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▽野田はん、必要なんは情報、確信、大きな絵、力や  

 この国の政治家の見識や質の低さは今に始まったことやないかもしれんけど、野田はんの尖閣諸島の国有化をめぐる対応はワシら素人から見ても稚拙さが目につくなあ。一言で言わせてもらうと、戦略がまるでないんとちゃう、やろか。外交ちゅうのはな、それこそ海千山千の世界なのに、野田はんや、補佐している連中はええ人すぎんのと違いまっか。なんや、内閣やら改造しはったけど、日本列島をすっぽり覆う暗く重い雰囲気が変わる気配がみじんも感じられへん。

 景気が低迷してお給料もボーナスも減らされて、ワシなんか、飲み代なんかもばっさりや。猛暑がおさまったおかげで、ちょっとはイライラ指数は下がったけど、連日のように尖閣や竹島やいうて、人民共和国やら大韓民国やらから伝わってきよる居丈高な振る舞いを見せられる上にやで、なんや知らんが「冷静で大人の対応」っちゅう政府上つ方の対応にせっかく下がりかけたイライラ指数も上がりっぱなしや。なんもやらん、言うてるんとちゃうんか。ホンマ気にいらんなあ。

 まずな、言うときたいんは、尖閣国有化が悪い、言うとるんとちゃうで。むしろここまで放置してきた自民党さんの方の責任も大きいと思うわ。国有化に踏み切ったんはそれなりに評価はできる。けどな、その後の対応がやな、まったくなっとらんがな。

 そもそもな、尖閣国有化したら、なんでもありの人民共和国がやな、手も口も使って怒りをあっちゃこっちゃにぶつけてくるんは子供でも分かることやった。だからやるときには、大っきな戦略を描いてな、総理の雁首かけるくらいの覚悟と信念を内外に示すことが必要なんや。

 当然、水面下ではや、かの国がこう出てきたら、こうやって返そうとか、ああ出てきたらこんなカウンターパンチ打とうかとか、第1弾、2弾、3弾と色々シナリオ取りそろえて万全の準備をしておくのが外交の「イロハ」やおまへんか。

外交のプロ連中は何してたんや
 せやのに反日デモやら日本企業への襲撃、焼き討ち、略奪を目のあたりして上つ方から出てきた言葉は―。

 「反発は想定していたが、これほどとは……」。

 こ、こ、この発言は何?まるであほそのものやないか。絶句。

 準備不足っちゅうか、戦略のなさっちゅうか、あきれて物が言えまへん、っちゅう感じ。これ聞いてワシは背筋が寒うなった。なんでもありのごり押し得意のかの国がもう少し腕力を使ってきたら、どないしてたんや。なんぼアメリカさんが付いとるいうてもな、やることやっとらんで人にモノ頼めんで。どっかの週刊誌が「お馬鹿官邸」言うとったけど、ワシの周りのみんなも少なからず同じような感情と印象を持ったで。これでは単に新宿の頑固な古老に脅されて、切羽詰まってエイヤって決めたと言われても仕方おまへんで。

 まあ、こんな連中にだまされ、自民党さんよりもうちょっとマシになるんとちゃうやろかなどと甘い期待を抱いて政権交代させたワシらの責任も問われんといかんと思うとります。だから次の選挙にはもうだまされんで、と気合いが入っとるんやが、それはともかく、「尖閣」では、問題が3つあると思うんや。

 1つは素人の野田はんや経験のない取り巻き議員はんらはさておき、外交のプロの連中はいったい何をしてたんや、ということや。かの国の出方なんぞいくらでも予想がつくやろ。なんでもっと的確な情勢分析とアドバイスをしてやれへんねん。野田はんがかの国のトップとウラジオストクで立ち話して、すぐに国有化の閣議決定というタイミングの問題もあるやろが、要はわが国の方針をかの国の上までしっかり伝えておらん、いうことやろ。 事前の根回し不足が歴然や。上の方まできっちり伝わるようなパイプが細かったちゅうことでもあるな。もっとも、伝わっとっても同じような反発があったんは確かやろけどな。

 でもな、外交のプロとしてのあんたらの責任はものすご大きいで。外交でメシを食い、任地であんなレベルの高い生活を保証されとって、大事なときにちゃんとした役割を果たさんあんたらって何者やねん、ホンマ。野田はんがおかしな決断をするようなら、首をかけて意見し、場合によっては諫めるっちゅうのがプロに求められる任務やないの。

 報道や情報によれば、国有化の決定にいたる最後の会議で、外務省の役人が中国側の厳しい反発が予想されるので慎重に、などとアドバイスしたらしいんやが、体を張って意見したとは到底思えん。

