特集ワイド:原発の呪縛・日本よ! 精神科医・斎藤環さん
毎日新聞 2012年10月05日 東京夕刊
斎藤さんと会ったのは自民党総裁選の翌日。メディアは安倍晋三新総裁を早くも次期首相のように持ち上げたが、新総裁からは脱原発への具体的な言及はなかった。「政権が代われば政策が変わる可能性がある。これでは原発はなくならない。だからこそ『脱原発』を、政権交代や政策変更に左右されない国の基本方針、国是としなければならないんです」
この国は、既に核についての「国是」を持っている。言うまでもなく「非核三原則(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)」である。「この先例を踏襲して『非原子力三原則』を設ける。持たず、作らず、依存せずという新たなルールを確立する。それが、この国の進むべき道だと思う。そういう国に生きることに誇りを感じたいんです」
淡々とした語り口に、揺るぎない信念を感じた。
先月、福島県郡山市で開かれた会合に参加した。被災者同士が苦しみを打ち明ける場だった。「こうした機会が、これからもっと必要になってくる。抑圧していた感情が時間とともに表に出てくるからです。今後も医師として、そういう人たちに向き合っていきたい。批評も続けていくつもりです」
斎藤さんの取り組みは緒についたばかりだ。【江畑佳明】
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■人物略歴
◇さいとう・たまき
1961年岩手県生まれ。筑波大大学院医学研究科博士課程修了。爽風会佐々木病院診療部長。著書に「社会的ひきこもり」「キャラクター精神分析」など多数。オタク文化にも詳しい。