2011年11月28日(月)、日本初の経口の再発予防薬「フィンゴリモド塩酸塩(イムセラ®、ジレニア®)」が発売されました。1日1回、1カプセルを服用します。この薬は世界的にも新しく、長期安全性も含めた情報の蓄積はこれからです。
このページではしばらくの間、この薬に関する最新の情報をQ&Aでご紹介していきます。
また、販売会社からは、この薬を使用中の方向けのサイトが提供されています。
→多発性硬化症情報サイト「イムナビ」…提供:田辺三菱製薬株式会社
→ジレニアをご使用中の患者さま、ご家族のみなさまへ …提供:ノバルティスファーマ株式会社
2012年10月5日(金)
フィンゴリモド服用中の方が亡くなったというご連絡を、ご遺族から昨日、直接いただきました。
亡くなったのはフィンゴリモドを10か月服用していた国内の男性で、ウイルス感染により肝・腎機能が低下し、半月で亡くなったとのことです。病歴は3年で、若干MSが進行しはじめて仕事を辞めたものの、日常生活動作は自立しており、車の運転ができるほどだったそうです。
先月中旬に何らかのウイルス感染症に罹って入院し、今月1日に亡くなりました。現在病理解剖中とのことです。
フィンゴリモドとの因果関係は明らかになっていませんが、これからインフルエンザが流行する季節です。フィンゴリモドを服用している方は念のため、感染症には特に注意を払ってください。追加情報は随時お知らせいたします。
新規公開:2012年2月2日 更新:2012年10月05日(上記ニュース)
答えは全て質問の下に続いています。
知りたい質問をクリックすると、すぐその答えに到達できます。
フィンゴリモド塩酸塩は、再発寛解型のMSに対して開発された、初めての経口MS再発予防薬です。高価な漢方薬として有名な「冬虫夏草」というキノコの菌成分「ミリオシン」に強い免疫抑制効果があることが発見され、その化学構造を元に合成されました。
京都大学薬学部の藤多哲朗教授(F)と、台糖(T、現・三井製糖)、吉富製薬(Y、現・田辺三菱製薬)が共同で開発したことから、この3者の頭文字をとって「FTY720」と名付けられました。治験を含めた開発はノバルティスファーマに委託され、アメリカで2010年9月22日に承認されました。
日本では2011年9月26日承認され、11月28日に「イムセラ®(田辺三菱製薬)」「ジレニア®(ノバルティスファーマ)」という商品名で発売されました。商品名は違いますが、どちらも全く同じ薬です。
監修:横山和正 先生 / 順天堂大学医学部脳神経内科 神経免疫部門
新規公開:2012年2月2日
フィンゴリモド塩酸塩はカプセル剤で、1日1回、水かぬるま湯で飲みます。内服時間・食事の規定はありません。1つのカプセルにはフィンゴリモドが0.5mg入っています。一番最初に服薬する時には、最低6時間は医師の管理下でなくてはいけません。
監修:横山和正 先生 / 順天堂大学医学部脳神経内科 神経免疫部門
新規公開:2012年2月2日
MSは、リンパ球が血液脳関門を超えて中枢神経系に入っていくことで起こる病気です。フィンゴリモドはリンパ球がリンパ節から出て行くのを抑えます。すると体内を循環するリンパ球の数、そして中枢神経系に入っていくリンパ球の数も減り、MSの再発が抑えられるというわけです。
欧米の臨床試験においてフィンゴリモドは、インターフェロン・ベータ1aよりもMSの再発率・MRIの造影病巣数を減らしたことが示されました。また、偽薬と比較した試験では、身体障害の進行を抑えたことも認められています。
監修:大橋高志 先生 / 東京女子医科大学八千代医療センター 神経内科
新規公開:2012年2月2日
フィンゴリモドを服用すると、体内を循環するリンパ球の数が減るため、感染症にかかりやすくなると考えられます。海外の臨床試験では用量が多いフィンゴリモド(1日に1.25mg)を服用していた人のうち2人が、感染症で亡くなりました。
現在、発売されているフィンゴリモドは1日に0.5mgで、感染症による死亡の報告はありません。
また、薬を飲みはじめてから数日間にわたって、心拍数の低下(徐脈)がみられます。特に服用開始間もない頃には大きく低下することがあるため、投与開始時は循環器専門医と連携するなど、適切な処置がおこなえる管理下にあることが求められています。
そのほか、目の黄斑浮腫、肝機能障害、呼吸機能障害などが報告されています。しかしこれらの副作用は短期間のうちに報告されたものであり、長期の副作用に関しては、まだわかりません。
監修:大橋高志 先生 / 東京女子医科大学八千代医療センター 神経内科
新規公開:2012年2月2日 更新:2012年3月22日
