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PJ: 佐藤 学

ジダンの頭突きとOECD対日審査報告書。(1)
2006年07月21日 06:48 JST

(1)「日本はもはや平等な国ではない」(全6回)
OECD(経済協力開発機構)は7月20日、対日審査報告書を公表した。全6章の報告書の中に今回、一つの章が「格差問題」に充てられた。「格差問題に一章を費やすのは初めて(日本政府代表)」のことだ。日本は従来、所得の不平等度が少ない社会と見られてきた。しかし「最近は所得格差が拡大している」とOECDは警告。その理由として、日本は解雇に関する法制が未整備で、正社員の解雇が困難な点をあげている。「正規雇用への保護が手厚すぎる」がために、企業は非正規雇用への依存を強める結果となり、「所得の低い非正規雇用者の増大から、所得格差が拡大した」と指摘した。「日本はもはや平等な国ではない」。これがOECDの日本に対する基本認識だ。

 これより先の7月9日、サッカー・ワールドカップ決勝戦での頭突きの真相で揺れた、ジダン事件があった。「移民の子」は「差別」の温床だが、「差別」は「排除」を経由して、「所得格差」を生産する。「所得格差」はこの秋、総裁選を控える日本、中間選挙が予定されている米国、春、大暴動と若者のデモに揺れ、来年2007年に大統領選挙を控えたフランスで、大きく社会問題として取り上げられることになるだろう。だから、ジダン事件は、「格差の世紀」に揺れるこれからの時代を先取りし、象徴している。

 「capitalism(資本主義)」は、グローバリズムの洗礼を受け、いまや「GAPitalism(格差資本主義)」として、「所得格差」を世界的な問題に、今世紀を「格差の世紀」にしようとしているからだ。このことについては、特集・格差の世紀(日経ビジネス 2006年07月10日 )に詳しい。

 ジダン事件の「差別」に「正社員の保護」を、「排除」に「非正規社員」を当てるとき、私達はOECDの指摘を理解することになる。フランスで「差別」は「排除」を経由して、「所得格差」を生産する。日本で「正社員の保護」は「非正規社員」を経由して、「所得格差」を生産する。

 フランスにおける「移民の子」が、日本で実は「フリーター」「母子家庭」に相当することを、我々は知らなければならない。シリーズの後(第三回)で見るように、共働き世帯の「パートのおばちゃん」ではなく、「フリーター」「母子家庭」が日本の「貧困」の温床になっている。

 ジダンが頭突きした本当の相手は、「差別」を抱える社会だったはずだ。一体誰が、日本の差別社会に「頭突き」するのか。どうやって「頭突き」するのか、その戦いのピッチが、この秋の総裁選でありますように。【つづく】

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