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原発を止めてもリラッキングされた使用済み燃料プールの危険はなくならない

中島聡

2012年05月15日 05:43

Arnie Gunderson 博士は以前から3号機での爆発は水素爆発ではなく、使用済み燃料プールの燃料が臨界を起こした臨界爆発(prompt critical explosion)だったと主張している。彼の主張は下のビデオを見ていただくのが一番良いが、その中で彼は「去年の3月に NRC Reactor Safety Team によって書かれたレポートには、使用済み燃料プールから爆発により飛び出して来たと思われる核燃料が1マイルも離れたところで発見された、と書かれている」と述べている。

その資料は、本来は非公開情報だが、すでにリークされており(参照)、誰でも読むことができる(読みやすいコピーをここに置いておく)。注目すべきは、10ページ目の以下の記述。

Fuel pool is heating up but is adequately cooled, and fuel may have been ejected from the pool (based on information from TEPCO of neutron sources found up to 1 mile from the units, and very high dose rate material that had to be bulldozed over between Units 3 and 4. It is also possible that the material could have come from Unit 4). [RST Assessment of Fukushima Daiichi Units. 3/26/2011]

使用済み燃料プールの核燃料が飛び散ったとすれば、それは単なる水素爆発ではなく、プールの中の核燃料が再臨界を起こしたとしか考えられない、というのが Gunderson 博士の主張だ。

ちなみに、このビデオでもっと気になったのは、Gunderson博士が「最近はどこでも使用済み燃料プールには臨界ギリギリにまで使用済み燃料を詰め込んでおり、万が一地震などでプールが損傷することがあれば、再臨界を起こす可能性が十分にある」と述べている部分。

日本でも、数年前から中間貯蔵場所の不足を補うために、全国の原子力発電所で「リラッキング」と呼ばれる燃料の詰め込みが行われている。2010年にも、関西電力が高浜1・2号機の使用済み燃料プールに実行増倍率 0.977 という臨界ギリギリのところまで(増倍率が1を超えると臨界暴走してしまう)使用済み燃料を詰め込んでいることの危険性が指摘されている(参照)。国際的には5パーセントの安全マージンが必要とされているのに、「しまう場所がないから」と言うだけの理由で2パーセントまで安全マージンを引き下げることを許容してしまったのだ。

たとえ原子炉を止めたところで、全国の原子力発電所のプールに詰め込まれた使用済み燃料プールがある限り、地震によりプール(もしくはプールの冷却施設)が破損し、使用済み核燃料が再臨界を起こして放射性物質をまき散らすという可能性はなくならないのだ。使用済み核燃料の最終処理をこれ以上先送りしてはいけない。これほどまでに危険な「負の遺産」をこのままの形で次の世代に残すことは許されない。

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マイクロソフト勤務後、ソフトウェアベンチャーをシアトルで起業

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