戦隊ピンクがおやじ相手に…

ドンヨリと濁った雲を溜め込んだ曇天。
風もなく気温も湿度も高い、不快な午後の街。
私、「特務戦隊ドライブレンジャー」の一員である「ドライブピンク」は、行き交う人々の奇異の視線に晒されながら歩いている。
じろじろ…
どちらかと言うと、気温や湿度よりもその視線の方が不快なのだが、それは仕方の無い話なのだ。
原因は、今の私の服装…
濃いサングラス。
しなやかな身体のラインを出しつつもを、その全てを包み隠す深紅のレザーコート。
その下に垣間見える黒いロングブーツ。

暑苦しい。
見るだけで嫌な汗を誘発させる、視覚的な暴力。
誰もが視線をこちらに向けては、顔を歪めて去っていく。

ドライブレンジャーは、地球上に存在する幾つかのオーバーテクノロジーの独占を図る組織「ヤモ」と戦う為に結成されたチーム。
既に解析されたオーバーテクノロジーを武器に戦う私達を、世界中が応援していた。

「正義の戦乙女」
「子供達の希望と憧れ」
そう讃えられたドライブピンク
それが今、人知れず人々に不快感を撒き散らしている。
だが、不快感程度なら可愛い物だ。
これから私が行おうとしているのは…

人影も無く、不気味に静かな一角に私は入り込んでいく。
放置された空き家、もはや何が書かれているのか判らない看板が、私の視界を流れていった。
妙に広い空が、私を見下ろしている。

二階建ての古びたアパート、目の前のそれが目的地だ。
ギシギシと音を立てる階段を登り、私は仄暗い二階へと呑み込まれる。
両サイドに幾つかのドアを並べた廊下の最奥、磨りガラスの嵌め込まれたドアが開いている…
「入っておいで」
奥で声がした。
私は、そうする事が当然であるかの様に、その奥に入った。


悪夢のような部屋だった。
淫らな本。不快なイラストのピンナップ。邪悪なフィギュア。得体の知れない道具。それ等がとぐろを巻いて、ずるずると私に絡み付いてくるようだった。
部屋の中心に、一人の男が座っている。
ランニングシャツとブリーフのみを着た小さな、「おやじ」。
どくん
この悪夢の部屋が脈打つように揺らめいた。
いや、私の心が揺らめいたのか?

「脱げ…」
おやじがそう言った。
言われた通りに、私は行動する。
まず、変に重いレザーコートを乱暴に脱ぎ捨てる。
次にロングブーツ。
きつく閉めすぎて、少し手間取る。
「落ち着け」
そう言われて私は、初めて自分が落ち着きを失っている事に気付いた。

ブーツを脱ぎ、最後にサングラスを外した私は、おやじの指差す先に視線を走らせた。
細かい亀裂の入った姿見、その無数の亀裂の一つ一つに私が映っている。

桃色に輝く、ピッチリとした戦闘スーツ。
栄光と正義の象徴であり、同時におんなである事を惜し気もなく誇張する極薄の皮膜。
それが、私の肉体から余す所無く噴き出していた汗を吸い上げ、完全にその輝きを失っている。
鈍く濃く変色した、桃色の女体。
その上に、黒髪を張り付かせた頬を赤く染め、だらしなく口を開けたおんなの顔がある。

私の、ドライブピンクの顔

愛と正義、そして地球の平和を守る戦士の栄光の勇姿。
それを汚す、ジクジクと拡がった汗染み。
本当に汗だけだろうか…?
形の良い胸。丸々と膨らんだ尻。滑らかな四肢。
ただでさえ滲み出るおんなの匂いが、幾倍も濃厚なフレグランスとして発散されている。
何故このスーツは、こんなにも淫らな色をしているのだろう…?
何故私の肉体は、こんなにも淫らなフォルムをしているのだろう…?
何故私の顔は、こんなにも

「スケベだな」
おやじが私の横から、姿見を覗き込む。締まりの無い笑顔は、ランニングとブリーフに包まれた身体と同様だ。
それが何故か、私には不快ではない…

おやじの掌が、私の太股の裏に貼り付く。
ワキワキと蠢く指が、蜘蛛の様だ。蜘蛛は蝸牛の速度で、取り付いた肉の柱を這い上る。
じゅぐ
新しい汗が沸き出す。
蜘蛛が今、太股と尻の境界を越える。
下弦の月を二つ並べたような、とても淫らな桃色のボーダーライン。
姿見の奥で、無数の私が笑っている。

