます。
(2)目的資金は1,000万円。比較的安定した投資商品にあてます。
(3)余裕資金の1,500万円は、利回りを重視して商品を選びます。
(2)と(3)は、それぞれ複数の商品に振り分けてリスクを分散させるのがベターです。また、こうして資金を使う時期を分けておけば、時間的にもリスクを分散できるのです。
──これから投資を始める人々に向けて心構えのアドバイスをお願いします。
紀平 いたずらに投資を怖がるのは考えもの。とはいえリスクがあるのも事実。これは病気や交通事故に似て、消しがたい類のリスクです。しかし「落とし穴などない」と安心しきっている人より、「きっと穴がある」と用心している人の方が、穴に落ちる危険度は小さいでしょう。
では、具体的にどうするか。自分自身のストッパーを設けておくのが有効な手段だと思います。分かりやすい一例ですが、「もっている金融商品の価格が1割動いたら必ず売る」と決めておく。上がっても下がっても、それ以上は欲張らないし、様子を見ない。すると、どちらにしても次の投資への原資を保てます。続けることで投資リテラシーが高まり、やがてリターンを大きくできる可能性にもつながるはずです。
また、投資のリターンはお金だけではありません。投資商品もグローバル化しているので、投資を始めると海外情勢への関心なども自ずと高まります。海外旅行が単なる観光だけで終わらず、その国の経済状況や活力を感じ取ろうとする視察にもなるでしょう。物事に対する視点が増え、見方も変わる結果、思いがけない発見ができて楽しみがふくらみます。
前向きな資産運用、投資で、「変化」の波に乗り、時代を生き抜くことは非常に大切。それと同時に、投資をきっかけに視野を広げ、新たな価値観に目覚めるチャンスをぜひ獲得していただきたいと思います。