福島健康調査:「結論ありき」県民憤り…検討委「進行表」

 東京電力福島第1原発事故を受けて福島県が設置した県民健康管理調査の検討委員会で、県が委員らと事前に調整していたことを示す「議事進行表」の存在が明らかになった。内部被ばく調査の結果については「結語」として「相当に低い」との発言予定を記し、問題となりそうな話題については「そらして下さい」と要望。A4判2枚の文書には県による「振り付け」とも受け取れる記載が列記され、県民らは不信感を募らせている。【日野行介、武本光政】

 ◇議論の場、意見出ず

 「不気味なほど意見が出ない。おかしい」。福島市内の市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」はメンバーが検討委を傍聴しているが、代表の佐藤幸子さん(54)は検討委の議論にそんな疑問を抱いていたという。

 検討委の前日に委員らに送られた進行表には、浪江町と飯舘村、川俣町山木屋の3地域で120人を対象にした内部被ばく調査についての記載がある。調査結果への見解は翌日の検討委で議論されるはずなのに、議事進行における「結語」として「内部被ばくは合計しても1ミリシーベルト未満で、相当に低いと評価」などと記されていた。

 また、内部被ばくの検査手法を巡り「WBC(ホールボディーカウンター)の今後の普及とGe半導体(ゲルマニウム半導体検出器)の逼迫(ひっぱく)状況(牛肉等)を考えると、尿検査でWBCを代替えするのは困難ではないか」との記載もあった。尿検査はホールボディーカウンターと呼ばれる大型機器を使った検査より放射性物質の量を正確に調べられる一方、かなりの量の試料が必要とされ、手間がかかるとされる。また、尿検査に使用されるゲルマニウム半導体検出器は、牛肉などの検査にも使われている。

 同ネットワークは事故直後から尿検査の導入を訴えているのに対し、県は県議会などで慎重な姿勢を示し続けている。佐藤さんは「やっぱり、結論ありきの議論だったのか」と憤りを隠さない。

 また、進行表のうち調査の進捗(しんちょく)状況を巡る項目では、問題視された「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」の話題をできるだけ避けるよう要望。仮に話題になった場合には、別の委員会で検討するとして話題をそらすよう求めていた。

 詳細調査の項目には「予算の有効配分と実効性を踏まえて、あれもこれも追加は不可です」「下記の範囲での議論をお願いします」などとの記載もあり、一定程度議論を誘導したい県の意向がうかがえる。

 内部被ばくに詳しい矢ケ崎克馬・琉球大名誉教授(物性物理学)は「特に下線を引いたりした部分は、影響を過小評価したい思惑を感じる」と、県の姿勢に疑問を呈した。

2012年10月05日 02時33分

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