カダフィ大佐殺害:仏国防省の関与説浮上
毎日新聞 2012年10月05日 20時37分(最終更新 10月05日 23時29分)
【パリ宮川裕章】リビアの最高指導者だったカダフィ大佐の昨年10月の殺害を巡り、フランス国防省工作員の関与説が浮上している。仏インターネット紙「メディアパー」は「仏工作員が大佐を直接殺害した」とする当時の反カダフィ派「国民評議会」幹部の証言を掲載し、当時のサルコジ仏大統領が、07年大統領選前にカダフィ氏から資金援助を受けていた疑惑との関連性を指摘した。仏国防省はコメントを拒否している。
証言したのは、当時、国民評議会で対外情報担当だったラミ・エルオベイディ氏。2011年10月20日、反カダフィ派がリビア北中部シルトでカダフィ大佐を拘束した際、「仏軍特殊部隊と国防省対外治安総局の工作員が現場で展開し、工作員がカダフィ大佐を殺害した」と語った。
サルコジ氏を巡っては、07年大統領選前にカダフィ氏側から5000万ユーロの選挙資金援助を受けていた疑惑が仏主要メディアで既に報じられている。エルオベイディ氏はカダフィ氏の拘束により「(カダフィ氏側からサルコジ氏側への)選挙資金協力に関する秘密が暴露される恐れがあったはずだ」と語った。
また、英「テレグラフ」紙などによると、リビアのジブリル前暫定首相は、カダフィ氏殺害への外国の工作員の関与を認めており、イタリア有力紙「コリエレ・デラ・セラ」は9月29日、トリポリの欧州外交筋の証言として仏のカダフィ氏殺害関与の可能性を報道している。
一方、エルオベイディ氏は英テレグラフ紙に、シリアのアサド大統領がカダフィ氏の所在に関する情報を仏政府に伝えていたと証言した。カダフィ氏は拘束前、シリア国内のリビア人と連絡を取っており、「アサド大統領は仏政府がシリアへの政治的圧力を弱めることと引き換えに、カダフィ氏の通話に関する情報を提供した」と語った。