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プロダクション探訪

次世代の制作環境とワークフローを考える

第5回:デジタル・フロンティア / DIGITAL FRONTIER

組織編成と海外展開

ここからは、DF の組織編成について具体的にみていこう。同社は現在、男性 159 名、女性 42 名の 201 名(※2011 年 12 月時点)、平均年齢 30.1 歳のスタッフで構成されている。組織としては、先述の通り CG 制作部、企画制作部、営業部、管理部の 4 部署に分かれて活動しており、その中核となるのが CG 制作部だ。同部は、渋谷の本社とお台場(東京都江東区青海)にあるパフォーマンス・キャプチャスタジオ(後述)で活動しており、その他に関連会社として GEMBA(呼称:ゲムバまたはゲンバ)Digital Frontier (Taiwan) Inc.Fly Studio SDN, BHD が存在する。

「GEMBA は子会社であり DF 本社と同じビルに入居してはいますが、活動自体は完全に独立しています。海外の 2 社は、Digital Frontier 台湾を昨年 7 月に設立した後、縁あってマレーシアの Fly Studio 株式を取得する形で、立て続けに DF グループに加わってもらいました。海外展開については、単純明快に国内だけでは仕事が回らなくなってきたからですね。制作コストの問題も大きいですが、日本の CG 業界規模では今までのやり方では中々良い人材が集まらなくなってきたので......」(豊嶋氏)。
海外に制作拠点を設けると聞くと、中国(大連など)やベトナムへの進出がよく聞かれるが、台湾を選んだ理由は、コンプライアンス面の信頼度の高さと、日本人に適した生活環境だという(親日国家という利点も)。さらにDFは、台湾最大手の CGCG Inc. と長年にわたり良好な関係を築いていることも大きな後押しになったようだ。マレーシアについても同じく、コンプライアンスの高さと生活環境の相性、それに加えて同国が推進する IT 先進国政策に基づく税制面の優遇などの恩恵もあるようだ。

DF 独自のキャリアパス

昨年 10 月の渋谷への本社移転に伴い、CG 制作部はほぼワンフロアに集まることができたという。
「当初の予定では、全ての 3DCG スタッフの席をワンフロアに集める予定だったのですが、ありがたいことに大きなプロジェクトが続々と入っていまして、現在も積極的にスタッフを採用しているため、引っ越して直ぐに席が埋まってしまいました(苦笑)。そのため、CG 制作の一部を別フロアに拡張させました」(豊嶋氏)。

DF内観01

photo by Mitsuru Hirota
DF 本社(渋谷)メイン制作ルームのパノラマ内観。ワンフロアにほぼ全てのスタッフがいるため、情報共有や意見交換がスムーズだという

CG 制作部のスタッフ内訳は、実作業を担う CG 室、R&D を行う開発室、プロジェクトの進行管理を行う制作室、そしてモーションキャプチャー室の 4 グループに分かれて活動している。また、同じフロアには企画制作部のデスクが置かれており、オリジナル作品を担当するプロデューサーやディレクターも在席している。
「フル CG 劇場長編などの大規模プロジェクトを効率良く制作するために、このような編成で活動しています。15 年以上にわたって、少しずつ改善してきたので、200 名以上の大所帯でありながらスタッフの結束力は堅いと自負しています」(豊嶋氏)。

さらに DF では、海外からの人材獲得にも意欲的で、現在 13 名の外国籍スタッフが勤務している。ゼネラリストや R&D スタッフなど職種は多岐にわたっているそうだが、彼らの多くは日本国内の専門学校などの卒業生のため、日本語によるコミュニケーションも問題ないそうだ。国別の割合は欧米圏が 3 名ほどで、後はアジア圏が大半とのこと。

DF内観02

photo by Mitsuru Hirota
渋谷本社の休憩スペース

CG 制作部では、各プロジェクトごとの制作工程としては分業制を採っているが、所属スタッフはプロジェクトに応じて職務を柔軟に切り替えるゼネラリストと、特定のタスクに注力するスペシャリストの 2 タイプに分かれて活動している。
「デザイナーでスペシャリストとして活動しているのは、セットアップとエフェクト、そしてアニメーションになります。その他の工程は状況に応じてゼネラリストが担当するという形ですが、もちろん今後もこのままというわけではありません。例えばエフェクトチームの場合は、映画 『バイオハザード ディジェネレーション』 制作時に、エフェクトが複雑化してきたのに対応すべく発足しました。実は、3 年前(2009年)からキャラクター専門チームも始動しています。今後の構想としても BG チーム案が既に上がっていますし、『この分野は特化した方が良いね』と CG 制作部として判断すれば、どんどん実践していきたいですね」(野澤氏)。

元々ゼネラリスト集団であったが、3DCG 技術の進化や求められる表現の高度化に伴い、必要に応じて部分的に分業制を導入してきたという DF 。ゼネラリストについては、明確なローテーション制ではないが、ある程度の期間で一通りの工程に携わるように業務がアサインされているという。
「キャリアパスとしては、ゼネラリストからスペシャリストへ変わることもありますし、CG 制作部ではヒエラルキー構造を導入しています。これは、デザイナー、チーフデザイナー、シニアデザイナー、ディレクターという 4 つのランクに分けています。そして、独自に設けた数値による業務評価を年に 1 度行い、一定期間好成績を収める、もしくは上位のスタッフが『こいつは!』と射止めたスタッフを昇格させるという、いずれかのパターンでキャリアアップしてもらっています」(豊嶋氏)。
DF では、劇場長編のような大型案件では 1 プロジェクトあたり約 70〜80 名のスタッフが制作に携わっているそうだが、このヒエラルキー制に基づいてバランス良くアサインされるように配慮しているとのこと。


shot by Mitsuru Hirota DF 本社オフィスのメインフロアをデジイチ動画で撮影したウォークスルー。180 名を超えるスタッフがワンフロアで活動している様は圧巻だ

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