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2011年5月24日 (火)

アニメCGセミナー。

先日アニメCGセミナー見てきたんですがね。
https://www.webcas.too.co.jp/form/fm/dms/anime07
Max なセミナーでした。

サンジゲンによるプリキュアのオープニング、ほんと半端ないですね。すげえクオリティだと思う。文句を付けたくても文句のつけようがなくて腹が立ちます。 俺も、こういうことやりたかったはずなのになあ。7年半前の決断はそのためだったんじゃなかったっけなあ。今やもう、それは無かったことにして欲しいくらいだよ。まあいいや、ええと、要するに、サンジゲンの作品を見るといつも凹みます。

会場のスクリーンでは色がすげえ変でした。あれはスクリーンのせいだよね? ちゃんと見てみたいな。


元々はセル調の質感ではなく、グラデーションのあるCGっぽい質感だったそうですが、その質感ならサンジゲンでやる意味はないでしょう、他の会社に頼んだ方がいいでしょう、うちでやるならセル調にしましょう、と松浦社長が提案して、結局セル質感になったという話がありました。 松浦社長は、セル調でかつリミテッドアニメーションでなければサンジゲンの意味は無い、という意味のことを明言してました。 ほうほう。そこまで言い切るのはすげえ。完全にその路線のみで行くつもりなんですね。そんな風に仕事の選択肢を狭くしない方がいいのではないかと個人的には思うんだけど、でもここまでビジョンがはっきりしているならそれは大いに強みになる。 明確なビジョン。ブレがない。スヴァらしい。どっかの社長とは大違いです。





このオープニング、歴代のプリキュアが21人も出てるそうですね。東アニが元から持っていた Maya データを、サンジゲンが使う Max へサンジゲン側でコンバートしたようですが、1~2ヶ月もかかったそうです。ただし詰めた2ヶ月ではないそうです。

そんなコンバートの手間があることは承知で、東アニはそれでもサンジゲンに出したかったんでしょうかね。そりゃそうでしょうね。あのクオリティだもの。その価値はありますよ。

形状のコンバートはまあ問題ではないでしょう。 ただ、意外だったのは、モーフターゲットも東アニの Mayaデータからコンバートして使ったとのこと。ほうほう。今どきそういうことも安全にできるんですか。なんか俺、他のアプリケーションとのやりとりの経験が少なくて、この辺のこと知らなさ過ぎです。昔は頂点の順番が変わったりなんだりで、モーフターゲットまでコンバートなんてけっこう危険だったですからね。大昔の話ですが。

東アニのモデルデータは基本的にオブジェクトが分かれまくっているそうです(まつ毛1本までバラのオブジェクトだそうで)。 サンジゲンとしてはある程度マージ(アタッチ)してしまいたい。でもただマージすればいいのではなく、表情用のモーフターゲット全てで同じ順番でマージしていかないといけない(頂点番号が狂うという意味だと思う)。 でも順番狂わないように気をつけてマージしていくなんて、とてもじゃないけど手作業じゃやってられないほどの物量である。ということで自動マージツールを作ったと言っていました。まあ当然ですな。そういうのはツール作らないとダメです。

東アニのデータは、オブジェクト名などがとても美しく整理されていたため、ツールの開発も楽だったそうです。スヴァらしいですね。どっかの会社とは大違いだ。 ツールを作る側の立場で言わせてもらうとですね、データが未整理だとツールって作れないんですよ。当たり前ですがね。


マテリアルのコンバートは、ランプシェーダなど Maya特有のシェーダはあらかじめMaya側で外しておかねばならなかった、という意味のことを言っていましたが、ってことは、大半のシェーダはそのままコンバートできるって意味なんですかね? 複雑なレンダーツリー(ハイパーシェードって言うの?)を持ったようなものでもいいんですかね? 俺はマテリアルなんて大半はコンバートできないんじゃないかくらいのイメージを持っていたので、よくわかりませんでした。今どきすげえコンバートできるのかなあ。 FBX を使ったと言っていました。

