2011年12月21日(水)

仕事も親も大切にする、介護費用捻出術

PRESIDENT 2011年11月14日号

著者
おちとよこ 
医療・福祉ジャーナリスト

札幌市生まれ。横浜市在住。高齢者介護、医療、福祉など家庭や女性問題に関するテーマを中心に、雑誌、新聞、テレビなどで活躍。自身も両親を16年間介護した経験がある。国、自治体の委員も歴任。主な著書に『ビジネスマンのための男を磨く!老親介護』『入院・介護SOS不安解消119のツボ』など多数あり。

医療福祉ジャーナリスト おちとよこ=文
1
nextpage

震災後、一人暮らしが不安になった高齢の親が、現役世代の息子や娘の元へ身を寄せる「にわか同居」が増えている。

なかには、短期間のつもりで呼び寄せたら、「私の勤務中に、ご近所のインターホンを押しまくり大騒ぎに。認知症がすすんでいてビックリ」(40代 情報会社勤務・シングル男性)など、離れていては気づかなかった親の老化に直面し、目の前が真っ暗になるケースも少なくない。こうした例によるまでもなく、親の介護が気になる現役世代は多いはずだ。そこで気になるのは、やはりマネーだが……。

介護費用は子育てと違い、先が見えないだけに不安が募る。平均的な介護期間は4年7カ月(生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」平成21年度より)。介護保険サービスの一人当たりの月額は、介護度が重くなれば上がるが、平均で自宅の場合1.1万円、特別養護老人ホームなどの施設入所の場合で、3.3万円となっている。だが残念ながら平均値は気休めにしかならない。個人差があまりにも大きいからだ。

たとえば私自身、両親介護期間は16年。長くなれば費用はかさみ、介護費用の総決算は、父の厚生年金とわずかな企業年金、退職金など預貯金のすべてだった。

また86歳になる母親(要介護3)と同居中のメーカー勤務の女性(50代)は、「ひと月の医療費が約1万円、訪問介護とデイサービスなど介護サービス費が2万5000円、見守りの有償ボランティア代が3万.5万円、食費やおむつ代などで月々10万円見当。兄からの支援金と母名義の年金に300万円足らずの貯金を切り崩しての綱渡り」と語る。

一方、同じ要介護3でも「介護費用は月40万円」という人もいる。商社勤務の50代男性は、月2回、郷里へ通い介護を続けて7年目。デイサービスは週3日、ヘルパーを自費でプラスして、朝、昼、夜と毎日上乗せし、配食サービスも毎日利用している。「私の交通費も入れてだが、父親が残した財産があるからやれる」と言う。まさに介護費用といってもピンからキリまで。それもない袖は振れぬのが定め。

思い余って、親孝行と介護費用節約のために退職という人もいるが、私は勧めない。一見、介護費用を払うより、自分でまかなうほうが経済的と思うかもしれないが、辞めて共倒れになった例をイヤというほど見てきたからだ。

真面目な人ほど介護を仕事化して過剰労働になったり、会社を離れることで疎外感を味わったり、地縁のなさから情報過疎に陥ったりする。介護ストレスからアルコール依存症になり、40代で認知症の母親に先立った元技術者の孝行息子の例などは、今でも胸が痛む。

PickUp

ツール
「マネーの新流儀」 バックナンバー一覧 »
「得するお金・数字」 バックナンバー一覧 »
関連記事一覧 »
キーワード

INFORMATION

  • dancyuおせち
  • ビジネスセミナー
dancyu