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俳優の大滝秀治さん死去
10月5日 15時47分

俳優の大滝秀治さん死去
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味わいのある庶民的な役柄で人気を集めた俳優で、文化功労者の大滝秀治さんが、今月2日、肺がんの一種、「肺扁平上皮がん」のため、東京都内の自宅で亡くなりました。
87歳でした。

大滝さんは大正14年、東京都で生まれ、中学を卒業後、陸軍に入隊、外地で終戦を迎えました。
復員後、演劇の道を志し、昭和23年、現在の「劇団民藝」に入り、2年後に初舞台を踏んで劇団の中心俳優として活躍しました。
舞台のほかに映画やテレビドラマでも活躍し、独特の声とほのぼのとした雰囲気の個性派俳優として人気を集めました。
このうち、平成7年のNHKの大河ドラマ「八代将軍吉宗」では、吉宗の父親で紀州藩主の徳川光貞を演じるなど、多くのドラマで印象に残る重要な役を務め、テレビコマーシャルでもユーモラスな演技で親しまれました。
また、出演した映画では数々の助演男優賞を受賞し、最近では、ことしカナダで開かれた「モントリオール世界映画祭」で、人の心情を芸術的に描いた作品に贈られる特別賞を受賞した映画「あなたへ」にも、主人公を支える漁師の役で出演しました。
大滝さんは、昭和63年に紫綬褒章を、平成7年には勲四等旭日小綬章を受章、去年は文化功労者に選ばれました。
大滝さんはことし2月、体調不良のため6月の舞台を降板し、最近は自宅で療養を続けていました。
家族によりますと、亡くなる前の日の夜も、家族と一緒に食卓を囲み、好きなお酒を酌み交わしていましたが、翌日の午後、静かに眠るように亡くなったということです。
葬儀は近親者のみで行われ、今月22日に東京・港区の青山葬儀所で「お別れの会」が開かれることになっています。

“皆様に愛されて幸せ者”

大滝秀治さんが亡くなったことについて、大滝さんの家族は「2月に肺がんが見つかり8か月。病気に身体をむしばまれる恐怖以上に仕事ができないことがつらそうでした。こんなに家族とべったり過ごしたことがありませんでしたので、病気になるのも決して悪いことばかりじゃないねと申しておりました。あれこれ難しい本を読みあさっておりましたが、最後に手に取ったのは赤塚不二夫さんの『これでいいのだ』。まさに『これでいいのだ』と笑顔で穏やかに旅立ちました。好きな仕事ができ、皆様に愛され本当に幸せ者です。どうもありがとうございました」とコメントしています。

“大切な翼をもがれたよう”

大滝さんと同じ昭和23年に劇団に同期生として入団して以来、60年以上の交流がある女優の奈良岡朋子さんは「こよなく演劇を愛し、情熱を燃やし続けたあなたを失った今、大切な翼をもがれたような思いです。もう一度、一緒に舞台を創りましょうと、話していたばかりなのに、無念です」とコメントしています。

“本当に残念”

おととし大滝秀治さんが主演を務め、文化庁芸術祭賞の大賞を受賞した舞台「らくだ」の脚本を書いた劇作家の別役実さんは、「『らくだ』は大滝さんのために書き下ろした作品だったので、特別な思いが詰まっています。とてもエネルギッシュに舞台をこなしていて、俳優としての積み重ねが舞台上の存在感にしっかりと表れていました。楽屋でも冗談を言ってユーモアたっぷりな方でした。また一緒にやろうと言っていたので、本当に残念でなりません」と話しています。

“本当にすばらしい先輩”

大滝さんが出演した最後の映画となった「あなたへ」で主役を務めた俳優の高倉健さんは、「大滝さんが体調を崩され、入院なさっている間、お手紙のやりとりを続けておりました。大滝さんの最後のお仕事の相手を務めさせていただき、感謝しております。今までにご一緒させていただいたいろいろな場面が思い浮かびます。本当にすばらしい先輩でした」というコメントを出しました。

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