定期的な血液検査(リンパ球数、肝機能など)、血圧と脈拍測定や心電図のほか、副作用で黄斑浮腫が出ていないか調べるため、服用開始3〜4ヶ月後を目途に眼底検査を含む眼科的検査をおこないます。眼科的検査については、糖尿病・ぶどう膜炎の経験がある人はその後も定期的な検査が必要ですが、そうでない場合は、視覚障害が出てきた時点で検査をしていきます。
監修:深浦彦彰 先生 / 埼玉医科大学総合医療センター 神経内科
新規公開:2012年2月20日
目の奥の網膜の中心を「黄斑」といいますが、そこが腫れた状態が黄斑浮腫です。症状は、ぼやけて見える、ゆがんで見える、などです。この症状は視神経炎に似ています。黄斑浮腫と視神経炎の鑑別には、CFF値(中心フリッカー検査、視神経炎で低下)、瞳孔対光反応異常(視神経炎で異常)やOCT(光干渉断層法)(黄斑浮腫で網膜が厚くなる)の検査が有用です。
監修:深浦彦彰 先生 / 埼玉医科大学総合医療センター 神経内科
新規公開:2012年2月20日
アメリカで59歳のMS患者さんが2011年11月、フィンゴリモドの初回服用24時間以内に死亡しました。病理解剖の結果、正確な死因と薬との因果関係ははっきりしませんでした。
一方、ヨーロッパでは2012年1月より、フィンゴリモドの安全性を調査しはじめています。フィンゴリモド開始後に亡くなった方のうち、原因不明が6人(うち3人は突然死)で、その他に3人が心臓発作、1人が不整脈で亡くなっていることが報告されていますが、フィンゴリモドとの因果関係は不明です。
これらを受けて日本では、2012年3月19日に薬の添付文書が改訂されました。初回投与時の心電図・心拍数・血圧の観察が、従来よりも強化された内容になっています。
監修:大橋高志 先生 / 東京女子医科大学八千代医療センター 神経内科
新規公開:2012年2月2日 更新:2012年3月22日
「使用上の注意」の解説「4. 副作用 (1) 重大な副作用」の項目に「4) 悪性リンパ腫 …国内外で悪性リンパ腫の報告があり、国内治験では死亡例の報告があります」とあります。表中の経過を見ると、臨床上の診断はMSと悪性リンパ腫で、解剖所見は悪性リンパ腫のみであるように書かれています。
解剖所見で脱髄が認められた記載がないことからすると、この方は典型的なMSとはいえないと考えられます。悪性リンパ腫の悪化がフィンゴリモドの影響によるものかもわかりません。一方、国外でも悪性リンパ腫の報告があり、フィンゴリモドが悪性リンパ腫の発現・悪化に影響を及ぼす可能性は否定できません。
現時点では、別の病気を合併しているMS、非典型的なMS、あるいはMSの診断が定かではない方に対しては、フィンゴリモドの使用はより一層、慎重にすべきと考えられます。
監修:大橋高志 先生 / 東京女子医科大学八千代医療センター 神経内科
新規公開:2012年2月15日
フィンゴリモドの適応症は「MSの再発予防及び身体的障害の進行抑制」です。日本において、再発予防の薬はフィンゴリモドのほかに、インターフェロン・ベータ1b(ベタフェロン®)と、インターフェロン・ベータ1a(アボネックス®)があります。
アメリカでは、インターフェロン・ベータなどの従来の再発予防薬と並んで、フィンゴリモドは最初に使うファーストラインの薬として使用可能ですが、ヨーロッパでは、従来の予防薬で効果が得られない場合、あるいは何らかの理由でファーストラインの薬が使えない場合に使う、セカンドラインの薬として位置付けられています。
日本での位置付けは明確になっていませんが、長期服用による安全性などのデータが蓄積されるまでは、個別に対応していくことになります。
監修:新野正明 先生 / 北海道医療センター 臨床研究部
新規公開:2012年2月2日
フィンゴリモドは国内外で使用経験が浅く、またインターフェロン・ベータとの併用について臨床試験をおこなっていません。従って、併用による効果も危険性もわかっていません。どのようなことが起こるのかわからないため、フィンゴリモドとインターフェロン・ベータの併用はすすめられません。
監修:清水優子 先生 / 東京女子医科大学 神経内科
新規公開:2012年2月20日
インターフェロン・ベータを即座にやめるか、あるいは徐々に減らして止めていくかについて、変更の仕方の特別な指針はありません。インターフェロン・ベータの継続期間や個々の患者さんの病状などを参考に、主治医が判断することになります。
監修:深浦彦彰 先生 / 埼玉医科大学総合医療センター 神経内科
新規公開:2012年2月20日
わかりません。フィンゴリモドの適応症は「MSの再発予防及び身体的障害の進行抑制」です。海外でも再発寛解型MSに対して使われており、進行型MSに対する安全性と効果は不明です。国内で二次進行型MSの適応症が取得できているのは、インターフェロン・ベータ1b(ベタフェロン®)のみです。
監修:宮本勝一 先生 / 近畿大学医学部 神経内科
新規公開:2012年3月6日
