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遠隔操作ウイルス 想定せずに逮捕か
10月7日 17時57分

無差別殺人を予告する書き込みをしたとして逮捕された大阪の男性が、事件とは無関係の可能性があるとして釈放された問題で、警察は、男性のパソコンが特殊なウイルスの感染で第三者によって遠隔操作された可能性を想定しないまま、男性の逮捕に踏み切っていたことが警察関係者への取材で分かりました。

この問題は、ことし7月、大阪市のホームページに無差別殺人を予告する書き込みをしたとして逮捕・起訴された大阪・吹田市の42歳の男性が、事件とは無関係の可能性があるとして釈放されたものです。
男性を逮捕した経緯について警察関係者に取材したところ、警察は、捜査段階で、男性のパソコンが特殊なウイルスに感染し脅迫文が第三者の遠隔操作によって書き込まれた可能性について、想定していなかったことが新たに分かりました。そして、男性のパソコンのウイルス感染を把握しないまま、このパソコンに残されていた書き込みの発信記録を決め手に逮捕に踏み切ったということです。
警察がウイルス感染に気づいたのは、検察が男性を起訴したあとだったということです。
この問題を巡っては、男性のパソコンが感染したのと同じウイルスが、別の書き込み事件で三重県警察本部が、先月、逮捕した男性のパソコンにも感染していたことが分かり、この男性も釈放されています。

“捜査の経緯”

捜査関係者によりますと、今回のような事件で警察は、通常、書き込みを行った人物を特定するため、まず、インターネットを利用する端末に割り当てられている「IPアドレス」と呼ばれる固有の登録番号を調べます。発信元の端末が特定されると、その端末を押収して詳しく分析し、書き込みをした痕跡があるかどうかを確認します。そして、痕跡があれば、端末を利用している人物を特定し裏付け捜査を行ったうえで立件します。
しかし、今回のケースでは、逮捕された人のパソコンに書き込んだ痕跡はあったものの、実際に書き込みを行ったのはパソコン所有者などではなく、パソコンがウイルスに感染したことで、外部の第三者に遠隔操作されていた疑いがあるということです。
今回、大阪と三重で逮捕された人が釈放されたことについて、警察庁は「事件の全容解明に向けて引き続き捜査するとともに、捜査の経緯など事実関係の確認をさらに進め、課題が見つかれば対応や指示を行っていきたい」としています。

“捜査は慎重に”

元検事でインターネットを使った犯罪に詳しい落合洋司弁護士は、「コンピューターウイルスは次々と新しいものが生まれてくるので、捜査当局が把握できていないウイルスというものも当然、出てくる。分からないことがある以上、謙虚な姿勢で捜査に臨み、被疑者が『やっていない』と強く言っている場合には、慎重に捜査を行うことが求められる」と話しています。そのうえで、「捜査当局は、未知のウイルスなどの新たな手口について、できるだけ幅広く情報を収集するとともに、海外の捜査機関も含めてそうした情報を共有していく必要がある。今回のような失敗がないように今後の教訓として生かしていくべきだ」と指摘しました。

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