イラン:シリアとトルコ緊張に苦悩 ともに友好国
毎日新聞 2012年10月07日 19時56分(最終更新 10月08日 11時35分)
【テヘラン鵜塚健】内戦状態のシリアと隣国トルコの間で緊張が続く中、イランが苦悩している。シリアのアサド政権を支持するイランは、反体制派支持のトルコに対して難色を示しているが、トルコは緊密な経済関係を結ぶ重要な隣国でもある。シリア、トルコが交戦状態に入れば、イランもシリアに加勢せざるを得ず、両国に自制を求めている。
今月3日にシリアからの砲弾がトルコ領内に着弾し、子供を含む市民5人が死亡。トルコのエルドアン首相は「開戦の意図はない」としているが、ロイター通信によると、トルコ軍の報復攻撃は7日も続いている。
「隣国同士の友好関係を傷つける以外に何も意味を持たない」。イランのメフマンパラスト外務報道官は4日、シリアとトルコの両国に呼びかけた。また、フィロウザバディ・イラン軍統合参謀本部議長も5日、「イスラム国同士の戦争は米国が望むもの。両国とも相互不干渉の原則に戻るべきだ」と発言。米国の「陰謀説」まで持ち出し、両国に冷静な対応を求めた。
イランにとって、シリアは対イスラエル戦略で協調する重要な同盟国。イランはアサド政権に支援を続け「反体制派は外国に支援されたテロリスト集団だ」と非難する。一方、トルコはアサド政権に批判を強め、反体制派を支援。イランはトルコに反発しつつ、強い非難は避けている。
近年、イランとトルコは急速に関係を強め、イランメディアによると、今年度の両国間の貿易総額は推計で250億ドル(約2兆円)。イランはトルコへの天然ガス輸出にも力を入れる。米欧諸国による対イラン制裁強化で、主要国との輸出入が減る中、イランにとってトルコは命綱のような存在だ。シリア、トルコの双方との関係を失いたくないイランは両国間の開戦を望まず、国境地帯の情勢を注視している。