蜘蛛が目一杯に広げたその足を、ピンクの尻肉に思い切り食い込ませた。
待ち望んでいた瞬間
「はおぉんっ!」
人のものとも思えない声が縦長に広がった私の口から漏れる。
力一杯に押し付けられた掌。
その先に伸びる、芋虫の様な色と形の五本指。
その第一間接だけが、ひくひくと蠢いている。
「はあっ、あん、を、んあぁ」
そのひくひくに合わせて、私は哭く。
ひくひくがおきる度に、尻の中に妖しげな毒がじわじわと注入されていく。
ひくひく
勿論そんな事は無いのだが、私は、そんな悪夢をイメージしてしまう。
ひくひく
ドライブピンクの可憐な尻に噛み付いた、五匹の妖蟲。
ひくひく
その尻を征服する為に注入される、とても甘い毒
ひくひく
桃の香りを放つ甘い悪夢
たった五匹の芋虫に尻を制圧され、私の下半身が力を失う…


汚い布団の上、私はおやじに膝枕をしてもらっていた。
筋力を失った柔らか過ぎるおやじの太股。
その感触が心地良い。
柔らかい布団に包まれたような安心感が、私を包む。
五匹の芋虫が、私の長い黒髪を弄ぶ。
もっとして欲しい…

「落ち着いたか?」

おやじの声

「はい…、ご主人様」

私の口許が、緩く笑う。
正義のヒロインが決して浮かべては、イケナイ微笑み。
おやじもまた、満足そうに笑う。
しばし見詰め合う、私達。
私はユックリと目を閉じ、唇から全ての力を抜いた。

キスをねだる顔

「例の物は?」

おやじの声が、私を現実に引き戻す。

いじわる…

私はいそいそと布団から離れ、脱ぎ散らかしたコートから例の物を取り出す。
犬の姿勢。
おやじに尻を向けたまま私は、ドライブピンクは、のそのそと後退する。
出来るだけ胸を低くして、出来るだけ尻を高くして、私はおやじに近付く。
おやじの胡座の上に桃色の肉体を乗せて、私は思い切り仰け反った。
口には例の物、ドライブレンジャーの機密事項を納めたメモリーをくわえて…

受け取って、貴方の口で

夢見る少女のような妄想は、五匹の芋虫に食い散らされた。
私の唇を乱暴にこじ開けたおやじの指が、メモリーごと私の口の中をかき混わす。
「あ」の形に開いた口の中から、濡れた舌とメモリーが親指と人差し指によってつまみ出される。
おやじが立ち上がり、部屋の隅のPCに向かう。
私は舌で引き摺られるように、仰け反った姿で必死に着いていく。
糸を引いて舌から離れたメモリーを、おやじはPCにセットする。
驚くほどに早いタッチ音が響き、モニター上では外部とのやり取りが垣間見える。

裏切ってしまったのだ…
仲間を

私がおやじと初めて会ったのは、任務中だった。

正体不明の敵との交戦中、おやじは避難区域に侵入し、こともあろうに私の姿を撮影していたのだ。

厳重注意、機具没収から強制退去。
レベルアップするペナルティをものともせずに、おやじは私の周囲に現れ続けた。
そして、逮捕。

捜索されたおやじの部屋からは、大量のドライブピンクの画像データが押収された。
それだけではない、不愉快極まるような淫らなコラージュ写真や、イヤらしく編集された動画。
果てはピンクが悪に敗北し、その奴隷となる漫画や官能小説まで発見されたのだ。

連行される際のおやじの顔が忘れられない。
敗北したはずのその顔は、ニンマリと醜く歪められていた。

あの笑みは一体何なのか?
仲間の制止を振り切り、私は全ての押収品に目を通した。
どれもこれも、目を覆いたくなるような悪夢に彩られていた。
そんな世界、邪悪な妄想の住人

「賢い子ほど、悪夢を見る…」
誰の言葉だっただろうか

私は、ガラス越しにおやじと面会した。
おやじは、私の問いに答えず、ただじっと私を見詰めていた。
彼は今も悪夢を見ているのだろう。
ガラス越しとはいえ、肌の匂いすら伝わりそうなこの距離ならば、より濃厚な悪夢に違いない。
一体、どんな悪夢を

どきりとした。

何を考えているんだ私は!
私が自分の思考に戸惑い、視線を泳がせてしまった時…

おやじはニンマリと
笑った

しまった

初めて立場が逆転した。
私が彼の悪夢に呑まれそうになっているのを、こんなに間近で知られてしまった。
私は何も言えなくなった。
おやじは、ただニンマリと笑っている。
規定時間が過ぎて部屋を出た時、私の下着は汗でグッショリと濡れていた。



