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2012年10月7日(日)付

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維新と国会―もう、秋風ですか

結党してわずか1週間でこのごたごたは見苦しい。日本維新の会の代表、橋下徹大阪市長が日韓で領有権を争う竹島の共同管理案をうちだしたところ、松浪健太衆院議員がブログで異を唱[記事全文]

日中経済―「一衣帯水」だからこそ

「一衣帯水」の相互依存を示すように、日本と中国の経済がともに減速している。欧州危機に端を発する世界的な貿易縮小の玉突きが原因だ。欧州を最大の輸出先とする中国は、成長率が[記事全文]

維新と国会―もう、秋風ですか

 結党してわずか1週間でこのごたごたは見苦しい。

 日本維新の会の代表、橋下徹大阪市長が日韓で領有権を争う竹島の共同管理案をうちだしたところ、松浪健太衆院議員がブログで異を唱えた。

 これに、橋下氏が「国会議員団の方針に有権者がついてくるなら、維新の会に所属してくれなくていい」と反論。竹島問題に限らず、「国会議員が決める」「いや、代表に権限がある」という応酬があった。

 もともと地方議員の集団である大阪維新の会が、国政政党に脱皮できるかどうかが注目されるなか、途中で合流した国会議員との間で早くも主導権争いの様相である。

 これでは、既成政党にはない、維新の会の清新さに期待した人も、がっかりするだろう。

 本気で国政の一角を担うつもりなら、いいかげんに新党結成の高揚した気分を脱し、足元を見つめ直してはどうか。

 まずは党の理念や意思決定のあり方を地道に固めることだ。

 党規約によれば、橋下氏や松井一郎大阪府知事、府・市議の代表らでつくる執行役員会が重要事項を決める。国会議員団はその下という位置づけだ。

 地方から国政を動かし、東京一極集中に風穴をあけようというねらいはわかる。

 だが、東京と大阪で意見がくい違ったら、大阪の地方議員らが国政の重要事項を決めることになる。これは民意の反映として望ましい姿だろうか。

 橋下氏はきのうの記者会見で、国と地方で役割分担し、国のことは国会議員団が決めると強調した。他方、代表として最終決定は自分がやるともいう。だが、これでは国会議員にならない橋下氏が国政の責任をとるのか、という疑問は消えない。

 変えるのは国か、大阪か。一時の人気で新党結成を急ぐあまり、維新の会自らもわからなくなっているのではないか。

 ここは原点に立ち返り、何をめざす政治集団なのか、一から議論し直してはどうか。その上で目標を実現するのに最適な党のあり方を決めるのが筋だ。

 有権者は敏感だ。最近の報道機関の世論調査によれば、維新の会にかつてほどの追い風は吹いていない。

 党内のごたごたや、選挙目当てとしか思えない国会議員たちのふるまいに、有権者が冷ややかなまなざしを向け始めているのだろう。

 政治の閉塞(へいそく)状況が続くなか、橋下氏や維新の会の問題提起には傾聴すべきものもある。

 秋風が吹くには早すぎる。

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日中経済―「一衣帯水」だからこそ

 「一衣帯水」の相互依存を示すように、日本と中国の経済がともに減速している。

 欧州危機に端を発する世界的な貿易縮小の玉突きが原因だ。欧州を最大の輸出先とする中国は、成長率が8%を割った。日本の対中輸出もこの夏から減少が鮮明となり、国内景気は踊り場に入った。両国の減速は世界経済にも逆風だ。

 中国の日系企業は2万2千社を超す。ユーロ危機や人件費の上昇で欧米勢が対中投資を減らすなか、日本は中国への積極的な投資を続けてきた。

 これが中国経済の鈍化を和らげ、ひいては日本の成長にも寄与する。そんな期待がかかる矢先の尖閣問題だった。

 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が「隣国同士の共存には寛容さが必要」と苦言を呈するのもわかる。

 デモでの破壊行為や不買運動が、日本企業に「中国リスク」を痛感させたのは間違いない。

 そもそも中国経済は歴史的な転換点にある。投資と輸出への依存から内需中心へ、製造業からサービス業へ、沿岸から内陸へ。課題は山積している。

 新しい指導部への移行をはさんで、果たして順調な成長軌道に戻れるのか――。

 世界の企業が中国の成長への期待とリスクを再評価し、グローバル戦略を見直すのは自然な流れだ。生産拠点を中国以外の国にも置く「チャイナ+1」志向も加速するだろう。

 目を中長期に転じれば、中国は一人っ子政策の影響で「人口オーナス(重荷)社会」へと移行していく。中国では「未富先老」(豊かになる前に高齢化する)といわれる。この変動がバブルの崩壊や金融危機、政府債務の膨張による停滞へと連鎖する可能性もある。

 それでも、社会保障の諸制度を整え、新しい産業を興し、人々に豊かさを実感させる経済へと転換できれば、巨大な成熟市場となる。それに貢献できるなら、日本の企業と経済にとってのメリットも大きい。

 問題は日本企業にもある。欧米企業に比べ、中国人社員の処遇が悪く、就職先として不人気だ。現地化を進め、中国の人々に支持される努力を怠るべきではなかろう。

 「遠慮近憂」という孔子の言葉は「先々のことを考えないでいると、必ず身近に問題が起きる」という意味だが、下から読み替えてみても示唆深い。

 すなわち、当面の問題を克服するには、中長期の大局に立って相互信頼を取り戻すことこそ大切なのではないか。

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