「韓国の領海・領空を侵犯したものでもないので、発表しませんでした」
先月21日、海上自衛隊の護衛艦が韓国の作戦認可区域(AAO)に入って公海上を独島(日本名:竹島)東方30マイル(約55キロ)まで接近し、ヘリの離着艦訓練を行って韓国の防空識別圏(KADIZ)を侵犯したため、韓国軍の戦闘機や艦艇が緊急出動するという事件が起きた。その後2週間近くこうした事実を伏せていた理由について、韓国軍の関係者は上記のように説明した。
日本の航空機や船が韓国空軍のKADIZや韓国海軍のAAOに侵入するのはよくあることなので、実際に韓国軍当局が今回の事件を深刻なものと受け取めなかったことも考えられる。KADIZ・AAOなどは、韓国の領空・領海より広く、その区域に他国の航空機や艦艇が入って来た時に対応したり、あるいは韓国軍の作戦上の便宜という観点から設定された、一種の戦術措置ラインだ。しかし今回の事件をじっくり観察してみると、異例の部分もある。これまでKADIZなどに侵入してきた日本の航空機・艦艇は、ほとんどが海上保安庁所属だった。海上自衛隊の艦艇がAAO内に入り込んだのは、ここ5年間では初めてだという。護衛艦に搭載されたSH60ヘリによるKADIZの侵犯も、非常にまれな事件だ。韓国が空軍最新鋭のF15K戦闘機や駆逐艦、ヘリなどを緊急出動させた点も、今回の事件が異例のものだということを示す証拠になる。
韓国軍内部からも、この事件の直後、すぐさま発表すべきだという意見が出たが、結局発表しない方向で結論が出たという。韓国軍の一部からは、大統領府(青瓦台)や政府全体の基調に沿って軍がそうした結論を出した、という話も出ている。李明博(イ・ミョンバク)大統領が今年8月10日に独島を訪問し、8月15日の光復節(日本の植民地支配からの解放記念日)に演説を行った後、韓国政府は「韓国のメッセージは十分に伝わった。これ以上日本を刺激する必要はない」として、いわゆる「低強度対応」に転換した。韓国軍もこの基調に沿って、海自の護衛艦やヘリが無断侵入した事実を内密にしてきたというわけだ。韓国軍は、国会の国政監査で露見しなければ、この事実を永遠に隠しておけると信じていたらしい。
韓国軍は、2010年の哨戒艦「天安」爆沈事件と延坪島砲撃挑発の時も、北朝鮮を懲らしめるより政権の動向を探る方を優先し、機会を逸したという批判を受けた。韓国軍はいつから、政権や他官庁の様子をうかがうようになったのだろうか。