自民・加藤氏:尖閣の領土問題存在認める必要、中国と主張の違い明確
10月4日(ブルームバーグ):国交正常化40年となる中国・北京を訪問した日中友好協会会長、加藤紘一・自民党元幹事長は、日中間にある問題の解決には日本政府が尖閣諸島をめぐる領土問題は存在すると認め、両国が双方の言い分の違いを国民に対して明確に伝える必要があるという認識を示した。
加藤氏は2日のインタビューで、「これだけ領土の問題で日中がもめているんだから、領土問題は存在しないというワンパターンで喋っていていいのか」という意見があり、自身も「その通りだと思う」と述べた。その上で、日本は「とにかく領土問題が存在する」ということを前提に、「わが国の国民にも双方の言い分の違いを明確にできるメッセージを伝える必要がある」という認識を示した。
野田佳彦首相は尖閣諸島について、歴史的にも国際法上も日本固有の領土で、日本が有効に支配しており、解決しなければならない領有権の問題はそもそも存在しないという立場をとっている。一方、中国外務省の洪磊報道官は9月11日、日本による尖閣諸島(中国名・釣魚島)国有化は違法であり、「日本側が釣魚島を中国から盗んだという事実を変えることはできない」と述べた。
加藤氏は、1894-95年の日清戦争時の尖閣諸島の扱いから、1978年の日中友好平和条約締結時の鄧小平副総理と福田赳夫首相の会談内容まで歴史を論評し直した上で、両国が置かれている「現状とはどういうことなのか」を議論することが解決の糸口になると語った。
加藤氏など日中友好7団体の会長らは9月27日に北京で、共産党序列4位の賈慶林・全国政治協商会議主席や唐家璇・元外相と会談。賈慶林氏らからは、国交回復時に決めた尖閣諸島の領有権問題の据え置きを40年間守ってきたのに、今それを壊したら政治も経済もばらばらになるという趣旨の発言があったという。
経済問題への危機感は中国も同じ一方、日中間の経済問題に対する危機感は中国も同じように認識していると語った。今後について加藤氏は、中国側出席者が「かなりストレートな口調で、われわれはどうしたらいいんだと言っていた」と述べ、中国側も事態の打開策を見出せないでいると指摘。財務省の貿易統計によると、日中貿易額は昨年、輸出入の合計で27.5兆円規模。
加藤氏は、懇談した唐家璇氏から日本側に対して「感情的な激しい批判」があったことを明らかにした。日本の尖閣諸島国有化が、野田首相と胡錦濤国家主席がアジア太平洋経済協力会議(APEC)で言葉を交わした直後だったことから、唐氏は「メンツがつぶされた」と不快感を示しており、加藤氏は信頼回復について「よほど努力しないと難しい」という見方を示した。
政権交代で関係好転とは考えにくい中国共産党は11月8日に党大会を開き、新指導部を選出する。新指導部の人事は何年もの権力闘争を経て実質的に決まっている。党総書記には習近平国家副主席を選ぶ見込み。加藤氏は、習氏の外交戦略は明らかでなく、政権交代だけで日中関係が好転するとは考えにくいとみている。
一方、日本で自民党が民主党から政権を奪回した場合について加藤氏は、安倍晋三総裁は過去に首相として靖国問題などを鎮静化させた実績があると述べながら、現状では中国との関係改善につなげられるかは予測がつかないと語った。
立命館大学の宮家邦彦客員教授は日中関係を「リセット」する必要があるとし、そのためにはプレーヤーを代えるべきだと主張。胡主席と野田首相ではもはや良好な関係が築けないと述べた。
加藤氏のウェブサイトによると、同氏は山形県鶴岡市の出身で73才。外務省に入省しアジア局中国課次席事務官などを務めた後、衆院議員となり当選13回。防衛庁長官、官房長官、自民党幹事長などを歴任。最近の日中関係については、9月25日付のウェブ上で「尖閣問題はつとめて冷静な対応を」と呼びかけている。
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更新日時: 2012/10/04 00:00 JST