わかりません。国内の臨床試験に参加したのは18〜60歳で、小児への安全性・効果は不明です。添付文書には「通常、成人にはフィンゴリモドとして1日1回0.5mgを経口投与する」「低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない」と記載されています。
監修:宮本勝一 先生 / 近畿大学医学部 神経内科
新規公開:2012年3月6日
日本の臨床試験では、抗アクアポリン4抗体陽性の人が4人参加していて、フィンゴリモドを使ったことで病状が悪化したり、副作用が強く出たりしました。視神経脊髄炎(NMO)や膠原病を合併している人はフィンゴリモドは使わないほうが良いと考えられます。
監修:新野正明 先生 / 北海道医療センター 臨床研究部
新規公開:2012年2月2日
フィンゴリモドは冬虫夏草そのものではなく、冬虫夏草に含まれる「ミリオシン」という成分を元に合成された薬です。天然の冬虫夏草にはそのほかいくつもの成分が含まれており、それらの成分がMSに与える影響は不明です。また天然の冬虫夏草は非常に高価だということにも注意が必要です。
監修:宮本勝一 先生 / 近畿大学医学部 神経内科
新規公開:2012年3月6日
フィンゴリモドにはMSの再発を抑える効果が証明されていますが、MSを根本的に治す薬ではありません。
監修:宮本勝一 先生 / 近畿大学医学部 神経内科
新規公開:2012年3月6日
フィンゴリモドはMSの充分な治療経験がある医師のもとで使用する薬です。また、徐脈などの副作用があるため、投与開始時は循環器専門医と連携するなど、適切な管理下にあることが求められています。
そして初回服用6時間までは毎時、心拍数と血圧を測定、初回服用6時間後には心電図を測定するなど、心機能の綿密な観察が必要なので、最初に飲む時は、最低でも1泊は入院して経過を診てもらったほうが望ましいと考えられます。
監修:新野正明 先生 / 北海道医療センター 臨床研究部
新規公開:2012年2月2日 更新:2012年3月22日
フィンゴリモドは1カプセル7,922円で、年間およそ289万円の薬代がかかります。しかしフィンゴリモドはMSの治療薬として保険適応になっているので、特定疾患の制度が利用できます。MSと認定されていれば、フィンゴリモドを使った治療も一部公費負担されます。
監修:清水優子 先生 / 東京女子医科大学 神経内科
新規公開:2012年2月20日 更新:2012年5月16日
フィンゴリモドには先天性の奇形が3例、報告されています。薬が体内に残る期間が最長で2ヶ月間あるので、服用中だけではなく治療をやめても最低2ヶ月は避妊を徹底する必要があります。また、フィンゴリモド服用中、母乳は禁忌です。フィンゴリモドを服用しているのが男性の場合は、先天性の奇形の報告はありません。
監修:清水優子 先生 / 東京女子医科大学 神経内科
新規公開:2012年2月20日 更新:2012年7月10日
フィンゴリモドには免疫を抑える作用があるため、麻疹ワクチン、風疹ワクチン、水痘ワクチン、ポリオワクチン、BCGなどの生ワクチンを接種すると、ワクチンの病原体が体内で増殖する可能性があります。生ワクチンの予防接種は避けてください。
また、フィンゴリモドは心拍数に影響を与えるため、キニジン(硫酸キニジン®)、プロカインアミド(アミサリン®)、アミオダロン(アンカロン®)、ソタロール(ソタコール®)など、一部の抗不整脈薬との併用は禁止されています。
インフルエンザワクチンなどの不活化ワクチン、免疫抑制剤、市販薬、サプリメントについては併用禁止にはなっていませんが、安全だという保障もありません。接種や服用については主治医とご相談ください。
このほか、併用に注意が必要な薬剤があります。フィンゴリモド開始にあたっては、神経内科以外で処方されているものも含めて、現在服用中の薬剤名を全て、主治医に伝えてください。
監修:越智博文 先生 / 愛媛大学大学院 医学系研究科 加齢制御内科学 神経内科
新規公開:2012年3月27日
監修:越智博文 先生 / 愛媛大学大学院 医学系研究科 加齢制御内科学 神経内科
新規公開:2012年3月27日
飲み忘れに気づいたのがその日であれば、すぐに1カプセル服用してください。翌日に気づいた場合は、その日から1カプセル飲むようにして、決して2日分をまとめて服用することはしないでください。
監修:越智博文 先生 / 愛媛大学大学院 医学系研究科 加齢制御内科学 神経内科
新規公開:2012年3月27日
主治医に連絡してください。飲み間違い・飲み忘れを防ぐためにも、「朝食後」など、時間を決めて服用することをおすすめします。販売会社から発行されている服用管理手帳も活用してください。
監修:越智博文 先生 / 愛媛大学大学院 医学系研究科 加齢制御内科学 神経内科
新規公開:2012年3月27日
文:中田郷子 / MSキャビン