東日本大震災:復興予算問題 宮城・石巻復興に反捕鯨対策予算 地元「ぴんとこない」
毎日新聞 2012年10月06日 東京朝刊
東日本大震災の復興予算が本来の目的と離れて使われている問題で、農林水産省が22億8400万円を投じて昨年度実施した「鯨類捕獲調査安定化推進対策」事業も、反捕鯨団体の妨害対策や調査捕鯨の資金不足の補填(ほてん)に充てられていた。捕鯨関連業者が集まる被災地・宮城県石巻市でも「復興予算と言われても、ぴんとこない」といった声が聞かれる。【神足俊輔】
石巻市や地元関係者によると、乗組員など調査捕鯨関係者の約1割に当たる25人程度が石巻市民。市内には鯨の加工品製造業者が2社あり、津波で倒れた巨大な缶詰形タンクで有名になった「木の屋石巻水産」は被災して県外で操業を再開している。
水産庁は「鯨の関連産業は大きくはないが一定ある。鯨肉の安定供給が復興につながる」と強調。5日の閣議後記者会見で郡司彰農相も「120社、1200人の従業員がいる」と述べたが、これは末端の小売店や料理店の従業員まで含めた数字とみられる。また、捕れた鯨は一度東京に水揚げされるが、東北に運ばれるのは震災前でも全体の1割台だった。
今回の事業で水産庁が安定供給をうたう背景には、調査捕鯨の運営費不足がある。調査捕鯨は捕った鯨を調査副産物として販売し、その収入で運営。09年度収入は507頭で27億円だったが、10年度は反捕鯨団体「シーシェパード」(SS)の妨害で調査を打ち切ったため172頭、9億円にとどまった。