東アニモデルの「目」は、全てモデリングされていたそうですが、サンジゲンはテクスチャでやるのが普通だそうで、目は全部作り直してテクスチャを貼ったという意味のことを言っていたと思います。さすがサンジゲン、我が道を行くというか、俺様のやり方でしかやらないと言うか。



リグはさすがにコンバートできないので、参考にした程度だそうです。まあ、それこそサンジゲンは俺様リグでやらねばならんでしょう。人様リグでサンジゲンの動きを作るのは難しいんじゃないかと想像しています。

骨は Bones Pro を使ったそうですが、Bones Pro って何? 今調べてみたら、スキニングのプラグインのようですね? http://www.bonespro.com/  XSI でいう所のエンベロープの設定、ウェイトの設定、筋肉デフォーメーションの仕込み、その辺が統合的にいじれるパッケージのように見えます。ほうほう、なんかいかにも Max らしいプラグインですね。もし XSI なら ICE のコンパウンドの形で出てくるんでしょうなあ。

Bones Pro は「軽くて簡単」、と言ってましたが、何がどう簡単だったという詳しい話はありませんでした。

「ボーンオブジェクトは Biped です」 と言っていたけど、Max のリギングのことをよく知らない俺には、意味はわかりません。 

あと、「Bones Pro はライセンスのないマシンでもプロキシで使えるから良い」などと言っていたと思うんですが、これも意味はわかりませんでした。 たぶん、ライセンスがあると Bones Pro を使ったデータの編集ができる、ライセンスがないと編集はできないけどちゃんとシーンを開けるし、Bones Pro の効果は外れてない状態だ、という意味だと思います。 Max のプラグインにそういうアーキテクチャがあるのかな。 AfterEffects のプラグインなんかもそうだとすごく助かるんですがねえ。ま、レンダリング用の安いライセンスを用意している製品もあると思うのでそれでもいいんですが。


揺れ物にはスプリングモディファイヤでリグを組んだと言ってましたね。でもパラメータをいじるのが大変なので、そのためのツールを作ったと言ってました。期間限定で配布もすると言ってたな。 おそらくは多くのパラメータをイッキに書き換えたり、結果を SRT にプロットをしたりするツールなんだと思います。 配布するくらいだからある程度以上汎用性があるんでしょうね。 ただ、この手のツールはヘタに汎用性を持たせようとすると使いにくくなったり、開発がスピーディーにできなかったりしがちですよね。だから汎用性を捨てて、その仕事のためだけに書いたツールが一番作業効率がいいんですよね。当たり前ですが。






以上のような開発を経て、実際のカット制作では、

コンテ撮 → アニマティクス → 揺れ物・表情が無いテイク0 → テイク1~3(めり込み修正無し) → 完成

という流れだったそうです。 揺れ物と表情、そしてめり込み修正がいったいどの段階で入るのかという詳しい説明はなかったように思う。

オープニングのカット1ですか、冒頭部分を見せてもらいましたが、いやあ、すげえアニメーションだ。 俺にはとてもできない。このタイミングも中無し具合もツメも、レイアウトも、俺の中からは出てきません。惨敗です。まあ当たり前ですね。こればっかりを超本気でやっているサンジゲンに、特に本気と言えるほど詰めてやってこなかった俺が太刀打ちできるはずもありません。比較すること自体が傲慢に思えます。すいません。

カット制作のポイントとしては、かなり多くの項目を挙げていましたが、「ルックとしては、カゲの付き方が最も重要。 1コマ1コマペイント修正なんて当たり前」 「ハイライトも気に入った形になるようペイントで調整する」 「口の中の、舌が占有する面積の割合が重要」 「目の中の、白目と黒目の面積の割合が重要」 とか、その辺がほぉーーーと思いました。

アニメっぽく見せるためには何でもする、という気合を感じますね。ほぼイコール、CGっぽさを極限まで排除するということだと言っているように聞こえました。 そのためには1コマごとのペイントなんてザラのようです。 その手間、物理的にかける苦労はもちろん賞賛に値するものですが、やはり何よりすごいのは、この方針のブレのなさでしょう。絶対に方針がブレない感じがヒシヒシと伝わってきます。その意味においては、スタッフはむしろ気持ちはラクなんではないかと想像してます。ブレブレの中でやる作業はつらいものですからね。





