Now I'm dying softly, so softly. There will be no words.


「大日本帝国憲法復活請願」に賛成する東京維新の怪、もとい会

 ぼくが今まで知らなかっただけかもしれないが、さっき赤旗政治記者がすごいツイートをしていた。


 大日本帝国憲法復活請願?? さらにこんなツイートも回ってきた。


 いくらなんでもネタじゃねえのかと思って「大日本帝国憲法復活請願」でぐぐったら、トップに出てきたのがコレ。

皇室典範(占領典範)に関する請願 – 請願:参議院ホームページ

 マジだった……。仕方がないので一部引用してみよう。

 (一)日本国憲法であると詐称し続けている占領憲法は、GHQの軍事占領下で我が国の独立が奪われた時期に制定され、独立国の憲法として認めることはできない。占領憲法第九条第二項後段の交戦権とは、アメリカ合衆国憲法にいう戦争権限と同義であり、宣戦、統帥、停戦、講和という一連の戦争行為を行うことができる権限のことである。交戦権がないことから戦争状態を終了させる講和行為を行い得ない占領憲法が仮に憲法であれば、我が国はサンフランシスコ講和条約によって戦争状態を終結させ独立することができず、大日本帝国憲法第十三条の講和大権によって戦争状態を終了させて独立を回復したことになり、大日本帝国憲法は現存している。(二)つまり、占領憲法は、無効規範の転換理論を定めた大日本帝国憲法第七十六条第一項により、ポツダム宣言の受諾と降伏文書の調印からサンフランシスコ講和条約に至るまでの一連の講和条約群の一つとして評価され、大日本帝国憲法の下位規範として認められる。

 日本国憲法を「GHQに押しつけられた憲法だ」と主張する一派がいるのは知っている(石原慎太郎都知事とかな!)。そして、それを引用部分のような論理で説明し、現在も大日本帝国憲法は有効であるという説を唱えている人物もいる。おそらく、この請願はその手合いが出したものだろう。
 しかし、日本国憲法は勅命による帝国議会への草案提出・衆議院および貴族院による審議可決と天皇の裁可という、大日本帝国における正式な手続きを経て公布に至ったことをどう説明するのだろうか。このあたりの流れは以下のページにまとめられている。

概説[第4章 帝国議会における審議] | 日本国憲法の誕生

 なお冒頭の引用にある、大日本帝国憲法第13条の「講和大権」とは、以下のようなものである(法庫より引用)。

第13条 天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス

 と同時に、上記リンク先にある第73条は以下のとおり。

第73条 将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ
2 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員3分ノ2以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員3分ノ2以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス

 サンフランシスコ条約が、こいつをクリアして大日本帝国憲法の改正憲法である日本国憲法が施行されたあとに締結されたものである以上、連合国との講和は天皇大権によるものであるというのは無理筋である。……まあ、そもそもかの一派は、日本国憲法を大日本帝国憲法より下位のものとして位置づけているのであるが。大日本帝国憲法第76条1項を見てみよう。

第76条 法律規則命令又ハ何等ノ名称ヲ用ヰタルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ総テ遵由ノ効力ヲ有ス

 憲法そのものが改正されたことにより、この項目は効力を失ったと見るべきだ。
 さて、請願のその先はもっとすごい。

(五)まして、皇室の家法である明治二二年に制定された正統な皇室典範は大日本帝国憲法などと同列の国家の最高規範であるにもかかわらず、これを廃止させた上、占領憲法下で同じ名称を付けた昭和二二年の法律である皇室典範(占領典範)は、法令偽装の典型であって、国民主権の占領憲法により、国民を主人とし天皇を家来とする不敬不遜の極みである皇室弾圧法にほかならない。(六)国民主権という傲慢な思想を直ちに放棄して、速やかに占領典範と占領憲法の無効確認を行って正統典範と正統憲法の現存確認をして原状回復を成し遂げる必要がある。これによって、拉致問題、領土問題、教育問題、原発問題などについても原状回復による解決が図られ、祖国の再生が実現し得る。

「国民を主人とし天皇を家来とする不敬不遜の極みである皇室弾圧法」「国民主権という傲慢な思想を直ちに放棄」ときた! そもそも、皇室の家法が国家の最高規範というのは本当だろうか? 大日本帝国憲法第74条にはこうある。

第74条 皇室典範ノ改正ハ帝国議会ノ議ヲ経ルヲ要セス
2 皇室典範ヲ以テ此ノ憲法ノ条規ヲ変更スルコトヲ得ス

 これは皇室典範の不可侵性というよりは、むしろ独立性を示しているものだろう。皇室の家法それ自体は、国家の問題ではないというわけだ。それにしても「国民を主人とし天皇を家来とする不敬不遜の極み」である。文字通り皇室の家法にすぎない、現在の皇室典範のいったいどこにそんな内容があるというのか。というか、「天皇を主人とし国民を家来とする」という思想の裏返しだわな。この発想は。「国民主権という傲慢な思想を直ちに放棄」にいたっては、言葉もない。キミは何か、ロシア共和国に服従したいと申し出て自らに手錠をかけるよう要求したアレクサンダー・ガーレンか。
 こんなものに賛成した都議が少なくとも3人いたというのだから、眩暈がする。竹田恒泰に心酔しているイザ!ユーザでさえ、

現在の憲法は前文や九条など、普通の国の憲法としては非常にいびつで異常な内容が含まれており、GHQにより押し付けられたものということも事実だが、形式的には帝国議会の議決と天皇の詔により正式に決まったものであり、実質的にも日本の建国以来の伝統が守られたことは間違いがない。

だから、一部の主張にあるように憲法を破棄するなどということはあってはならず、竹田さんが指摘するようなことを十分に踏まえたうえで改正を図るべきである。

 と主張していることを思えば、この事態の異常さが窺えよう。とりあえず、東京維新の会およびこの主張をする一派、ついでに石原慎太郎都知事には速やかに因果地平の彼方へと消え去っていただきたい。


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