子どもの頃の夢を叶え、声優として羽ばたく。
2012年9月23日(日)
テレビ東京の「たまごっち!」などのテレビアニメの声優として活躍している、儀武ゆう子さん。与那原町(中島区)出身と聞き、与那原通のインタビューに登場してほしいと思っていたのですが、東京を拠点に活躍しているので、なかなか実現できませんでした。でもそのチャンスが! 「仕事で沖縄に来る」との情報をキャッチし、忙しい合間に時間を作っていただき、お話を伺いました。
─東京を拠点に活動をしているそうですが、主にどんな仕事をされているのですか?
現在はフリーランスとして、テレビアニメなどの声優をはじめ、司会の仕事などをやらせてもらっています。独特のノリ(雰囲気)があるアニメのイベントは、一般的なアナウンサーより、この業界を理解している者の方が、ファンの方にも喜んでもらえるので、イベント司会としてよく声をかけてもらっています。数えきれなくらいの声優さんたちがいる中で、司会もできる女性声優は珍しい存在なので、自分が出演しているアニメだけでなく、ほかのアニメイベントにも司会として呼ばれることもあります。
─そもそも声優になろうと思ったきっかけは?
子どもの頃からアニメが大好きで、アニメの世界に入りたい、アニメの登場人物になってアニメの世界で生きたいと思っていたくらい。当時はまだ子どもだったので登場人物になれると信じていたんです(苦笑)。でも成長するにつれ、それは無理だと分かるようになり、小学5年生の頃、声優という仕事があることを知り、声優として生きていくためにはどうしたらいいのかを考えるようになりました。
ひと言で言えば目立ちたがり屋だったかも。人見知りをせずに積極的で、学級委員などもやっていました。ただ学芸会の主人公として舞台に立つのだけは恥ずかしくて、ナレーターなどをしていました。当時から人前で話すのは得意な方で、「お話大会」にも出場していました。
中学時代は部活をしていなかったので、放課後はアニメ好きの仲間同士で図書館に集まり語り合っていました。今でこそ公然と「アニメが好き」と言えるような時代になっていますが、当時は恥ずかしくて大きな声では言えずに、地味にひっそりと活動していました(苦笑)。
ただ、「私は遊びではなく、将来仕事にするという目標を持っていて、真剣に取り組んでいる」という誇りを持っていました。
─高校は?
知念高校です。地元という理由ではなく放送部が活発だったので進学しました。顧問の池原先生は、放送部の指導では県内トップクラスでした。常に「NHK杯全国高校放送コンテスト」の沖縄県代表の常連校だったので放送部に入るために知念高校を選びました。
入部してすぐ腕試しのつもりで1年女子として大会に参加したのですが、ラジオ番組制作で最優秀賞を受賞してしまい全国大会に出場しました。2年のときからは個人戦で全国大会に出場するようになり、沖縄県内では常に最優秀賞を受賞していました。ただこれが勘違いのはじまりでした。
─勘違いとは?
いろいろな賞をもらっていたので、「選ばれて当たり前。声優になれないはずはない」と勘違いしてしまいました。でも現実は厳しかったですね。高校時代は、学校という守られた環境の中で同級生や先生など周りから喜ばれていただけ。学校で褒められる方法と、芸能界で輝く方法はアプローチの仕方がまったく違うことに気づくまでに時間がかかりました。
高校卒業と同時に東京に出て、居酒屋で働きながら、声優の養成学校に通っていたのですが、自分の勘違いに気づくまで2年ほどかかりました。養成学校に通えば何か教えてもらえるものだと思っていたのですが、教えてもらうのではなく盗むものだと気づいたのは20歳のときでした。
テレビアニメのデビューは23歳のときでした。でも27歳くらいまでは、声優の仕事だけでは食べていけなかったのでアルバイトも続けていました。声優が本業と自信を持って言えるようになったのは28歳のとき。テレビアニメの「青い花」ではじめて主役(奥平あきら役)に抜擢されたんです。同じ頃、奄美大島をモデルにした島が舞台のアニメ「うみものがたり~あなたがいてくれたコト~」では、声優としてだけではなく沖縄出身ということもあり方言指導の仕事もいただきました。このころからフリーとして活動をはじめ、ありがたいことに今日まで続けることができています。
─仕事で大切にしていることは?
私は特に営業はしていません。今の仕事が次につながっていくので、いただいた仕事には真摯に向き合い、一つ一つ丁寧にこなすことが大切だと思っています。そして声優の仕事には感性が必要です。人前で声を出すということは、内面の輝きがなければ声に表れてしまいます。そのためにもいろいろなことに心を動し感動できるように、日々を楽しめる人になりたいと思っています。
音響や監督などスタッフさんと一緒になって、一つのことを作り上げていくことが楽しくて、やりがいを感じています。その作品づくりの思いをファンの皆さんに届けることが何よりの魅力です。
─今後はどんなことをしたいですか?
近頃では女の子役が多いので、また男の子役もたくさんやりたいですね。声優には2つのタイプがいると思います。特徴的な声を出す人と、いろいろな声色を持っている職人的な人。私は後述の職人的なタイプを追求したいですね。「えっ、これ儀武ゆう子だったんだぁ〜」と常にびっくりさせる、そんな意外性のある声優を目指しています。そしてどんなに年老いても一生、声優でいたいですね。
─今日はお忙しいところありがとうござました。