2012-02-20 サンジゲンの画作り

「ブラックロックシューター」の画面作りが面白いので一言。
このアニメを作っているのは「サンジゲン」というCGアニメ会社。
2006年設立の若い会社だが、いろんな所で3DCGパートを作っているので目にした人も多いはず。(タイバニとかね)
3dsMAXというソフトを使用しているのだが、特徴的なのは三次元のCGを日本のアニメらしく2Dに落としているところだ。
社長の松浦裕暁さんはもともとゴンゾにいた人なのだが、あそこの「人物作画とCGが乖離している」のに違和感があったんだそうだ。(そうだそうだ)
で、何が原因かというと作画に比べてCGは情報量が多過ぎるということなんだと。
テクスチャもそうだし、90年代後半のCGのグラデーションもふくめてだ。
なので、CGの情報量を下げ、且つ作業の負担を減らしてスピードアップさせるためCGのテクスチャをセル風塗り分けにして、日本アニメらしい画面作りを目指した。
しかも、プログラムでモーションを付けたCGは滑らかすぎてやっぱり浮くので、人がタイミングを調整しているのだそうだ。
これは当然すぎる成り行きで、まあおそらくこれからの日本アニメの主戦力になる作画方法だと思う。
この方法ならば作画枚数を気にせずにガンガン動かせる。動いて動いて動きまくれる。もう紙芝居なんて言わせない。
モデルもありものをみんなで使用するので作画崩壊なんて言わせない。
立体背景もやりたい放題だし、カメラだってグルグル動かせる。
実際、今回のブラックロックシューターはアクションシーンで動きまくって、カメラは高速移動して、瓦礫は飛ぶ飛ぶ、建物も回り込む、爆発だってCGなのだ。
しかも中々手描きと見分けがつかないくらい良く出来ている。
アクションが自然なのはCG特撮監督にガイナックスのアクションアニメーター今石洋之さんが参加しているからだろう。
タイミングやキャラクターの動きが実に気持ち良くし仕上がっている。
なんだか金田伊功さんが FFシリーズでアクションシーンの指導をしていたのを思い出した。
ただし、一番の弱点はやはり表情だと思う。
今回の作品では夢世界での描写がフルCG。
夢世界えはキャラクターはあまり表情を動かさない設定のようだ。
以前はCGと言えば一番苦手だったのは髪の毛。束になって変な動きをするので違和感があったが解消されつつある。
次に関節の動きの矛盾も最近のアニメでは気にならなくなってきた。脇から肩にかけては難しいのだが、上手い具合に滑らかになっている。
最後に残ったのが顔の表情という訳だ。
蛇足だがこの度公開された「ベルセルク」もほぼフルCGなのだが顔と指に関してはアニメーターの作画と合成させて画面作りをしている。
面白いことに、こと「顔」に関してはCGよりも手描きの方が情報量が多いのである。
人の表情の表現というのは実に不思議だ。
表情のアニメーションというお題で文章が書けるくらいである。
気持ちいい画面作りは料理と同じで、結局のところ人が調整をしないと納得のいく画面には仕上がらない。
そういったノウハウというのは人から人へ伝えていくものだと、改めて思う。
それが手描きからだんだんとCGの比重が大きくなっていくだけのこと。
自分は手描きアニメが好きだが、アニメーションの本質が「絵が動く」ということにあるのだから、この動きはむしろ歓迎している。
ツールがどんなに変わろうとも、人が作っている限り、人を感動させるアニメは作られ続けると思っている。