あと、「プリキュアは子供向け作品なので、中無しの動きにコマを足して、子供でも見やすい動きになるよう調整した」 と言ってました。 これ、最重要ではないかと俺は思いました。 あのオープニングの動きが素晴らしく見える最大の理由なんではないか、とすら俺は思ってます。 


というのはほら、日本のアニメ作品の中で登場するCGモーションって、なんか誤解されたものが多かったじゃないですか。 「リミテッドアニメ風に見せたいから、ガンガン中無しにして、キレのある動きにする」 とかなんとか言いながら、実はただ速いだけでカッコ良くもなんともない、とても見づらい、目がチカチカする、何が起こっているのかさっぱりわからないモーションを、さんざん見てきました。 宇宙でロボットが自在に飛びながら、カメラもガンガン動いて追っかけながらロボットがビーム撃ったりライトセイバーを振り回したりする、そんな感じのやつでこういう「速いだけで何が起こっているかわからん」なモーション多かったと感じています。作画によるロボットの描写が伝統的にカッコいい大会社ほど、CGになった時にその傾向が強いと感じるのは俺だけですかね。

確かに作画によるモーションは、クイックで中無しなテイストのものが多いですが、アレは物体を自在にデフォーメーションさせながら描いているからこそ成り立っているわけであって、ただタイミングを真似ればCGでも同じようなキレのある動きになるわけではありません。作画ではモーションブラーすら手で描いてるわけですしね。 速いとか遅いとかタイミング的なこと(=タイムシート上のこと)だけじゃなくて、デフォーメーション、ブラー、オバケ、イン直後のポーズ、アウト直前のポーズ、などなど絵そのものの描き方(=作画用紙上のこと)を総動員して、見た人の目に焼きつく「残像感」とでも言うべきものを操作することによってある見え方に見せているわけで、これをそんなに簡単にCGで真似できるとは思えないです。 作画でラフ原描いてもらって、タイムシートまで入れてもらってるのに、CGでロトスコープしてそれをなぞってもさっぱりカッコ良くならないのは、これが原因だと思っています。

いっときは、作画でほぼ全部作ってしまってからそれをロトスコープで忠実に追いかけることによってCGで再現し、それを「作画っぽく見せるためにひとコマひとコマ追いかけました。そんな泥臭い手作業をしてまでクオリティにこだわっています」などと誇らしげに説明された時期もありましたが、いやいやそれは違うでしょう、デフォーメーションまで真似ているわけじゃないから全然カッコ良くないですよ、速いだけですよ、むしろ何も考えずに作画を追いかけてポーズ付けてるだけなんだから、そんなのシロートでもできますよ。 とは言いませんでしたが、心の中では思っていましたすいません。デフォーメーションまで忠実に真似れば、かなり良くなる(作画に近くなる)んじゃないのかなあ。 

俺はそこまで真面目にやったことはないですが、デフォーメーションさせないことを考慮して、その分少しコマを多めに取る(速くし過ぎない)傾向で調整してきたことが多かった気がします。 よくあるパターンで言うと、例えばカメラの前を通り過ぎる飛行機とかミサイルとか車とかを PAN で追っかけるようなカットの場合でしょうかね。普通にやったらカメラの前を通り過ぎるのは一瞬なので目に痛いだけの絵になりやすいです。作画だとその瞬間の前後に物体が進行方向に伸びたりしてますよね。しかも伸びてるだけじゃなくてぐにゃっと弧を描いた変形をしていたりね。そういうデフォーメーションがあるからこそカッコいい動きに見え、目にも痛くない感じになっている場合が多いと思うんです。でもCGの時はジオメトリを実際に変形させることまではめったにしない(主に手間の問題)。その代わりに、2コマか3コマかその程度、カメラの目の前のどアップの尺を長めにとってあげることによって、似た残像感を狙う。これだけでもだいぶ違うと思っています。この話をわかってくれるのはK村やF松やK島やH田や、あとはM山くらいか。 

