「文章力を鍛えるためにはどうすればいいの?」というご質問をたまにいただくので、僕が努力していることをまとめてみます。
ひらがなを使う
僕は衒学的なところがあるので、つい文章を書いていると、難しい単語を多く使ってしまい、漢字だらけの真っ黒な文章に仕上がってしまいます。
また、僕は執筆しているジャンルがITよりなので、カタカナが異常に連なることも多く(「ソーシャルメディアマーケティングコンサルティング、つまりフェイスブックやツイッターのマーケティング活用の支援をしています」とか)、しばしば自分の文章を見て唖然とします。ルー大柴かよ!とロンリーツッコミ。
そんなわけで、なるべく「ひらがな」を使うことに僕は気をつけています。文章能力の定義はさまざまですが、「わかりやすい文章を書く」という意味においては、やっぱりひらがなが多い文章が好ましいでしょう。
頭がいい人ほど、漢字が多く、カタカナが多い文章を書いてしまう傾向があるように思います。特別な理由がないかぎりは、社会一般に通じない言葉を文章に盛り込むのはやめておくべきです。
見出しを使う
見出しを使うだけで、文章は格段に読みやすくなります。
見出しは「前提」を共有する力があるので、読者は安心感をもって読み進めることができます。例えばこの文章自体も、「見出しを使う」という見出しがあるために、みなさんは「あぁ、見出しの話をするんだな」という態度を一瞬で形成できるわけです。
試しに、この記事のすべての見出しをないものとして読み直すと、話の切れ目や内容の定義が曖昧になり、「一体この人はここで何の話をしているんだ?」という疑問を抱く瞬間が出てくると思います。
見出しは各文章に意味付けを施します。僕はまだ要約的、説明的な見出ししか書けないのですが、うまい編集者だとアーティストのようなセンスで、メタ的な見出しをつけたりします。「見出し」は実に深い世界なので、まだ別の記事で詳しく書いてみたいと思います。
ひたすら書き、発表する
これはもうTips的な話を超えてしまいますが、ひたすら量をこなすことでも、文章能力は向上していきます。というか、水泳や楽器演奏と一緒で、自分の体でやってみないと、文章はまずもって上達することはありません。
ブログはもちろん、ツイッターもまた、いい練習の場になるでしょう。生活の中で「他人に文章を見てもらう機会」を増やすと、自然と文章はうまくなっていくはずです。
注意したいのは、「発表」というプロセスが重要だということです。よほど自己批判がうまくないかぎりは、誰も見ないところで書き続けていては、文章はうまくなりません。ペンネームでもいいので、自分の言葉を書いて、発表しましょう。
本を読む
本を読むことも、文章能力を鍛えるための重要なトレーニングです。たくさん本を読めば、その分だけ、ほとんど無意識的に文章力が向上していきます。
これは「英語の文章をひたすら読むと、いつの間にか文法や単語の理解が深まる」ということと近いと思います。もしくは、一流のミュージシャンの音楽を繰り返し聴いていると、無意識的に彼らの演奏のクセや「文法」がわかるようになる、という例えでもいいでしょう。人は書かれた文章に触れることで、文章技術そのものについても、体で学んでいくことができるのです。
変に文法の教科書とか文章技術本とかを読むより、一見遠まわりですが、雑多に本を読む方がよっぽど文章力は鍛えられるでしょう。なるべくたくさん、書かれた文章に触れましょう。ブログだと少し文章が軽すぎるので、できれば本がいいと思います。
比喩を使う
比喩は文章能力、というかコミュニケーション能力においてもっとも重要な要素だと考えています。比喩さえうまければ、文法や単語はハチャメチャでもかまいません。比喩さえうまければ、いいたいことは通じるのです。
比喩は、読み手・聞き手の中にある「何か」を引き出すことでもあります。新しく言葉や概念を与え、理解してもらうのではなく、受け手の中に既に存在するものを援用するので、コミュニケーションのコストは大幅に下がります。
例えばムハマド・ユヌスは人間を盆栽に例えます。その心は「人がよく育つか否かは、タネではなく、環境の問題。小さい鉢に植えれば、大きな木も小さく育つ。広大な大地に種まけば、大きな木に育つ。ゆえに環境を整えることが重要だ」というわけです。これは名比喩だと思います。
比喩は芸術に近い領域なので、人間や世界に対する興味、観察眼、そして表現力が厳しく求められてきます。僕はまだまだ比喩が下手なので、日々気に入った比喩を書き留めたり、意識的に比喩を使ってみたりと、努力を続けています。これは一生頑張らないといけないテーマだと思っています。
こんなところが僕が意識的に取り組んでいるものです。まだまだレベルが低いので、一生かけて磨き続けていきたいと思います。
関連本。Amazonレビュー80件以上付いている一冊です。未読なのでポチりました。