その夜、私は夢を見た。
正確には、おやじの見ていた悪夢を見たのだ。
ドライブピンクが、邪悪な者達の罠に嵌まり、背徳と快楽に溺れていく物語…
十や二十ではない、あのおやじの見た無数の悪夢が、私の内部に侵入して来る。

おやじが何故逮捕された際にも笑っていたのか、ようやく私は理解した。
こうなる事を見越していたのだ。

目覚めた私の肉体を、汗が包んでいた。
シャワーを浴びながらも、私は悪夢を忘れられない。
私は完全に、おやじの妄想の住人と化していた
汗のヌメリが落ちない、
特に手足の付け根の。

本当に汗だけだったのだろうか…

無言の面会は、おやじが釈放されるまで続いた。
ガラス越しに私達は、悪夢を共有した。
私はおやじの前で、おやじの頭の中の悪夢を妄想する。
下着を着けず、振動する淫具を秘所に忍ばせた私の、必死のしかめっ面。
そんな私の妄想をおやじが笑う。
今はどんな妄想が、私を苛んでいるのだろう…

暗黒へと続く淫らな螺旋階段を、ドライブピンクは転げ堕ちる。

おやじが釈放されたその日、私は一週間の休暇を取った。
いぶかしがる仲間もいたが、気になどしていられなかった。

私はそれからの一週間を、おやじの元で過ごした。

外部とのやり取りを終えたおやじが、私を呼ぶ。
私はまるで飼い猫のように、ただまっしぐらに親父の膝の上を目指す。
毛深く柔らかい胡座の上にうつ伏せで横たわる、ピンクの飼い猫。
左膝の上に顎を乗せ、右膝の上に股間を乗せる。
膝から折り曲げた足先は、犬の尻尾のようにプラプラ揺れる。

「ヤモと接触出来た」

おやじが、先のやり取りの成果を語り始める。

「お前の持ってきた機密、高く売れたぞ。」

この人の役に立った。
それも、大切な仲間を裏切って…
それがとても嬉しくて、私はおやじの太股に頬擦りする。

「まったく、こまった正義のヒロイン様だなあ!」

声と共に上げられた右手が、風を切って降り下ろされる。
ぱあん
二つの鞠を連ねた様な私の尻が、揺れる

「ひっ」

痛さを感じての悲鳴ではない
とても甘美で、興奮に打ち震えた享楽の秘鳴

「一時の快楽の為に守るべき全てを売り渡しおって、このスケベ!」

ぱあん

「スケベ!」

ぱあん

「スケベ!」

ぱあんと、断続的に鳴る尻の打擲音の間に、私の開きっぱなしの口から漏れ出す情けない声が聞こえる。

むひいいいいいい〜〜…


そうである事を叩き込むように、おやじはスケベという言葉を連呼しながら尻を打つ。
この部屋に来た時点で、私の肉体はスケベに染まりきっていたというのに…

あの悪夢の一週間で私は、ドライブピンクは、完全におやじの手に堕ちていた。悪夢が現実になる。
膨らんでいた妄想が、現実として目の前に溢れ出す。
おやじは率先して、ドライブピンクを汚した。
私は変身した姿で、様々な場所、様々な趣向で汚された。

寂れたラブホテルの一室、公園の共同トイレ、蝋燭に照らされたSMルーム。
目隠し、首輪、拘束、引き回し。
あらゆるシチュエーションが、正義のヒロインを蝕む物語を伴っていた。

しかしおやじは、私を汚し辱しめる事はしても、決して肉の交わりを求めては来なかった…

悪夢の七日間の最後の日、おやじは再会の条件として、一つの命令を下した。
それは、正義のドライブピンクとして絶対に背くべきものだった。
絶対に、背くべきものだったのだ…

「謝れ!お前に期待を寄せていた者全てに、応援してくれていた子供達に謝らんか!」
頭の中に、粗末な処刑台に繋がれたドライブピンクのイメージが浮かぶ。
傍らのおやじに、みっともなく尻を突き出す私。
それを取り囲む沢山の人々。そして子供達。
おやじの腕が斬首の斧のように、尻という名のピンク色の猥褻物への刑を執行する。
なんとも情けない、だらしのない声で悦ぶ私。
大人達がゴキブリでも見るような目を向けてくる。
子供達は泣き叫び、必死に目の前の惨状をひていする。

「ドライブピンク、負けないで!」

「戦って!お願いだから戦ってよ!」

ごめんね、みんな
私、負けちゃった…
もう二度と戦えないの、この人に勝てないの

甘美な自滅への妄想が、頭の中を支配する。

本当はね、全部嘘なの
愛も正義も関係ないの
ずっとこうしてほしくって、嫌らしいお仕置きをして欲しくって私、戦ってたの
これが私、ドライブピンクの正体なの

子供達に見せつけるように、私はゆっくりと立ち上がり、尻を向ける。
膨らみ過ぎのコッテリとしたヒップ。それを両手で鷲掴み、思いっ切り!

