-日本の政治指導者らが連日、河野談話の撤回を主張する発言を重ねている理由は。
「日本では自民党政権による“55年体制”が93年に崩壊して以降、小泉内閣の5年間を除くと、ほぼ毎年首相が変わっている。内閣の寿命が平均して1年に満たないことから、政治的リーダーシップが弱い。90年代以降の“失われた20年”といわれる景気の冷え込みに、昨年の震災が重なったことで、日本社会に不安が拡大している。こうした国内事情が、過去史の責任を否定し、極右的発言が重なる背景になっている。日本の将来のためには、望ましくないことだ」
-こうした日本の状態に対し、韓国はいかなる選択をすべきか。
「これまでと同様に、韓日関係では二つの手を同時に使わなければならない。旧日本軍の従軍慰安婦問題と過去史の責任を否定する勢力を批判し、その一方で河野談話の精神に共感する良心的な政治家や知識人・社会団体と良好な関係を保ち、問題を解決していくしかない」
-日本には、日本軍の従軍慰安婦や過去史の反省を要求する韓国の主張を、煩わしいと考える人が多いようだ。日本の新聞にも、これまで過去史の問題を解決するために努力してきたことを、なぜ分かってくれないのかという記事が出ている。
「日本による侵略と韓国併合によって引き起こされた徴用、徴兵、従軍慰安婦問題に対する立場を整理し、韓日の国会で決議案を通過させることが考えられるだろう。理想論に聞こえるかもしれないが、長期的には、国民の意向を代弁する国会でこうした決議を採択する方が、首相や閣僚レベルの謝罪よりもずっと拘束力があり、両国国民の共感も高まるだろう」
-日本の政治家たちによる相次ぐ妄言が、日本という国を過小評価させている側面もあるようだ。
「日本は明治維新の後、西欧文明を受け入れることで大国に成長し、侵略戦争で敗戦国になったが、再び経済大国として立ち上がった。その底力を過小評価してはならない。最近韓国では、中国の台頭に圧倒されているせいか、日本に対する研究や関心が相対的に減ってきている。今こそ、日本の経験や未来の発展戦略を積極的に研究すべきだ。日本が、経済大国になった90年代以降、国家目標を失って混乱を繰り返していることは、韓国の未来戦略を設定する上でも反面教師にできる」
■韓相一・国民大学名誉教授
1941年平壌生まれ。高麗大学行政学科を卒業後、74年に米国クレアモント大学院大学で日本学を専攻し、博士号を取得。82年には『日本帝国主義の一研究』で韓国政治学会学術賞を受賞。これまでに『帝国の視線』『日本軍国主義の形成過程』『1910 日本の韓国併合』『日本、漫画で帝国を描く』などの著書を手掛けている。現在は、国民大学政治外交学科の名誉教授を務めている。
■『朝鮮策略』とは
清の駐日公使の書記官を務めた黄遵憲の著書。1880年に修信使として日本に派遣された金弘集(キム・ホンジプ)が持ち帰り、高宗に献上した。主な内容は、ロシアをけん制するため「親中国、結日本、連米国」すべきというもの。当時、国際情勢に疎かった朝鮮を開眼させる契機となったが、清の干渉や日本の朝鮮侵略を招くという批判を受けた。日本と清の立場から見た対朝鮮国際戦略、という側面が強い。