ともかくですね、このプリキュアのオープニングでは、すんげえクイックな動きも含んだ、いわゆる作画的なタイミングのモーションに見えつつも、速いだけとか目に痛いとかは感じなかったんですよ。 これは、松浦社長が言っていた「中無しにコマ足して見やすくした」効果なんじゃないかと思うんです。社長、ちゃんと効いてますよこれ。子供向け作品じゃなくても、基本はこれでやる方が良いと俺は思います。 わかってやってるから、ちゃんとキレが出てますよ。ダルくなってないですよ。



余談ですが、タイミングとデフォーメーションの話を出してしまったのでついでに書きますけど、個人的にはポーズとデフォーメーションの関係も重要だと思ってます。 

伝統的に、3DCGは作画よりポーズがカッコ悪くなりがちだと思います。 これはやはり、上のタイミングの話と同じで、デフォーメーションさせないことが原因なのかな、と思うんです。作画だとまずポーズありきで絵を描くので、人間や動物ならポーズの都合に合わせて間接の位置は自在に変わるし、メカものなんかでは、体に付属している本来変形しないリジッドなパーツも、そのポーズに都合のいいように変形させて描いてしまうわけですよね。このようにあくまでもポーズ優先ですから、ポーズがカッコ悪くなりようがありません。 ポーズのために都合よく、あらゆるものをデフォーメーションさせているということです。

でもCGの場合はリグの都合がありますよね。間接の位置を自在に変えるなど、難しい。 また、めり込みの問題もあります。肩にでっかいアーマーが付いているために首を横に振れないロボットとかね。 結果、そもそもの絵の作り方がポーズを基点としていなく、リグなりモデルなりを基点としてしまっているので、カッコ悪くなりがちだと思うのです。ポーズに魂が入っていない絵になりやすい。

例えるなら、昔の戦隊もので出てくる巨大ロボットとかですかね? 役者が、美術で作られたロボットの外装を着込んで動かしているわけですから、実際に肩やヒジなど間接周辺のパーツに動きを制限されます。物理的にぶつかり合ってそれ以上曲げられないわけですからね。結果、硬い動き、硬いポーズしか取れないじゃないですか。 CGでめり込みを気にしてポーズに遠慮があると、この戦隊もののロボットに近い状態になってるなと感じることがよくあります。 あの硬さ。 あのポーズの不自然さ。 あの魂の入ってなさ。

間接の位置を変えるのはともかく、めり込みはポーズのためなら犠牲にしてもいいと俺は思いますね。めり込みを気にしすぎて自由にポーズを取れないという仕事をいっぱい見てきました。俺に言わせれば本末転倒です。「めり込むから首がここまでしか回せないなんておかしいじゃない? ここは体勢を崩しつつも目線だけは敵をグッとにらんだままのポーズを続けるからこそ、このロボットの意思を感じる絵になるわけですよ。 しかもこのロボットは眼球がないんだから、視線を感じさせるポーズにする方法は、首をそっちに向けるしかないわけですよ。なのにめり込む一歩手前までしか首が回ってないから、ほらあさっての方を向いているみたいだよ。これじゃ敵と本気で戦っている感じがしないよ」 などと言いたいのです。 野球のピッチャーの投球のポーズを見ても、背中とかすげえ反っているじゃないですか。腰や背中のパーツがめり込むからって体の反りっぷりに遠慮があったら、そりゃカッコいいモーションに見えなくなっちまいますよ。

どーしてもめり込みが気になるなら、もうその周辺の頂点を動かすリグを組んで、作画によるデフォーメーションのごとく、めり込むパーツを自在に変形させて回避するしかないでしょうね。でもそれはすごい手間ですね。スケジュール的に破綻しそう。手間・時間を理由にそれを断念するのであれば、どうかめり込み回避をあきらめて欲しいと思うのです。めり込みを回避するためにポーズをあきらめるのは、いかん。いかんのです。逆です。ポーズのためなら、少しぐらいめり込んでいたっていいことにしましょうよ。

