[子どもの貧困]選挙通じ問題の喚起を

2010年6月26日 09時40分

 全国一高い失業率に全国一低い県民所得。全国一の離婚率と出生率。沖縄の矛盾のしわ寄せはすさまじい「貧困」と「格差」となって子どもたちを襲っている。

 沖縄子どもを守る女性ネットワークは「沖縄子ども振興計画(仮称)」を策定するよう国、県、県議会に要請した。貧困問題は子どもたちのネグレクトや非行につながり、その連鎖を断ち切るために、心身ともに傷ついた子どもを治療する「SOS沖縄子ども村」の建設や母子世帯の住宅を確保する「母子生活支援施設の増設」、「24時間保育と夜間子どもサポート制度の創設」などを提言している。

 県は1998年度、5年ごとに行っている「県ひとり親世帯等の実態調査」に初めて県独自の調査項目として「離婚の理由」を取り上げた。

 「元配偶者の生活力なし」(44・1%)が一番多く、次に「借金問題」(31・0%)の順だった(複数回答)。

 若年で結婚し、離婚したものの元夫からの送金が期待できない。手に職のない女性はてっとり早く夜の仕事に従事する。子どもたちは夜間、自分たちだけで過ごさざるを得なくなる。子どもたちは寂しさから夜遊び、飲酒・喫煙を覚えるようになり、非行の道に入るという。

 児童福祉に長くかかわる同ネットワーク共同代表の山内優子さんは「ネグレクトから非行に」が典型的なパターンと分析する。周りがみんな「貧困」だった昔と違い、貧困が固定化され、今は希望がみえないのがつらいという。

 県によると、2009年度に生活保護を受給した世帯(月平均)は推計で1万8226世帯。ことし3月時点の速報値では復帰後最高の1万9088世帯に上っている。

 2008年度の「県ひとり親世帯等の実態調査」によると、母子世帯の月平均収入は「10万円未満」(39・8%)「10~15万円未満」(32・6%)。一方、父子世帯は「10~15万円未満」(27・7%)「15~20万円未満」(25・7%)、20万円以上(23・8%)と続く。厳しさは変わらないが、ここでも格差がある。

 親の収入は子どもの生活にはね返ってくる。本紙がことし2月、県内各地の小中学校教員241人にアンケートしたところ「夜、子どもだけで過ごしている」(56%)「給食以外の食事を十分にとれない」(44・4%)「病気やけがでも病院に行けない」(31・1%)などショッキングな結果が出た。

 小学校生活スタートの時点から、あるいはそれ以前から、埋めがたい格差が存在している。その中に放り込まれるのは子どものせいでないのはいうまでもない。

 潜在的な才能を開かせる環境をつくってあげられず、子どもの将来が決まっていくとしたら大人の責任だろう。負の連鎖を断ち切らなければならない。

 参院選沖縄選挙区(改選1)は事実上の三つどもえ戦に突入している。子どもの貧困と格差は切実である。山城博治、伊集唯行、島尻安伊子の3氏は論戦を通じてこの問題を喚起してもらいたい。

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