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プロダクション探訪

次世代の制作環境とワークフローを考える

第3回:フレイム / FLAME

制作環境

続けて、北田氏が中心に環境を整えているフレイムのネットワーク環境について紹介しよう。大まかなネットワークの構成は下図を参照してもらえればと思うが、外部との接続は基幹回線が2本敷設されており、社内のネットワークは全て Gigabit Ethernet で組まれている。移転当初は3階と5階に分かれて入居していたのだが、今年3月から新たに4階も借りてオフィスを拡張。それに伴いネットワークも改良された。

フレイム:ネットワーク構成図

フレイム全体のネットワーク構成図(2011年8月末現在)
 

ネットワークの基本的な構成としては、いったん3階から基幹回線を5階に引き上げ、ハブを経由して各フロアに分岐。各フロアにはドメインサーバが配置されているので、それを経由してクライアント PC に繋げている。5階にはドメインネームサーバの他に、分離した形でライセンスサーバが設置されており、クライアント PC への接続は、ドメインサーバから、スター型でネットワークされている。しかし、この方式だと、メンテナンスがやりにくい点があるため、今年新たに構築した4階のネットワークでは、障害発生時は動的にネットワークを切り替えることができるようにと、センターのハブで集中的に管理して全ネットワークを切り替えられる形に改良された。

フレイム:ネットワーク構成図

フレイム5階(北田チーム)のネットワーク構成図(2011年8月末現在)
 

フレイム:ネットワーク構成図

フレイム4階(大林チーム)のネットワーク構成図(2011年8月末現在)。フレイム社内で一番新しく、仮想化技術を組み込むなど先進的な構造になっている
 

ライセンスサーバやファイルサーバは仮想化されているため、メインのサーバが落ちても、直ぐに復帰できるようになっている。本来であれば、センターに巨大なサーバを立てて、運用するのが常套手段と言えるが、大林チーム、北田チーム共に複数の案件が日常的に稼働しているため、障害が発生した際に、ネットワーク全体を止めてメンテナンスすることが難しいことから、現在は各案件ごとにサーバを立てて仮想化、バックアップし合う形になっているとのこと。ストレージに関しては、大林チームだけでも 40TB を超えているというが、ストレージも仮想化を用いているのに加え、RAID 5、RAID 6、RAID 10 が混在しているため、物理的に正確な容量は把握しづらいそうだ(実際には 80TB 以上のストレージが稼動している模様)。

「ポスプロであれば負荷の集中箇所を特定しやすいといったことから、中央に大きなサーバを設置することもできると思うのですが、僕たちはポスプロではありませんし、規模的にも費用対効果の面で割に合わないのです。そこで必要に応じて、その時々でコスト的にも技術的にも一番メリットの大きな仕様と機材を揃えていくという感じで対応していますね。最初に大きな環境を揃えてしまうと、更新時のコストが膨大になりますし、PC スペックが新しい世代に切り替わった時にも手間がかかります。ベストではありませんが、今のやり方であれば、毎回最新のシステムを細かく拡充していくことができるので、フットワークの良い運用が実践できていると思っています」(北田氏)。

複雑なネットワークを構築しているように思えるかもしれないが、北田氏はフレイムのR&D部門的な役割も担っており、現場の案件に影響を与えない範囲で、少しづつ、最新のハードウェア並びにソフトウェアの技術を試験運用しながら組み込んでいるという面も大きいようだ。

「僕がまかない料理で色々と試してみて、うちのスタッフが『おいしい』と気に入ってくれたら、表のメニューに追加してみるという感じ」という、北田氏の技術の先行投資に対する姿勢はプロダクションが先進技術を採り入れていく上での本質を突いた言葉と言えるだろう。

使用ツール

今度は制作ツールを見てみよう。現在フレイムでは 3DCG 作業は SoftImage がメインツール、それに Maya と 3ds Max を併用しているほか、Massive や Boujou、MotionBuilder といった様々な特化型ツールも利用している。

フレイム主要ソフト・プラグイン一覧

現在、フレイムで利用している主なソフトウェアとプラグイン一覧
 

大林氏がデジハリ卒業後、最初の就職先で使っていたのが Softimage|XSI だったことから、フレイムでは Softimage をメインツールに据えつつ、案件に応じて Maya と 3ds Max も併用しているという。特に 3ds Max の場合は、優れたプラグインが多いことからエフェクト制作に重宝しているそうだ。プレイレンダーからリアルタイムまで幅広い案件を手掛け、クライアントも多岐にわたることから自ずとソフトウェア・プラグインも増えていったそうだが、基本的な作業は Softimage で行い、群衆表現は Maya で、物理シミュレーションは Max といった具合に、スタッフはごく自然にツールを使い分けているとのこと。

特化型ツールも同様に、モデリング(スカルプティング)には ZBrush と Mudbox を、モーション作成には MotionBuilder、流体表現には RealFlow なども使いつつ、さらには群衆表現向けに Massive まで導入といった具合に、必要と判断すれば積極的に採り入れる姿勢は上述したネットワーク構築と相通じるフレイムの活動方針の特色と言えそうだ。レンダリングについては、Massive 向けに 3Delight を利用する以外は、大半で mental ray を用いているとのこと(Softimage がメインツールというのも大きいだろう)。またレンダーファームについては、30台のレンダリングサーバ用 PC を Visual Vertex 社の Muster で管理・運用しつつ、3ds Max 並びに一部 Maya のレンダリングジョブについては Backburner も併用している。

その一方で、コンポジット作業については、そのコストパフォーマンスと汎用性の高さから現在は After Effects ひとつに絞っている。こうした面は、身の丈に合ったプロダクション運営を信条とするフレイムならではと言えよう。ただし、昨今は VFX 表現が複雑化していく傾向にあることからタイミングを見て Nuke などのノードベースのコンポジットソフトの導入も視野に入れているとのこと。その他にも、今年から実践中の新たなパイプライン構築に伴い、適宜、新たなツールの導入も検討していくそうだ。

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