(2012年10月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
大株主が企業を容赦なく批判すればその会社のイメージは大きく損なわれる。しかしこれが東京電力に降りかかった悲しい運命だ。
■垂直統合型の産業構造に疑念高まる
先月開かれた自然エネルギー分野の国際シンポジウムで、東京都の猪瀬直樹副知事は東電の地域独占を打破すべきだと強い言葉で主張した。東京都は6月の国有化以前は同社の筆頭株主だった。同氏は、猛獣には水に落ちた瞬間しか勝てない、いま勝負しなければ永遠に変わらない、と訴えた。不当に厳しい表現に聞こえるかもしれない。千年に一度の大地震と津波が東日本を襲うまで「東京電力」は人々に尊敬される企業だったのだから。
かつての優良公益企業は、福島第1原子力発電所の大事故を招いた電力事業者として国際的に悪評を広めた。だが、同原発が津波対策を怠ったのは東電だけの責任ではない。監督官庁や政治家も、地震関連のリスクを警告する原子力専門家の意見に耳を傾けなかった。
しかし、猪瀬氏の発言は理不尽な東電バッシングとして片付けることはできない。日本人の多くが東電をトップに垂直統合された地域電力会社が発送電事業をほぼ独占する産業構造に疑念を抱いている。
専門家もかねて現体制への批判を繰り返してきた。独立系発電事業者が電力大手の送電網に依存せざるを得ないことで競争力低下を招くうえ、日本が脱原発の切り札と期待する再生可能エネルギーの発展を阻害するからだ。
東電などの電力大手が資金力に物を言わせて政治家や官僚の支持を取りつけ、広告宣伝費をえさに主要メディアを動かしているため、電力業界の再編が進まないという猪瀬氏の意見に賛同する人は多いだろう。
■技術革新や再稼働に道開く可能性
東電を解体すれば長らく議論されてきた発送電分離に道を開く。発電所を競合する地域電力会社などに売却することで競争が生まれ、技術革新が促される。売却で調達した資金を福島第1原発の汚染地域から避難した住民への莫大な補償費用に充てることもできる。
東電解体により、現在停止中の原発の再稼働に向けて住民の同意が得やすくなる可能性もある。東電では2011年以前にも安全性を巡るスキャンダルが相次ぎ、福島第1原発事故の対応では透明性が疑問視された。同社に対する怒りはいっそう根深いものになっている。
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