リアルタイムものだと、デフォーマの数に制限があったり、リグをカットごとに変えられなかったりするので、やはりめり込み回避リグを組むのはあまり現実的ではないかもしれませんね。 そうなるとやはり、めり込み回避をあきらめて欲しいと思うのです。めり込みを回避するためにポーズをあきらめるのは、いかん。いかんのです。逆です。ポーズのためなら、少しぐらいめり込んでいたっていいことにしましょうよ。

でもリアルタイムものが多いと思われるゲーム会社さんなどは、めり込みをすげえ気にしますよねえ。俺には不思議でなりません。めり込んだっていいじゃないか。CGだもの。みつを。 いや、CGだからめり込んでもいいとかは別に思っていませんが、何をあきらめて何を取るかの判断がおかしくないかな? と思うことが多いです。カッコ良くしたいんでしょ? めり込みは無いけど遠慮がちでこじんまりしたポーズの絵と、めり込みはあるけどガッチリ魂の入った生きているポーズの絵と、どっちが見たいですかと聞いてみたい。俺がそんな話をできる立場になったら、聞いてみよう。



おおっとサンジゲンから大いに話がそれてしまった。 でもあながち無関係の話ではない。 というのは、松浦社長曰く、顔の見え方などが意図どおりになるように、ゆがませるリグなどを仕込んでいるという話でした。 ほら、やはりデフォーメーションは必要なんですよ。サンジゲンもやってるんですよ。そういえば、キャラが大きなハンマーを振るときに、ハンマーをぐにゃっと変形させているというサンジゲンの記事を読んだことがあるな。スケールアニメーションをしたりとかも。そう、それです。そういうのがあるからこそ、「速いだけ」ではない動きに見えるはず。

松浦社長曰く、「カットごとにいじることが前提のモデルを作る」 だそうで、どうせカットごとに修正するんだから、それがしやすいようになっているモデルが良いとのことでした。 完璧なモデルをあらかじめ作り上げるのはあまり意味がない。どーせいじるんだから。だからモデリングとかには時間をかけずに、なるべく早くアニメーションに入るようにするそうです。

個人的には大賛成であり、俺もなるべく今までそうしようと努力してきた気がします。 何が必要で何が不必要かって、本番カットのカメラから見てみないとわからないですからね。 なので最低限の開発を終えたら、さっさとアニマティクスを作るのが一番良いと思ってます。アニマティクスでカメラやら尺やら決め込んでしまい、あとはそこで見える部分・重要な部分だけを作ればいい。 リグなんかも、気合入れてエクスプレッション書いた複雑な仕組みが、本番カットでは1回も使わなかったなんてこともよくあります。 なのでシンプルリグでアニマティクス作ってしまい、その動きを実現するためにはどういうリグが必要なのかを先に知ってから本番リグの開発を始めても遅くない。 キャラだけじゃなくて背景とかでも同じことですよね。要らない背景を作る必要はない。アニマティクスを作らないとそれが見えてこない。

ともかく、サンジゲンではほぼ確実に、どのカットもカットごとにいじるわけですね。 サンジゲンにとって「いじることが前提の、いじりやすいモデル」とはどういうモデルなのか、知りたいです。 松浦社長はきっと「それを知るにはサンジゲンに入ってください」と言うのでしょうが。

いじり方の例として、半袖の衣装の袖口に落ちるカゲの例とか出してましたね。 複雑な形の袖口なものだから、腕に複雑な形のシャドウが落ちているわけですが、これは絵がごちゃごちゃになってしまうだけなのでアニメ的にはあまりよろしくない。シンプルなシルエットのカゲにしたい。だからペイントして直す。 という感じでした。 あとは横顔用のモーフターゲットなどをその都度作ったり、鼻の位置を変えたり、FFD って言うの?ラティス変形のようなものでデフォーメーションさせたり・・・・ あまりにもカットごとにいじることが当たり前になり過ぎてしまったために、もしたまたま3Dが一発で決まって手作業する必要がないカットが出てきたりしたら、まるで手抜きをしちゃっているかのような気分になったりするのでしょうね。


