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ふぐの卵巣の糠漬け

どのように作るのか

職人の技物語

7.夏の暑さ、冬の寒さを超えて、深い味わいが生まれる
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7.夏の暑さ、冬の寒さを超えて、深い味わいが生まれる1
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冬、冷たい海風に吹かれ、小屋の中は小休止。
春がめぐり、微生物は活発に動き始め、発酵も加速していく。

6月、保存小屋の周囲はハマヒルガオの花が咲き、
コバンソウの実がわずかに色づき始めている。
新しい糠漬けの桶が運び込まれる。
今年の桶は木肌があらわである。
1年目の桶は周囲に徐々に塩の塊が付着し、
2年目の桶は周囲が赤く色づいてくる。
ふぐの卵巣の糠漬けに関わる人たちはこの色を「ベンガラ色」と呼ぶ。
塩分に強い微生物に含まれる「カロチノイド」の色だという。
発酵が進み、旨みがましている証。
しかし、いずれの桶もまだ乾いている。

7月も半ばになると
木蓋のところまで漬け汁があがり、桶の周りも水分でしっとりとしている。
このころ、漬け込んで1年目の桶に均等に重さをかけるために
三段に重ねた桶の上下を入れ替える。
外気温が30度を超えると、小屋の中の温度も上昇。
40度近くになることもあるという。
作業は気温の低い朝か夕方に行うが
桶を1個1個置き換えていく作業はかなりの重労働である。
けれど、製法は変えられない、変えようがない。
ただ、安心して食べてもらえるものをつくりたい。納得できるものを届けたい。
その思いが作業する人の汗ににじむ。