KDDI、“iPhone 5 効果”で“圧勝”、MNP 12か月連続首位に -- 9月の携帯電話契約数

電気通信事業者協会（TCA）と携帯電話各社は、2012年9月期の携帯電話・PHS 契約数を発表した。各社への取材によると、モバイルナンバーポータビリティ（MNP）の利用数（転入数から転出数を引いた数）では、KDDI（au）が9万5,300件と前月と比べて3倍近い転入超過となり12か月連続で首位となった。ソフトバンクモバイルは1,200件の転入超過に留まり、NTTドコモは9万5,200件の転出超過。MNP 利用数では KDDI（au）が“圧勝”した形だ。


MNP で KDDI（au）が“圧勝”した要因は、やはり9月21日に発売した「iPhone 5」の初動という見方をするのが自然だろう。ネオマーケティングが行なった iPhone 5 の購入意向調査を見ても、「au 版 iPhone 5 を購入したい」という回答者はソフトバンク版のそれを10ポイント近く上回っており、また現ソフトバンクユーザーで「au 版 iPhone 5 を購入したい」という回答も購入意向者の17.9％を占め、「MNP で au 版 iPhone 5 を」というユーザーの動向が契約数の動きにも如実に表れた格好だ。

今回の結果について KDDI 広報部は、「LTE のエリアの広さや通信品質、発売時からテザリングに対応している点、電池のもちの良さなどに関する評判が契約数の動きに良い影響を与えているのでは」とコメントしている。

LTE の品質については、発売前から Apple 社と技術的な協議を重ね、ハードウェア側（Apple）、ネットワーク側（KDDI）ともにユーザーが快適に使えるようチューニングしてきたほか、テザリングの利用が拡大しても安定した通信環境を提供できるインフラを用意しているという。また、緊急地震速報の提供方法を、端末が常時通信して待ち受ける方法ではなく、緊急時にのみネットワークが即座に端末に情報をプッシュできる方法にすることで、端末の負荷を軽減させて電池のもちをよくさせるなど、工夫をしているという。

また、販売戦略に関しては、「au スマートバリュー」が引き続き好調のほか、「女子割」「男子割」といった割引キャンペーンも契約数に良い影響を与えているという。「全国の FTTH、CATV の事業者と提携していることで多くの方にサービスを利用してもらえる環境が整っているだけでなく、提携した事業者にもスマートバリューを勧めてもらうという“クロスセル”が良い結果を残している。現在行なっているキャンペーンに対する反響も大きい」（KDDI 広報部）。

特に評価が高いと思われる通信品質は、通信会社の“基礎体力”と言えるものであり、ソフトバンクも LTE ネットワークの整備に邁進しているが、すぐに劇的に変化が起きるとは考えにくい。また、テザリングに関してはソフトバンクも12月からのサービス開始を既に発表しているが、通信環境への影響を懸念する声もあり、しばらくの間は KDDI が「iPhone 5 ＋ MNP」で他社の契約者を獲得していく動きが続きそうである。

ちなみに、契約数の大幅増に繋がる法人契約に関しては、ICT 総研が9月26日に発表した、法人を対象とした iPhone 5 の導入意向調査で、未導入企業の 51.1％ が「au の iPhone 5 を導入したい」という結果が出ており、いつでも途切れずに使えるネットワーク品質の高さを重視する法人契約で au 版 iPhone 5 が選ばれる動きが加速すると、契約数の動向には更に変化が起きる可能性が高いと言えよう。

なお、携帯電話純増数は、ソフトバンクモバイルが32万200件で首位。2位は KDDI(au) で22万4,900件、NTTドコモは15万8,600という結果になり、前月と比較して全社が純増数を大きく伸ばす結果となっている。また、データ通信サービスのみの UQコミュニケーションズの純増数は17万800件。全社を合計した総契約者数は1億2,735万8,200件となり、前月比で0.6％の増加となっている。