ところで、一連の話は全てプリレンダを前提にしている考え方のように聞こえますね。リアルタイムだとカットごとにいじれることが大幅に制限されます。サンジゲンはリアルタイム仕事はしないのかなあ。しないつもりなんだろうなあ。「セル調でリミテッドじゃないと」って明言してるくらいだかならなあ。まあ、「セル調でリミテッド」自体はリアルタイムでも可能だけど、サンジゲンの場合は「カットごとにペイントとかでいじったセル調」だもんなあ。 リミテッドってのも、後からコマ抜いたりとかもしてるんでしょ? いわゆるシート操作。 それはリアルタイムでは難しいよなあ。


21人がいっぺんに出てくるダンスシーンでは、モーションキャプチャを使ったそうです。 なんだモーキャプかあ。サンジゲンなら手付けで通して欲しいんだけどなあ。 ま、手間というか時間のの問題でしょうなあ。  ただし、キャプチャデータをそのまま使ったわけではなく、アニメーションレイヤ機能を使っていじくったのはもちろんのこと、プロットしたデータを直接いじってコマ抜いたり、やはりサンジゲン流の調整は入れているとのことです。 あとはカメラのみフルコマで、キャラの動きは2コマにしてると言っていたかな。 会場のスクリーンだとその辺よくわからなかったなあ。DVD買うか。7月発売か。本編中の絵も全般に良いデキだろうから、買っても損はないか。 アマゾンで買うことにしよう。 レジでキラキラピンクのパッケージを店員に渡して、聞かれてもいないのに 「いや、娘にね・・・」 などとつぶやく気恥ずかしさも味わわずに済む。

しかしなんだこれは。色盲のテストかこのサイトは。
http://www.precure-allstars.com/



サンジゲンの話おわり。いやあ濃いセミナーでした。面白かった。

サンジゲンは、その仕事を完遂することそのものよりも、ノウハウを確立するとか蓄積するとか、そういうことに重点を置いているような感じがするんですが、どうですかね。 毎回終わらせることそのものに終始している俺には、まぶしい会社です。

飛ぶ鳥を落とす勢いのサンジゲンさんは、いつもスタッフを募集してますね。
http://www.sanzigen.co.jp/recruit.html
作画経験者優遇だそうで。さすがですね。
あれ? 土曜日はお休みじゃないのか? 週休1日制?








その後登場したサンライズさんは・・・・・・うん、まあ、その、ゴニョゴニョ  ・・・・プレゼン能力の重要性というものについて考えさせられました。 なんつうか、まるで自分がガンダムユニコーンの仕事を請け負っていて、その初回の打ち合わせに出席しているかのような錯覚を覚えました。以上。

ああ、でも内容は、俺にはすんごくよくわかりましたよ。CGガイド。 コックピットや会議室など。 俺もさんざん、さんざんそういう仕事をやってきましたし、実は今もやっています。 へへへへ、俺にほんとに発注してくれたら、こういうのは速いぜよ。

にしてもサンライズさん、作画へのアタリ出しに関するノウハウなど、すげえ持っていそうだよなあ。 作画や美術のことをちゃんとわかってやっているCG屋って少ないですからね。強みになりますよね。逆にCGのことをわかってやってくれる作画や美術や演出もまだまだ少ないですけどねえ。

ところで Max のビューポートってどうしてあんなにカラフルなんでしょう。 あの、ホワイトベースみたいな、アーガマだっけ、それのモデルデータとか見せてもらいましたが、 ワイヤカラーがすごいことになってるんですよね。 Max の作業画面を見ると、いつもこうですよね。 デフォルトだと、オブジェクト1個ごとに違うワイヤの色が割り当てられるんでしたっけ? Max なみなさんは、アレで平気なんですか? 目がチカチカしないんですか? 不思議です。面白いからそういうプラグイン書いて XSI でも似たような状態で仕事してみようかな。

あと、マテリアルのセットというものがどういうものなのか、よく分からなかったんだけど、気になりました。色指定ごと(色替えごと)にマテリアルのセットを持っているようなことを言っていましたね? それって、XSI で言うところの Pass で違うマテリアルにできるとか、それに近いものなのかな。








