再生の原風景 渡良瀬
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【放送芸能】「理」と「情」 埋まらぬ溝 文楽補助金、執行へ大阪市が公益財団法人文楽協会に支出する補助金問題は三日、橋下徹市長と文楽の技芸員(太夫、三味線、人形遣い)らの初の意見交換会により、前年度比25%減の三千九百万円を条件付きで予算執行することを市長が表明し、一応の決着を見た。ただ、双方のやりとりを聞くと、税の公正性など「理」の世界を通す市長に対し、技芸員らは文楽に息づく師弟関係など「情」の世界で訴え、主張がうまくかみ合わない部分も残った。 (藤英樹) 「税金である補助金の使い道を見えやすくしないと市民の理解は得られない」と市長は何度も繰り返した。 市長が特に問題にしたのは、生活が不安定な若手技芸員を支援するための「養成費」が生活資金のように使われてきた−という点。 「道具代や交通費など必要経費を支援するのは当然だが、無条件に支援すれば、生活保護と同じになる。それは補助金の趣旨とは異なる」と強調。今後は領収書添付や収入区分を厳格に審査していくことを条件付けた。 技芸員らによると、養成費は一人年間七十万〜百万円弱。ある三味線方は「この世界に入ったころの月収は四万円に満たず、師匠のお宅へ稽古に行く交通費にも事欠いた。道具も当然買えなくて、師匠のお古をいただいた。養成費で何とか生活できた」と明かした。 別の三味線方は三味線修理にかかる費用を細かく説明して「道具代が生活費を圧迫している。師匠に融通してもらうことも。市長が言うように経費と生活費をきっちり区別しにくい。この世界の師弟の特殊な関係も理解して柔軟に対応してほしい」と訴えた。 一方、長い伝統に基づく「古典」を守りたいとする技芸員らに対し、観客をもっと増やすための「新作」を積極的に上演すべきだと主張する市長の考え方の相違も浮き彫りになった。 市長は本年度の補助金は出すことを表明したものの、「来年度へ向け新しい制度設計に入ること」と条件を付けた。技芸員らも「市長の説明はよく理解できた」(太夫の豊竹咲大夫)としているが、市長の「理」と技芸員らの「情」が簡単にかみ合うはずもなく、火種はくすぶっている。 ◆市長 「見える化」を進める 文楽側 無駄に使っていない三日に大阪市役所で行われた文楽振興についての意見交換会の主なやりとりは次の通り。 橋下徹市長 補助金の使い道を「見える化」するため、若手技芸員の養成事業への助成の見直しや、文楽協会への補助から公演事業ごとの助成への転換を図りたい。 桐竹勘次郎(きりたけかんじろう) 今ある公演と稽古で精いっぱい。事業を増やせばいいというものではない。 豊竹咲大夫(とよたけさきたゆう) 事業を手がけようにも、人形は国立文楽劇場が所有していて、われわれにはバットもボールもない。 市長 国ともよく話し合いたい。 桐竹勘十郎(かんじゅうろう) 補助金を無駄に使っている技芸員は一人もいない。 鶴沢寛太郎(つるざわかんたろう) 補助金がなくなると生活も芸もストップする。何とか現状を維持できないか。 市長 いきなり一気に、は無理だと思う。皆さんと話し合ってしっかり制度設計したい。 鶴沢清介(せいすけ) 市長も「文楽に行きましょう」とPRしてほしい。 <これまでの主な経緯>2008年6月 橋下徹大阪府知事(当時)の「大阪維新プログラム案」で文楽協会などが補助金の削減対象に。 11年11月 大阪ダブル選で「大阪維新の会」の松井一郎府知事、橋下徹市長に。 12月 市長、補助金凍結の方針。 12年4月 雑誌「上方芸能」の呼びかけでドナルド・キーン氏ら140人が文楽応援メッセージ。 6月 市側が協会に竹本住大夫(たけもとすみたゆう)らと市長の意見交換を打診。協会は「考え既に伝えた」と拒否。市長は「会わないなら出せない」と25%削減後の補助金3900万円の全額凍結を示唆。 7月 協会が非公開での市長との面会を要望。市長、非公開を拒否。 8月 市長、公開で意見交換できなければ12年度の補助金は執行せずと表明。 9月 文楽技芸員ら公開面談に応じる方針。 10月3日 橋下市長と文楽側、初めて公開で意見交換。 PR情報
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