びりびりびりぃ〜

確かに悲鳴が聞こえた、そんな気がした。
それとも自分の享声だったのか
現実に戻った私もまた、自らの両手で、尻をくるんでいた部分のスーツを引き裂いていた。


ぼむん!

そんな滑稽な擬音が連想させるながら、引き裂かれたスーツから、それよりも更に濃いピンクの生巨尻が飛び出す。

やってしまった…

震える両手を頭の後ろで組み、膝をがに股に開き、解き放たれた肉の鞠を思い切り突き出して、私はおやじに懇願する。

「ご主人様、こんな正義のヒロイン失格の私を、犯して下さいぃ!」

姿見に映るドライブピンク。
人体で無理やり「8」を描いた姿勢。その目は完全に明後日の方角を見ている。

おやじが私の背後に立った。
あの七日間で、たった一つだけ欠けていた物語。
それが今、始まろうとしている

そっと尻の谷間に触れてくる何か。
熱くて、硬くて、長い。
形となった妄想。
それがゆっくりと、私を侵略してくる。
心も肉体も、とうの昔に降伏していた。抗うものは何もない。

凄い
素敵
最高

思い付く全ての言葉で、私は侵略者を讃えた。
喝采の変わりに思い切り腰を振って、その進行を歓迎する。

もっと奥へ
どうぞもっと奥へお越しください、ご主人様。

やがて辿り着いた最奥。
いつしか地面と平行になっていた私の上半身を、おやじは強引に引き起こす。

髪を捕まれて顔を向けられた先には、姿見の中で邪悪に貫かれたドライブピンク。
美しい…

「出すぞ」

何を?と訪ねる暇もなく、私の最奥で広がる暖かい感覚。
泉の様にコンコンと涌き出るその感覚は行き場を失い、もと来た路を逆流する。
精液ではない
どこかで嗅いだことのあるこの匂い。
やがて、みっちりと栓を施された筈の肉穴から、ドス黄色い液体が溢れ出した。

小便だ



自然と笑みが零れた。
恐らくこの笑みは、一生私の顔から消える事は無いだろう。
完全なる敗北
私が死ぬまで歩み続ける道が、今、ハッキリと見えた。

釣られて私も放尿を開始する。
両足を伝い、混ざり合いながら垂れ流される汚液が、汚い布団を黄色く飾る。
良い匂い…

突然鳴り出す、通信ブレスレット。
気だるげに眼を向けたそれから、長官の慌てふためく声が聞こえる。
「ピンク、今すぐ帰還しろ!ヤモがこの基地を…」

通信は不自然に途切れた。
放尿も治まっている。
滑りの良くなった肉の路を、おやじの逸物が我が物顔で往き来する。
「行かなくて良いのか?」
やっぱり、いじわる

「ふひひひ、いけないヒロインめ。これはお仕置きだ」
姿見に映る無数の私に、おやじが刑の執行を宣言する。
胸元に添えられたおやじの両手がスーツを引き裂き、二つの乳房がフルルンと嬉しそうに飛び出す。
「ご主人様ぁ。私、私は…」
「違うだろう?」
鋭く尖り切った私の乳首を弄びつつ、おやじが耳元で囁いた。

そうだ、私の名は

「ご主人様。ピ、ピンクに、いけないドライブピンクにもっと、お仕置きして下さい。」

私はドライブピンク。
ご主人様の下部。

「良いだろう」
ご主人様が私の顎を掴み、振り替えらせる。
その意図を読み、そっと眼を閉じる。

ぶちゅ

重なる唇
今頃ドライブレンジャーの基地は、ヤモの総攻撃を受けているだろう。
この身分と引き換えにした、機密事項メモリーのために。
もう、私が帰る場所はここしかない。
正義は敗れた
終わらない悪夢が、私を待っている

「ご主人様ぁ。ピンクにぃ、いけないピンクにもっと、お仕置きをぉんん〜」

私の懇願が、ご主人様の唇に押さえ込まれる。
暫く跳ね回っていた舌も、いつしかご主人様の舌によって、すっかり手懐けられていく…

裂かれたスーツから不様に晒け出された尻が、ホンノリと赤く染まった

(了)




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