その後は嘔吐デスク様による、Motion Builder, Max, XSI の連携のデモのようなもの。 なかなか面白かったです。まあ内容は最近よくある「ボタンひとつでデータ持って行きます~ はい ICE で煙出して Max に戻します~」的なものだったので全然大したことなかったですが、なかなか XSI 以外のソフトウェアを見る機会も少ないし、このイベントのように Max を中心として、あくまでも Maxユーザの視点からしている話というのは、参考になるものです。

Motion Builder やってみたいですねえ。一度も触ったことありません。覚えさせてくれる仕事ないかな。持ってないけど。


あ、あと、Lagoa の紹介をする時にこのムービー使ってました。
ポーランドの piotrek marczak さんによる作品なわけですが、そういう断りはなかったなあ。許可はもちろん取ってあるんだろうけど・・・。

こういう粘性の高いやつもできますよー こういう硬い感じもできますよー みたいに喋っていて、まるで嘔吐デスク様が作ったかのような印象を与える感じのプレゼンだったので、微妙でした。 また、 piotrek さんがガチで Lagoa だけでこの状態にしたって、確認取ってるんでしょうかね? ま、Lagoa Tests というタイトルのムービーなので Lagoa がメインのはずですが、意外と Lagoa 以外での調整も入ってるかも知れないなあと思ってね。 例えばキャッシュ化した後に、それをさらにいじる非Lagoa な ICE ノードで調整してたりとかしないのかなあ、って。仮にそうだとすると、Lagoa の能力の宣伝の仕方としてはちと問題があるかもしれず、しかも Lagoa や ICE のことをそれほど知らないであろう Max ユーザに対する話なのでますます微妙な宣伝になってしまいます。なんだか心配になりましたです。 また、レンダリングを V-Ray と言っていましたが、Arnold の間違いです。



もうひとつ、全くどうでもいい話ですが、ICE の発音(アクセント)ってどれが正しいのでしょうか。 今回プレゼンした嘔吐デスクのお方は、アイスのことを、「座椅子」と同じアクセント(平坦なアクセント)で発音していました。 俺はこれまで、いわゆるアイスクリームの意味で発音するときのアイス、つまり「ライス」「ナイス!」と同じアクセント(1文字目にアクセント)で発音していました。 どちらが正しいのか、気になって夜も眠れません。

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コメント

いつもわかり易いレポートお疲れ様です。
サンジゲンの話、モーションをろくに知らない自分ですが租借する能力いらずで
スゲーわかった気になってあぶないですw
SIはSIでセカンダリーシェイプとかあって便利でいいですよねw

投稿: ringpull(りんぷる | 2011年5月24日 (火) 03時04分

あれ、りんぷるさんってモーションしない人だっけ。

白状しますが、セカンダリシェイプ機能、1回も使ったことありません!!
シェイプもエンベロープもやった後に、一番最後にいじるところ? セカンダリシェイプをアニメーションできんのか? セカンダリシェイプコンストラクションモードの下に、オペレータが存在できんのか?  実はさっぱり知らない俺。 マニュアル読み直します orz

投稿: junki | 2011年5月24日 (火) 03時13分

http://vimeo.com/24134385
もろもろ変形したあとで更に変形できる的な
1:50あたりでセカンダリーシェイプだと変形した状態でポイントをx軸に沿ってまっすぐ動かせてるっす
(ただのshapeモードだと変形する前のオブジェクトに沿って動いてる)
そのほかデフォーム系のオペレータも存在できるかもです、かもですよ

投稿: ringpull(りんぷる | 2011年5月24日 (火) 05時48分

サンジゲンの松浦です。
非常に好意的な記事感謝です!
サンジゲンもまだなにもなし得ていないですが、
日々精進していきたいと思います!

あ、それと、将来にわたってずっとセルルックをやっていくことにこだわってはいません!
本当の将来は、別な新しい表現であっていいと思っています!
おっしゃる通り、可能性を狭めるのはナンセンスですよねっ。

今後ともよろしくお願いしますー!

株式会社サンジゲン 松浦

投稿: サンジゲン | 2011年5月24日 (火) 13時07分

あっ 松浦社長自らのコメントがっ!  光栄です!

