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東北の「ヘリサイン」整備進まず 屋上に施設名、救助に有効

熊本県が各地に整備したヘリサイン。球磨村では役場屋上に村名を表示した

 東日本大震災を受け、消防防災ヘリコプターが救助活動に当たる際、飛行の目印となる「ヘリサイン(対空表示)」の重要性が見直されている。震災を踏まえ、西日本では公共施設の屋上に施設名を表示する自治体が出てきたが、東北では関心が低く動きは低調だ。関係者は「津波に繰り返し襲われた東北にこそ必要だ」と話している。

◎熊本県が導入

 熊本県は昨年度、県の出先機関や小中学校など95カ所の屋上に黄色のヘリサインを整備した。1文字の大きさは4メートル四方で、認識しやすいよう漢字表記とした。
 整備のきっかけは震災での救助活動。同県の防災消防航空隊は震災翌日の昨年3月12日から4日間、石巻上空で活動した。航空隊によると、目標となる建物の流失や幹線道路の水没で地図との照合が難しく、救助要請があった場所に向かうのに苦労した。着陸地を間違え、搬送に時間がかかった例もあった。
 航空隊長だった熊本市消防局の平井司朗さん(45)は、この経験を生かし「避難先となるような建物にサインがあれば、土地勘がない隊員でも活動しやすい」と関係機関に働き掛けた。
 ヘリサインは阪神大震災(1995年)を契機に大都市圏で普及が始まった。関東の知事や市長でつくる「首脳会議」は2002年、「都県境を越えた救助に役立つ」と文字の大きさや向きを統一。表示箇所は2010カ所に上る。
 東北でも「衛星利用測位システム(GPS)を使っても最終確認は目視。サインがあればアクセスが格段に向上する」(青森県防災航空隊)と整備を求める指摘がある。
 被災地では一部にサイン整備を探る動きもあり、気仙沼市は「地域防災計画の見直しの中で検討したい」と話す。ただ被災自治体でさえも、整備が大きな広がりになっていないのが実情だ。
 自治体は「費用が掛かる」「関係機関との調整が難しい」などを理由に挙げる。「冬場は雪対策が必要になる」(秋田県)との事情もある。

◎全国規格必要

 熊本市消防局の平井さんは「太陽光パネルの設置や屋上の防水工事を並行すればコストが抑えられる」と助言する。
 消防防災ヘリ活用の在り方を考える国の検討会で座長を務めた吉井博明東京経済大教授(災害情報論)は「津波や水害で水没した地域でサインが威力を発揮する。普及のためには全国で規格を共通にするなどの対応が必要だ」と話す。

[ヘリサイン] 行政庁舎や小中学校、病院などの屋上に塗料やタイルで表示した施設名や識別番号。ヘリコプターはGPSを使い目的地に向かうが、最後は目視となるため、サインが位置把握に有効とされる。総務省消防庁の検討会が2009年にまとめた報告書は「地理に不慣れな他機関からの応援ヘリの活動が円滑になる」とした。


2012年10月07日日曜日


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