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最終更新:2012年10月5日(金) 20時31分

東電、事故直後の会議映像を追加公開

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 東京電力は福島第一原発の事故直後のテレビ会議の映像、150時間分のうち、およそ6時間分を報道機関の要請に応じて、追加で提供しました。3つの原子炉がメルトダウンするという想像を絶する事態に直面し、疲弊する現場と対応を現場に任せきりにする本店との衝突が浮き彫りとなっています。

 「あれがダウンスケールしちゃったじゃん、水位が!うへぇ。小森さん!」(福島第一原発 吉田所長<当時>)

 「水位がダウンスケールしている?」(東京電力本店・小森常務<当時>)

 「これは危機的状況ですよ。完全に(燃料が)露出した状態になっているよ」(福島第一原発 吉田所長<当時>)

 事故発生から4日目の3月14日早朝。吉田所長の悲痛な声が響きました。3号機の冷却水が干上がり、燃料棒がすべてむき出しになってしまったのです!#

 そして、5時間後・・・

 「本店、本店、大変です!」(福島第一原発 吉田所長<当時>)

 1号機に続いて、3号機が水素爆発を起こします。さらに、その夜の会議では、2号機も危機的な状況に陥っていることが報告されました。

 「18時22分ぐらいに燃料がむき出しになっているのではないかと想定しています。そうすると2時間で完全に燃料が溶融すると、非常に危機的状況であると思います」(福島第一原発)

 「1号、3号、炉心溶融しているんだよね」(東電本店)

 つぶやくように繰り返す幹部たち。

 「3基炉心溶融ですもんね」(東電本店)

 「炉心溶融」とは「メルトダウン」のことです。事故調査報告書と照らし合わせても、メルトダウンが起きていることを、当時、リアルタイムで把握していたことを物語るやりとりです。しかし、東京電力が、その事実を正式に認めたのは、事故から2か月も経ってからでした。

 「こういった解析を事故発災当時にできなかったのかという話があるが、原子炉への注水を安定的に継続させることに集中していた」(東京電力の会見、去年5月24日)

 14日の夜に戻ります。危機的状況の2号機のベント(=原子炉の圧力を下げる作業)をめぐり、議論が続いていました。

 「ベントできるんだったら、もう、すぐやれ早く。余計なことを考えるな。こっちで全部責任とるから」(東電本店)

 別の幹部からも・・・

 「吉田所長!開けてくれよ」(東電本店)

 「指示してます」(福島第一原発 吉田所長<当時>)

 「小弁開いても、もう1弁あるから、そっちは開いているのかい?」(東電本店)

 矢継ぎ早に飛ぶ東京からの問いかけに、ついに、所長は、こう言い放ちました。

 「いろいろ聞かないでください!ドライウェルベント開ける操作をしているんで、ディスターブ(邪魔)しないでください」(福島第一原発 吉田所長<当時>)

 悪化を続ける事態を受け、吉田所長は東京で見守る「トップ」に直訴します。

 「2つの爆発があって、サイトもかなりショック。職員がみんな落ち込んでいるんですよ」(福島第一原発 吉田所長<当時>)

 「お察し申し上げます」(東京電力本店)

 「それと被ばく線量がパンパンで、その辺の配慮をぜひお願いしたい」(福島第一原発 吉田所長<当時>)

 必死の懇願に清水社長は・・・

 「可能な範囲で対処しますので、今しばらくは頑張っていただく」(東電本店・清水社長<当時>)

 現場と本店との温度差。吉田所長は職員に、こう呼びかけました。

 「1回ここで深呼吸して冷静になって、みんなで深呼吸しましょう。はい、吸って・・・吐いて・・・」(福島第一原発 吉田所長<当時>)

 原発事故の貴重な記録となるテレビ会議のやりとり。東京電力は3月16日から1か月分の映像、およそ650時間分についても順次、公開するとしています。(05日15:21)

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