とても良いセミナーでした。 やはり嘔吐デスクのセミナーだったと思うんですが去年くらいにやった工数管理の話の時も、数字がリアルで実に面白かったです。

こんな所で勝手な持論をぶち上げているのを松浦社長自身に見られて実に恥ずかしいというかなんというか。


松浦社長とは個人的にはまだお会いしたことはありませんが、狭いこの業界なので、共通の知人が何人かいることは分かっています。色んな意味で実はけっこう近しいところにいます。是非いずれお会いして、ご挨拶させて頂きたいと思っています。

よろしくお願いします!

投稿: junki | 2011年5月24日 (火) 13時42分

自由に書いてください!w

ぜひ、お会いしましょう!

投稿: サンジゲン | 2011年5月24日 (火) 17時57分

>> 日本のアニメ作品の中で登場するCGモーションって、なんか誤解されたものが多かったじゃないですか。

同感です。

A→Bを均等ではなく、「不均等」に30分割してあるのが理想だと思います。

まあなんというか、仕上がりが30f/sなら、A→Bの動きを30分割するのではなくて、実際には120f/sでレンダリングしちゃって、編集段階で要らない80フレームを削除することで最終的に30f/sを取り出す……、みたいな感じでやるのがいいと思ってます。はい。

投稿: KEVIN | 2011年5月24日 (火) 18時01分

松浦社長、 いずれ知り合いを通してコンタクト取ります。どうぞよろしくお願いします。

KEVINさん、 30fps なんですか? 俺は 30 ダメです! 気持ち悪い! 特に PAN とか TU とかした時! できれば 24fps だけで生きて行きたいです!

高フレームレートでレンダリングしてコマを抜く方法は、カメラが動いていると極端に難しくなりますね。カメラはリニアに動きながらキャラの動きはツメツメ、みたいなことをしたい場合もあるじゃないですか。

また、大幅なコマ抜きを前提にするのであれば、、最初の 120fps のレンダは100%リニア補完が前提になりますよね。なーんのタイミング芝居もないリニアな 120fps をレンダして、コマを抜く段階で芝居にするということですよね。 いやあ、難しそう!  ダメ作画をオールで初めて発見してしまい、でももうリテイク間に合わないから、シートだけ演出に戻してシート操作をし、撮影のみリテイク・・・・などというしょっぱい場面が目に浮かぶ俺は汚れてますかそうですか


投稿: junki | 2011年5月25日 (水) 01時41分

昨日、コメントしたんですがなんかスパムがどうみたいなメッセージが出てたんで
エラーになったんでしょうか??

セカンダリーシェイプの話だったんですが
なんか書いたことがちょっとずれてたかもなどと思い直したり
http://vimeo.com/24134385
shapeモードだと変形する前のオブジェクトに沿って動くみたいな事を書いたんですが
オペレーションスタックの位置からいってそういう挙動になるかんじなんでしょうね

shapeやモデリングのスタックはanimationの下配置されるんで
animationのエンベロープの変形がそれらの後に適用されると。
で、セカンダリーシェイプモードで作業すると
animationの上にスタックされるから
エンベロープの変形の後でオペレータが適用される形になるんすね。
ビデオだと変形をシェイプキーに収めてますけど
ムーブオペレータをほっといても別によくて
その場合エンベロープの変形の後にポイントの移動が足される挙動になりますね
ムーブ以外のラティスとかデフォームとかも同様みたいです。
シェイプに格納してもいいし、ミュートやファクターにキーを打ってもいいのかもです

投稿: ringpull(りんぷる | 2011年5月25日 (水) 04時31分

りんぷるさん、初心者向けチュートリアルビデオありがとうございますw
まさに、エンベロープで変形後に好きなように「モデリング」できるわけで、ええ、これぞサンジゲン的な作り方にはまさにびったり。 Max風にいうと、ボーンによる変形つまりスキンなことをするモディファイヤの後に、FFDとかその他変形系のモディファイヤをかましているという状態になるでしょうかね。

ということで社長、XSI も導入しましょうよ( ゚∀゚)

投稿: junki | 2011年5月25日 (水) 06時43分

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