 2つ目は国際社会、国際世論に対し、日本の主張を理解してもらう努力が、全くもって、絶望的に足りんということや。

 国有化の決定を誰が考えたって今すぐ戻すということはあり得んやろ。そんなら国際社会、国際世論に日本の主張、言い分を分からせ、味方につけてこの外交戦に勝たないかんっちゅうことや。そのために何をせなあかんか、や。最近になって少しは反論もするようになったみたいやけど、これまでのところ、驚くほどなんにもやってへんように見えるな。 国連総会の場で日本を「盗っ人」呼ばわりしたかの国は自分たちの主張の正しさを訴えたパンフレットを総会でばらまき、米国やアジアなどの新聞に己の正しさを強調した広告を出すなどこれでもか、これでもかと品のない宣伝戦に全力を挙げとる。うそも1000回言えばホンマになると昔の人も言うとったけど、がんがん攻勢に出とる。

大っきな戦略があらへん
 対して日本政府の努力は極めて貧弱や。「大人の対応、冷静な対応」一辺倒でシビアな国家間の紛争に通用するわけないやろ。やるべるきことをやってから初めて言うなら分かるけど、対外発信力の弱さには目を覆いとうなるな。外交官の生活費を半分にして宣伝工作費につぎ込んだらどうや。

 クウエートがイラクに侵略された湾岸戦争の後、クウェートはイラク侵略軍を追い払った多国籍軍関係国に感謝するため米有力紙に「ありがとう」と広告を出した。そん時、日本の名前がなかった。当時、日本人がクウェート支援のために出した税金は一人アタマ約5万円。それでもクウェートから感謝の言葉がなかったんやで。「日本外交が敗北した日」と揶揄されたんが昨日のようや。その反省生かしてへんし、その教訓からなんも学んどらんのは実に悲しいことや。

 3つ目はな、いろんな識者が言うとるのとダブルんかもしらんけど、野田はんや取り巻きはんらには、大っきな戦略があらへんちゅうことや。

 「尖閣」の対応はいかにも場当たり的で、長期的な展望に基づいて物事を決めておるとは到底言えんな。まあ、「尖閣」だけではなく、腰の定まらん原子力政策も似たようなもんやろ。

 人民共和国も大韓民国も経済大国の仲間入りしたと自認とるから、ワシらは昔のワシらとちゃうで、日本がなんぼのもんや、と思とるはずや。経済的にみれば、色んな数字が示してるとおり、彼らの認識は正しいかもしれんな。日本だけが経済的に優位に立ってた地図が様変わりし、東アジアのパワーバランスが崩れ去ったことを前提にきちんと計算して戦略を練り直さなアカン。

 この前、ある識者の講演を聞いてなるほどな、と思たことがある。この識者は、野田はんらには戦略がない、と断じ、戦略的な考えがないとポピュリズムに落ちていきやすいとその危険性を指摘しとった。

 で、彼が言うには戦略策定とその実行に必要なんはICBMやと。大陸間弾道ミサイルやないで。Iはインテリジェンス(情報)のI。的確な情報収拾力を持ち、集めた情報を的確に分析・評価することが極めて重要らしいで。よう分かるなこれは。

 Cはコンビクション(確信)のC。強固な確信・信念を持ってない人に戦略を策定するのは無理。政治家、特に総理にはこれが求められるな。野田はんはこの信念があるやろか。
 
 Bはビッグピクチャー(大きな絵)のB。領土問題を単に日中関係、日韓関係だけでとらえるんやなしにアジア全体、あるいは米国や豪州まで巻き込んだ視点で資源問題から通商、防衛、外交まで包括的に大きな絵を描いて国益を考えていくことや。

 Mはマイト(力)のM。戦略を実行するには力が必要だ。軍事力のことだけを言っとるんやないで。政治、金融・経済、科学技術そして社会・文化まで日本の持てる総合力を駆使することが必要になる。当然政府だけやなく官民一体となった態勢づくりが重要になってくる、いうこっちゃ。かの国で北海道を舞台にした映画が大ヒットしたり、4人グループの歌手が人気を博し、また日本のアニメがブームになることなんかも総合力のうちや。

 「尖閣」「竹島」はのどに刺さった鋭いとげのように隣人との関係を今後長い間、さいなむやろ。せやから、しっかり計算した戦略を策定し直し、その戦略に基づいて許されうるあらゆる手段を行使して一歩一歩とげを抜く努力を積み重ねることや。時間がかかってもそれが、この袋小路から抜け出す一番の早道やとワシは思うで。
          

(2012年10月4日 たぬ)

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